第8話 明治維新
第8話 明治維新
100億年以上この世界に存在するチロにとっては300年という歳月は瞬きするも同然の時間であったが、それでもチロは久し振りに得た自由な時間を自分の望みのために使っていた。孔明にとっても鎖国は望むものであった。というのは、孔明の超人類としての能力は、上から数えて20番目くらいだったからである。上位の超人類と争えば傷ついたり、最悪死に至ったりすることも考えられた。劉備、関羽、張飛の4人で日本を陰から支配しているのであるが、このグループは世界からみれば実力的に十数番目に位置していた。それでも孔明が安穏としていられるのはチロの庇護を受けているからである。
突然であったが、鎖国の終わりを告げる警笛が鳴り響いた。アメリカ合衆国からの使者であるペリーが大統領からの国書を携えて開国を迫ってきたのであった。もちろん大統領はラーの傀儡で、ラーやモーセはベールに包まれていた日本という国を暴く決断をしたのであった。ラーとモーセは不可侵の約束をし、残った世界、つまりアジアなどを支配下におくことを約定の1つとしていた。これには人類がおこした産業革命による市場の拡大も狙いとしてあり、名目は市場拡大であったが、1つにはチンギス・ハンへの牽制、1つには日本を支配下におくことが重要な目的であった。インドの三神はおとなしくラーらに従ったので大きな争いはなかったが、清国ではアヘン戦争を皮切りに過酷な運命を辿ることになる。チンギス・ハンもラーやモーセと結託したかったが、許されずにチンギス・ハンの影響下にあるロシアの利益はそれほどではなかったし、逆に清国を侵されるという杭の頭を叩かれるはめとなってしまったのだ。
日本では、孔明らの傀儡であった徳川幕府に反旗を翻す諸藩が増加していた。孔明らは幕府と朝廷を抑えておけば安泰であると考えていたため諸藩に直接影響を与えることは難しかった。朝廷はもともと孔明らの支配下にあったため、1つの策として国家権力を幕府から朝廷に移すことを孔明は思い立つ。つまり尊王思想を広めることが、急務となった。同時に攘夷の思想も広めることになるが、後に孔明は攘夷を諦め開国の道を選ぶことになる。
当初、孔明の策の進展は思わしくなく、孔明自身がのりだすことになるが、これはチロの許可をとっていた。またいらぬ叱責を受けてはたまらないからである。こうして、孔明はある人物と入れ替わることになる。彼が修業のために土佐から千葉道場にやってくる道中のことであった。つまり、坂本龍馬が活躍を始めるのはここからである。諸藩の大名に面会することも幕府の重役に知己を得ることも孔明にとっては造作も無いことであった。問題は、血気にはやった若者たちであった。孔明は赤壁の戦い以来ともいえる大論陣をふるうことになる。
孔明の論陣を受けたのは、西郷隆盛と桂小五郎であった。かれらは人類としては1つ頭の抜き出た存在で、孔明も少々手を焼くことになるが、倒幕後に薩摩と長州が政権をとるというシナリオをエサに説得は成功した。これは実際には孔明の詭弁で、明治政府も孔明らの傀儡となっていく。故に明治政府に孔明が加わることはできなかった。陰で政府を操るのであるから坂本龍馬は死なねばならなかった。