表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脈流  作者: 智路
2 現在までの歴史
26/114

第5話 チロの憂い

第5話 チロの憂い

 時は少し遡るが、日本の飛鳥時代に中国では隋が滅びて唐が興ったことを知ったチロはその情勢を探るために小角を中国に送った。小角は後に役の行者とか役の小角と呼ばれることになるが、超人類の一人でその能力はメタモルフォーゼにあった。メタモルフォーゼは昆虫などでは、さなぎから成虫にかえる過程などで見られるが、哺乳類では難しいとされる。メタモルフォーゼのメカニズムを考えてみると変身するためには、全ての細胞がiPS細胞となり、新たなスタック器官を必要とする。小角は己の意思でこれを行えた。故に、鳥と化したり獣と化したりすることができ、中国へは鳥と化して飛んでいったのであった。

 ここで、街中で超人類同士がすれ違ったら気が付くかという命題を考えてみたい。ほとんどのケースでは気が付かない。気が付くのは超人類がその能力を発揮したときだけで、常に能力を発揮した状態であれば必然的に気付かれるが、日常は人類と同じ姿態なので気付かれないという理屈である。但し、超人類を感知する能力を持った超人類が存在すれば、その限りではないが、筆者はチロ以外にその存在を知らない。それでも、小角が変身するところを人に見られたことが数度あって伝説となっていったようである。数年の調査を終えて帰ってきた小角はチロに特別な動きはみられないと報告していた。

 平安時代となって平安京に遷都して間もなく、チロは空海と最澄を京に送り込んだ。名目は僧の修行ということであったが、能力を僅かに発揮した空海と最澄は頭角をあらわし遣唐使に選ばれることになった。修行せずとも元々能力の高い空海と最澄は中国で密偵として行動することになる。チロが知りたいのは中国に住む超人類たちの動向であったが、空海と最澄はそれには失敗して日本に帰ることになった。それぞれが、真言宗・天台宗の開祖となり、結果としては日本の都の情勢をチロに送ることになる。

 空海が念の能力者だとすれば、最澄は理の能力者であった。最澄を産んだときチロは、この人物が自分を元の世界に帰してくれるのではないかと喜んだという。ところが、最澄は現代のスーパーコンピュータを凌駕するほどの能力を有していたが、飛躍的な発想に乏しかった。そこにある情報を分析、判断する能力は抜群だったが、ただそれだけのことであったのだ。

 平安時代も末期になって平清盛を棟梁とする平家が朝廷を牛耳るようになってきていた。平清盛は孔明とは無関係の人で、最初孔明は平清盛を懐柔しようと考えたが、“平氏にあらずんば人にあらず”的な考えを持つ平清盛を好きになれなかった。そこでもう一方の勢力である源氏に白羽の矢をたてたが、平氏と源氏では勢力が大人と子供以上に離れていた。そこで、孔明は苦肉の策として張飛を源氏に加担させることにした。伊豆に住まう源氏の棟梁の源頼朝の末弟である義経の家来として張飛を送り込んだ。名を弁慶と言う。張飛の能力は全身を鋼の毛で覆い、身長は136cmもあり、瞬発力にも優れていた。いわゆる典型的な肉体強化の超人類であった。結果、源氏は平氏を打倒し鎌倉幕府を興すことになる。

 その前に義経は頼朝から追放同然に奥州藤原氏を頼っていくが、このとき同行していた弁慶は張飛ではない。ところが、空海や最澄が都に残した諜報網は張飛の存在を掴んだ。

「人ならざる者が源氏に加担しておりまする」これを聞いたチロは憂いた。故に、チロは孔明を諭すために接触したのであった。孔明はチロから和議の条件を聞く前に「人類に過ぎたる加担はまかりならん」と叱責を受けていたのであった。こうして日本では超人類同士の争いは無くなることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ