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脈流  作者: 智路
2 現在までの歴史
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第4話 蝦夷

第4話 蝦夷

 飛鳥時代に孔明は、奈良に都を建築して自分たちの政権を安定させていく。都には日本で初めて条坊制を用いた藤原京を建立し、その中枢を朝廷と呼んだ。条坊制も朝廷も中国のそれを真似たものであるが、これには孔明の中国への思慕が窺がえる。多くの人は自分がどこからきたのか知りたがり、知っている者はそこへ帰りたいと願うもののようである。尚、条坊制とは現代の都市計画のようなものである。

 7世紀半ばになるといよいよ北伐が始まった。もちろん、軍は人類のみで構成されていた(今後、超人類ではない現代の祖先となる人類をそのまま人類として呼ぶこととする)。この軍の侵攻は素早く、8世紀初頭には現在の秋田県と宮城県に至っている。これにはチロも些か驚いた。朝廷軍の侵攻が早過ぎて、自分たちの軍の編成が間に合わなかったのだ。それでも朝廷軍の侵攻は秋田県と宮城県の平野部に限られており、チロは絶対防衛圏として秋田県側を八幡平、宮城県側を栗駒山と定めることにした。

 北伐の成功に呼応するように孔明は平城京に遷都した。現代の歴史区分では奈良時代に入ったことになる。しかし、8世紀後半になると絶対防衛圏のために朝廷軍と蝦夷軍の抗争は激しくなっていく。この抗争に拍車をかけたのが蝦夷の地では金が採掘されているという情報が朝廷側に流れたことだった。本来、北伐とは朝廷側からみた正義の戦いであり、蝦夷にとっては至極迷惑なことであった。これに金鉱山が絡んできたものだから正義の戦いも名目となりはて、とにかく蝦夷の地を占領することが朝廷の第一の目的となったのであった(孔明にとって金はさほど大事なものではないが、人を支配するためには非常に有効であることを知っていたのである)。

 このときの抗争に孔明らは直接参加していない。もちろんチロもチロに従う超人類も参加していない。チロはアラハバキ神として蝦夷の族長たちに僅かな神託を与えただけであった。アラハバキという語の意味は、アラはこの世界を意味し、ハバキは“はばたき”つまり超越を意味した。蝦夷にとってのアラハバキ神は単純に“この世界を超越する存在”を意味するだけであったが、それだけで神としては十分だったのである。

 超人類にとっては、個の能力が軍事力の優劣を決定し、現代では兵器の優劣が軍事力の優劣に直結するが、この当時の軍事力は人の数であった。故に蝦夷軍は、徐々に劣勢となっていく。蝦夷軍に有利なのは地の利だけであったが、それも坂上田村麻呂によって胆沢城という朝廷側の拠点が蝦夷の地の喉元に建設されるに至っては降伏もやむを得なかった。

 この後も朝廷と蝦夷の抗争は断続的に続くが、奥州藤原氏の出現によって朝廷は蝦夷の全領土を支配することを諦めた。奥州北部は奥州藤原氏の管轄として朝廷と蝦夷の抗争は幕を閉じたのであった。奥州藤原氏は藤原摂関家の一族のものが初代となり、蝦夷の豪族の娘が正妻となる形で興されたのであった。

 ところが、平安末期にこの奥州藤原氏が滅ぼされかけてしまう。歴史上は滅んだかたちになったが、このとき初めてチロは孔明と接触している。孔明とて自分を生んだのがチロであることは知っており、おそらく孔明の生殺与奪の能力をチロが持っているとも思っていた。他の超人類と同じように孔明も不老ではあるが、不死ではない。チロが持ってきた和議の条件は「チロに従うものたちに干渉しないこと。今の宮城県の一部と北東北にも必要以上に干渉しないこと。奥州藤原氏の係累を残すこと」であった。この条件をのめば日本の支配権は孔明に委ねるというもので孔明にとっては望外の条件であった。また、奥州藤原氏の子孫が、藤部財閥を興すことになる。


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