第2話 三国時代と魏志倭人伝
第2話 三国時代と魏志倭人伝
暫くの間日本列島は穏やかで、チロも自分の望みに没頭することができたのだが、3世紀の中ごろに海をはさんではいるが、中国に不穏な動きがみられた。チロは時々、世界の様子をそれとなく監視していたが、日本列島に重大な影響が出ると判断したのはこれが初めてのことであった。
そもそもは、始皇帝が不老不死の霊薬を探すため徐福という人物を日本方面に派遣したという噂が始まりであった。中国の3世紀は魏呉蜀という三国が覇権を争っていたが、諸葛亮孔明は近いうちに蜀が滅びることを知っていた。
「劉備よ、蜀が滅びるとわしらの住まう土地が失せてしまうぞ」
「どうすればよい、孔明」
同じ超人類である関羽と張飛はただ黙って二人の会話を聞いていた。中国にも二十人近い超人類が渡っていて、この4人が1つの勢力をはっていたのである。実質的なNO.1は孔明であり、劉備・関羽・張飛と続く。
「徐福という人物を知っているか?」
「ああ、噂ではな」
「その徐福が向かったという倭という国から魏国に使者がやってきたらしい」
「まだ、はっきりとはしないが、徐福のことは噂ではなく、本当なのかもしれぬ。そして倭という国にわしらの同類が住まっている可能性がある。徐福はそこで不老不死の霊薬ではなく、わしらの同類をみつけたのだ」
「で、どうしろと」
孔明の考えによると、倭の国は魏国より遥かに弱いはずだからここに移り住もうというのである。実際に弱いかどうかの確証は孔明にもなかったが、魏国と争えば必ず負けるから仕方がなかったともいえる。
「近いうちに倭の国の地図が手に入るはずだ。その前に劉備・関羽・張飛は死んだことにしなくてはならぬ」
「なに……」
「まあ、聞け。死んだことにして3人には朝鮮半島に蜀の兵を移してもらう。わしは、長安の北で仲達と遊びながら時間稼ぎをしておるわ」
孔明は魏国の首都に密偵を送りこんでいる。孔明の密偵陣は魏国の情報をつぶさに孔明に報告していた。また、司馬懿仲達も超人類としてはレベルの高い方であったが、孔明ほどではなかった。こうして、蜀は自滅の道を選び矛先を日本列島へとかえたのであった。
ほどなく、密偵から倭の国の地図を得て、孔明も朝鮮半島へと向かった。孔明は神武と名を変え、劉備は天照、関羽は月読、張飛はスサノオウと名を変えた。これが神武の東征の始まりである。
ところが、孔明の得た地図というより日本列島の倭の国への行程は、チロの仕組んだ迷路であった。つまり、自分の国より強国であるかもしれない国に真正直に首都の位置を教えるはずはないのだ。現代に残る魏志倭人伝の行程はこうして記されたのであった。