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脈流  作者: 智路
1 プロローグ
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第18話 知的生命体

第18話 知的生命体

 チロは、物質化されたこの世界を観察することが、常となっていった。どのくらいの時間が経過したのか覚えていないが、チロはあるときに元素が結合していくことに気が付いた。現在人類が呼ぶところの分子である。さらに共有結合も発見し、分子を自分自身で構築させることも覚えていった。しかし、自分の望みを叶えるために必要なこととは思えなかった。とはいえ、今チロにできることはこの世界の振る舞いを全て知ることだけであった。チロは膨大な時間を費やして知ることに専念していたが、この世界の振る舞いの量は膨大すぎて、自己分割で役割を分担しようかとも考えたが、それでは自分の記憶が薄れてしまうことを思い出し、物質と最近増えてきた他の精が分割したと思われる精神体から知的な生命体を生み出そうという結論に思い至ったのである。

 有機化合物を生成することは比較的簡単にできた。元素番号6の炭素は、4つの外殻電子と4つの電子の空席を持つ。このため結合相手の元素や分子が+の電荷でも-の電荷でも結合させることの自由度は高かった。また、最大4個の相手と結合できることも炭素の利点といえた。化学反応とは多くの場合、元素または分子同士が結合する様を指すことが多い。また、結合方法もいくつか人類は発見しているが、共有結合がもっとも強い結合で一般的であるとされている。故に共有結合を骨格とした分子構造が多く存在することになる。

 炭素を含んだ化合物は例外を除いて有機化合物と呼んでいたが、有機化合物という呼称はほとんど意味を持たない。上述のように炭素の利点が多く、生物の多くが炭素化合物で構成されているというにすぎない。また、炭素は地球上では空気中に0.3%含んでいるため用いるに足りないということはない。

 チロは知的生命体を生み出すために3つの部分を考えた。1つは物質の器(人間でいえば肉体)、2つ目は精神体、3つ目は物質と精神体を繋ぐ結合部である。2つ目は周囲に数多く存在するから問題は1つ目と3つ目となった。最初に手がけたのは1つ目である。1つ目を生命体と呼ぶことにして、その設計図と設計手順、実際に設計図から生命体を構築する大工さんのような部位が必要であると考えた。

 設計図は、現在人類の知るDNAである。設計手順と大工さんについて人類はまだ解明できていないようである。ここでいう設計図とは建築物のものとは異なり生命体の各部位を決まったコードに割り当て、そのコードを羅列するだけのものであった。つまり、DNAは部品の在庫というイメージである。在庫ではあるが、材料(元素)さえあれば無限に部品を作ることのできる機構で、問題はその表現方法と部品の素となる核部品であった。部品ごとにコードを増やしていけば、いくつ必要になるか検討もつかず、用いたのは少ない核部品の組み合わせ数で表現することであった。ここで考えなければならないのはコードの表現方法と核部品の種類数をいくつにするかということであった。核部品の種類数が決まればコードの表現方法は比較的簡単に決まるわけであるから、チロの試行錯誤は必要十分な核部品を揃えることから始まった。が、当初チロはアミノ酸の数をいくつにすればよいか知っていたわけではない。1つ1つと原初のアミノ酸が考案されては、放棄されたり改良されたりしていった。結果37個のアミノ酸の候補ができあがったのであるが、その中の22個くらいを人類は発見している。即ち核部品は今日アミノ酸とよばれることになる。


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