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脈流  作者: 智路
1 プロローグ
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第17話 元素へ

第17話 元素へ

 源根子を最小単位とするこの世界は、空間線とその極から生成されたパターン集合体を要素として、高度に独立した系をいくつか持つことになった。我々人類の棲む物質からなる系はその1つで、他の系との行き来は極めて困難ということになる。(数学のグラフ理論を学んだことのある読者の方は、ノードが+か-の極でエッジが空間線である完全グラフをイメージしてもらえば幸いである。尚、その完全グラフからパターン集合体を構成する法則を想像することさえも難しいので、この小説では扱わないと思われる)

 パターン集合体は電子や陽子、中性子となり、原子を作ることになる。また、空間は空間線そのものであり、この世界のエネルギーの源となる。つまり、物質は空間線の斥力と引力の力関係(位置関係)から生み出されたものである。これは一意に空間線の極の座標関係と同じ意味を持つことになる。電子や陽子、中性子の集合体は一定の創発法則によって100種類ぐらいの元素を構成するようになっていった。元素は原子核に含まれる陽子の個数によって種別が分かれ、その個数を元素番号として元素の種別を特定できる。陽子の数が1個(元素番号が1つ)違うだけで元素の特性が変わっていくが、何故そうなるのか現在の人類には解明できていない。従って、筆者にわかるはずもなくこの小説の主題とならないことだけは明言できる。

 チロはこの世界の物質界が創造されてから現在に至るまでこの世界の時間で100億年以上の間棲んでいた経験からいくつかのことを知るようになった。1つは何らかの理由で同一座標に+と-の極が存在すると大爆発を起こして対消滅することである。対消滅した極は神の世界に戻るのではないかと考えているが、それは定かではない。1つは斥力を持つ空間線と引力を持つ空間線が接近すると互いの空間線が振動することである。この振動は規則性を持ち波動となるようであった。ただ2つの空間線が交差して対消滅した現場を目撃したことはない。おそらく空間線を交差させるほどのエネルギーがこの世界には存在しないのではないかと考えている。

 この世界には脈の流れが存在するとチロは考えているが、それはこの波動が源になっているのではないかと考えている。脈流の中では様々なものが増幅されて、それは精神も例外ではないようだった。脈は時間と共に流れていくが、流れに速度や加速度が存在するのかチロはまだ知らない。チロは脈流の中で極を対消滅させてみようかと思ったことがあるが、それは寸前で思い止まった。何故ならチロの意思で対消滅が起きたとすると神の子の作業に支障を起こすのではないかと考えたからであった。

 極の性質は電子に多く受け継がれている。陽電子も存在するが、単独で存在することは難しく、多くは陽子の中に含まれている。稀に電子と陽電子が衝突して(同一座標に存在する瞬間)対消滅を起こすことがあるが、これは極の性質を受け継いだものと思われる。但し、電子の対消滅は極そのものを対消滅させるのではないようで神の子の作業には影響がないと思っている。

 そもそもチロは神の子の意図するものを知らないので、何がタブーなのかはっきりとわかっていないが、少なくとも空間線や極を直接操作するまいと考えていたので物質化した存在を操作することで、自分の望みを叶えようと思っていくようになっていた。


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