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脈流  作者: 智路
1 プロローグ
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第13話 脈

第13話 脈

 藤部総本家を訪れた円光は、精太郎と対峙していた。

「貴方様が、わが師となられる方ですか?」

 精太郎も人の中では傑物であるため、円光の人格や能力を一目で見抜いていた。しかし、円光はその話をまだ聞いていなかったらしい。それでも精太郎は話を続けたのであった。

「寺院の建立に金の糸目はつけませんぞ。なんなりとおっしゃってください」

 困った円光の目は桃九に救いを求めていた。

「兄者、その話はまだ早いのです。円光様は修行のための適地を探したいとおっしゃっています」

「そうじゃったの。天台寺の住職も近くに真言がくるのは些かまずいと言っとる。延暦寺がうんというまいと言っておるのじゃ」

(延暦寺は天台宗の総本山である)

「わしも近くには捜すまいと思っていたところです。しかし、この辺りは脈の宝庫みたいなところですな」

 この言に反応したのはチロであった。脈という言葉よりも円光のイメージした脈にはっとしたのであった。

「貴方様は脈をご存知で?」とチロが尋ねると、

「知っておるというわけではないがの。始祖の空海様も方々に脈を捜されたようじゃから。脈とは波動のようなものと聞いていますじゃ。脈の強い地では法力も格段に強くなったと伝えられておりますのじゃ」

 これを聞いたチロは(少しは知っているみたいね。まあ、極一部というところかしら。でも知らないより少しでも知っていた方がやりやすいわ)と思っていた。

 精太郎との面会を終えた円光であったが、円光は脈の適地が見つかれば、高野山真言宗の金剛峯寺から籍を抜いてこの地に新たな真言宗の寺院を建立してもいいと思うようになっていた。真言宗の本山は宗派ごとに18あると言われているが、その1つである金剛峯寺から籍を抜くということは、いわゆる僧侶としてのエリートコースを捨てるに等しかったが、円光の思いはそれでもいいとまで思うようになっていたのだ。

 桃九と円光は2ヶ月くらいの間、徒歩で適地を捜して歩いた。姫神山、早池峰山など脈を強く感じる場所を円光が訪れると「う~ん」と腹の底から唸り声を響かせていたが、それでもこれはという場所ではなかったようである。

 秋田県鹿角市の大湯環状列石を訪れると円光の唸り声はピークを迎えたようであった。

「なんじゃ、ここは?人であって人でないものが、造ったものなのか?」

 驚いたのはチロである。

「あら、ばれたのかしら?」

「ここより西方にもっと強い脈を感じる」と円光は白神山系の方角を指差すのであった。自然、桃九と円光はその方角を目指すことになる。桃九も山行には自信があるから少々の藪をこいでも歩行速度は落ちなかった。白神山地の奥地に入ると円光は時々立ち止まって、

「この土の下に三角山がある」と指差すのであった。的確にその地を見つけるものだからチロは(この方は思ったより能力が強いわ。それとも脈のせいかしら?)と思っていた。

 実はチロには桃九にも話していない秘密があったのである。


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