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脈流  作者: 智路
7 セイタン帝国
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第11話 クーデター

第11話 クーデター

 ゴクウの合図でナザイギアがトランティスの王宮にのり込んだとき、そこでは混乱が渦を巻いていた。王宮に仕える人々は帝国の中枢をなす高官が拉致される現場を目撃していたのである。その噂は口から口へと伝わり、行政府や軍部全体にも混乱の連鎖が起ころうとしていた。かろうじて行政府や軍部が持ちこたえているのは、事実確認が済んでいないというただ1点の淡い希望だけからであった。

 そこへ、ナザイギアが王宮の中で宣言を行った。

「国王をはじめとした高官の全ては病の治療のため、他の恒星系に移ってもらった。この病は重度であり感染力も高いと推量される。そのため彼らが戻ってくる時期は全く不明である。そしてこれはセイトさんの意向である」

 こうして噂は事実となり、トランティスは混乱によって崩壊するかに見えた。ナザイギアは、平和なとき高官だった自分の配下を各部署に送って事態の収拾にかかった。リッタからルーラも応援にかけつけている。武力により抵抗するものは、麻酔銃で眠らせ、拉致された高官に近しい者や混乱を炊きつける者は、捕らえられて軟禁状態となった。彼らには、混乱が収拾された後に裁判が待っている。最高の処罰は治療である。

 帝国の支配下にあった38の恒星系はほとんど軍事力を持っていなかった。そのため、セイトの名によって通達を出すだけで大きな混乱はおきなかったのである。完全に混乱を収拾したのは3ヵ月後であったが、一人の死者も出していない。つまり、クーデターは無血によって完璧に行われたといってよい。

 しかし、根本的な問題が解決したわけではない。マーシーは人の混乱をよそ目に銀河バルジに引きずり込まれようとしているのである。サンガとゴクウ、ナザイギアはトランティスに残り、欠員の出た部署への人員の補充や国民の生活の安全や安心を確保することに努めた。ルーラは全権大使として地球に向かっている。

 桃九らは、帝国の人々の今後を協議していた。結論は、ラランド21185恒星系に帝国の全てを移転させるというものであった。地球とラランド21185恒星系は約8.3光年離れており、交流は互いの国が取り決めた専用機だけとした。その方針で21185恒星系に存在する5つの惑星の突貫工事が地球からの派遣隊によって行われることになり、ルーラはその報を持ってトランティスに戻って行った。

 地球の技術陣により全てのコロニーが地宙両用タイプとなっていた。多くの場合、地底を掘削し、その中にコロニーは納まる。物資の補充などで必要なときは、宇宙ステーションとなる仕組みであった。トランティスの人々の生活様式や、必需品がわからないため、とりあえずは器のハードだけが用意される予定である。また、非精神生命体にも同じようにコロニーが用意された。

 この帝国の移転により文化や技術の交流が行われ、地球の繁栄は画期的に進歩することになる。また、帝国の実質的な指導者はサンガであり、実務はナザイギアが執ることになった。セイトや収監された100人以上の患者の完治の見込みはたっていない。彼らが完治したとき、全ての陣容が出揃うことになる。


第1部完


 3ヶ月近くの間、おつきあいくださったことに感謝致します。この章をもって、第1部を完結させたいと思います。引き続き第2部を「脈龍RW1」として投稿したいと思います(1月1日投稿予定です)。尚、「脈龍RW1」の第1部として脈流1章分を1部分としてリライト(1回目)して載せています。読者の方にはご迷惑をおかけしますが、ここでお詫びと第2部の予告をしたいと思います。

あとがき

 そもそも、自分が生きてきた証を残したいという動機からこの物語が始まりました。10年ほど前に病を患い、現在僅かに戻った精神状態の安定さからこの物語を書いています。1話の字数が少ないのは、まだ長い文章を書く根気強さが戻っておらず、読者の方には読み辛い思いをされているかと存じますが、ご容赦ください。

 第1部を完結させたことに自分でも驚いており、書き始めには「どうせ、途中で放り出すのだから」という思いが支配的でした。

 尚、物語中の理論めいたもののほとんどは、根拠もなくただ思考のための道具として用いています。というのは、巡回セールスマン問題の解法がこの物語の源となっていて、それを発展させたいという思いだけがこの物語の本質だからです。この解法は実社会にも通用するはずだと思っていて、幾人かの知人に検証をお願いしましたが、完全な検証は行われておらず、「おそらく解けているのでしょう」という評価だけをもらっています。

 その解法は病の初期に導き出したもので、既に数年が経過しています。振り返ってみると巡回セールスマン問題を解くことに25年の歳月を費やし、筆者の人生の大半がこの問題で占められていたような気がします。但し、この問題に関連して金銭の授受をしたことは一切ありません。生活費はシステムエンジニアを職として得ていました。

 自分の解法を評価してみると、その解法だけでは実社会に益をもたらすことはできないと思っていますし、解法はこれ以外にも複数存在するはずだと思っています。尚、巡回セールスマン問題の解法は必ずしもNP問題の解法とはならないことをお断りしておきたいと思います(解法はアルゴリズムによるものなので)。

 さてそこで、他の分野(生物学や物理学など)を適当に持ち出して道具として用いているのですが、桃九の形状性質論は、巡回セールスマン問題の解法の延長上にあり進化型の理論だと自負しています(但し、結論まで至っていません)。つまり、筆者の主張はこれだけと言っても過言ではありません。

 創発現象の謎もおそらくここに含まれていると考えているのですが、とっかかりが少なすぎて先に進めないでいるところです。

 第2部でも主張の結果が出るとは限りません。むしろ、第2部は分母は不明ですが、2/?回目のステップだと思っています。


 今後もおつきあいくださるようお願い申し上げます。


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