第4話 ブラックホール
第4話 ブラックホール
サンガの皮膚片は様々な分析器にかけられた。細胞などの構成や機序はほとんど地球の人類と同じであり、姿態も同様であることから、精神の宿る人型の知的生命体の誘導の機序は、自然界の中に秘密が隠させていることが推測できた。
DNAの機序もほぼ同じであり、20種類のアミノ酸が主として機能していた。個々のアミノ酸は若干の差異はあるものの大勢に影響を与えるとは思えなかった。
チロの作成した23番目と25番目のアミノ酸に似た物質も見つかり、これの意味するところはサンガが不老不死であるということであった。
「ねぇ、サンガ。恒星間航行に成功したころにお父さんが変貌したと言ったけど、何処に航行したの?」
「隣の恒星系です。その後、次々と別の恒星系に向かっています」
(変貌の原因は未知のウイルスかしら?それとも急激な環境変化かしら?)
「その時、セイトは何か対処した?」
「はい。最初のころは国王を諫めていたようですが、すぐに諦めたようです」
(おかしいわ。セイトも何かが変わったのだわ。するとウイルスではないようね。でも、環境?)
「近くの恒星に何かかわったことはなかった?」
「そうですねぇ……。特に変わったことはなかったですね。しいていえば、ブラックホールの方角には航行しなかったことくらいですかね。それでも、何隻かはブラックホールに呑み込まれています。未だにブラックホールの影響範囲がわからないのです」
(ブラックホールの影響かもしれないわね。でも、ここじゃ確かめようもないし、やはりいつかはセイトのところに行かなきゃならないのかしら)
「でも、どうしてサンガは変貌しなかったのかしら?あっ。サンガを何か疑っているわけじゃないのよ」
「わかっています。国王の変貌の原因を分析するためですよね。わたしは、オリオン腕が好きで、そこ以外にはほとんど行っていませんでしたから、ブラックホールとは反対の方角になります」
「国王は?」
「父は、あちこち行っていました」
「セイトは?」
「セイトさんも、時々ブラックホールの途中まで行っていたようですよ。“また。跳ね返された”とぼやいていたので“何に?”と聞いたら、“ブラックホールの中心に行きたいのだけど、いつも途中で跳ね返されるのだ”と言っていましたから」
「サンガから聞いた状況から推測すると変貌とブラックホールが何か関係ありそうね」
※お詫びと予告※ この章をもって、第1部を完結させたいと思います。引き続き第2部を「脈龍RW1」として投稿したいと思います。尚、「脈龍RW1」の第1部として脈流1章分を1部分としてリライト(1回目)して載せています。読者の方にはご迷惑をおかけしますが、ここでお詫びと第2部の予告をしたいと思います。