第2話 ルシファー
第2話 ルシファー
(エネルギーが精神に影響を及ぼしているようね。エネルギーが極の対消滅から発生しているから、それかしら?極とか空間線に直接触れたせいかしら?人の精神は桃の精から100世代以上精神分割しているはずだから、その性質がよくわからないわ。地球の人類だってこんなに多様だもの……。まさか、神の子の怒りに触れたということはないわよね……)
チロが知っているのは、タンタ176号の推進エンジンが空間線の極の対消滅によりエネルギーを得ていることだけである。そのエネルギーと精神の関係は全く予期していなかったのである。そして、極の対消滅を起こすことは桃の精たちの間で暗黙の禁忌だった。
(どうして、セイトは禁忌を侵したのかしら?何かが変わったのかもしれないわね)
「ねぇ、サンガ。セイタン帝国の歴史とセイトの関係を教えてくれない?」
「はい。まず、わたしは20万年ほど前に王位継承権3位の皇子として生まれました。わたしの父が初代の国王で、建国はわたしの誕生より3千年くらい前だそうです。父の名前はルシファーといって、現在も国王です」
「ち、ちょっと待って。誰か、モーセを呼んでちょうだい」
「お呼びで?」
「モーセはルシファーを覚えている?」
「ああ、あの2万年ちょっと前の?」
「そうそう。どんな姿だったか覚えている?」
「姿と言われても、いろんな姿をしていましたし、確か天空に浮かんだ像しか見ていないと思います」
「それでもいいわ。サンガにその像を見せてあげて」
「父です。この魅惑的で恐ろしい姿は父に間違いありません」
「確か、あの時は突然天空に現れて、何か言っていましたね」
「そう、我に従えと言っていたわ。でも、人類も超人類も相手にしなかったわね。というより、文明が未熟だったからどうすればいいのかわからなかったというところかしら」
「はい。わたしたちの神はチロさんだけでしたし、でも相手にするなとわたしたちに言ったのはチロさんですよ」
「あはは、あの時は“ちょっと進んだ文明があるのね”くらいにしか思っていなかったわ。本当は後を追いかけてその文明を作ったかもしれないわたしの仲間を見つけたかったのよ。でも突然ラーやあなたたちがバタバタを起こし始めたのよ」
「すいません。でも、どうしてルシファーは黙って帰っていったのですか?」
「多分、原始人を相手にしてもつまらないと思ったのかもね。それに自然現象に見せかけて強烈な脈流を宇宙船に流し込んでやったわ。慌てたでしょうね」
「ああ、それで。でも、わたしたちに本当の恐怖や人を騙すという感情が芽生え始めたのはあの時からですよ」
「それがわたしへの反逆に繋がったのね?」
「それはよくわかりませんが、抑えきれないほどの欲望が増幅されて、感情がかき乱されてきたのは確かですね」
「なるほどねぇ。でもセイタン帝国が地球の座標位置を持っていることははっきりしたわ。問題はいつ地球に興味を持つかね」
※お詫びと予告※ この章をもって、第1部を完結させたいと思います。引き続き第2部を「脈龍RW1」として投稿したいと思います。尚、「脈龍RW1」の第1部として脈流1章分を1部分としてリライト(1回目)して載せています。読者の方にはご迷惑をおかけしますが、ここでお詫びと第2部の予告をしたいと思います。