第1話 疑惑のエネルギー
第1話 疑惑のエネルギー
この部屋には桃九とサンガがいた。チロは桃九にのって、サンガと会話をしている。
「ねぇ、サンガはタンタ176号の推進エンジンについて詳しい?」
「それはエンジンの機構のことでしょうか?エネルギーのことでしょうか?」
「そうね、エネルギーについて知りたいわ」
「わたしが知っているのは、エネルギーの名前が超脈流収束波だということと、エネルギーの出力が操縦者の精神力によって変化するということくらいです」
(もっともらしい答えだけど、嘘をついているのかしら?それとも嘘を教えられているのかしら?それに精神波と関係があるということはどういうこと?)
「ねぇ、サンガの知識と経験は豊富だけど、専門の技術は何なの?」
「あれ、言っていませんでしたか?わたしは皇族に生まれたので、教育は一般教育しか受けていません。なんとか上級教育課程を卒業はできましたが、その後は、いろんなところを視察したりとか社交界に出席したりとか、暇なときは宇宙旅行を一人でしていました」
「えっ!技術が専門じゃないのにあんな知識を持っているの?」
チロは、地球と帝国との技術の差を思い知らされたような気がした。
「ねぇ、視察はどんなところに行ったの?その中に技術部署も含まれていたの?」
「はい。いろんな技術部署にも行きましたよ。でも、わたしの知識では説明されてもよくわかりませんでした」
「エネルギー関連の部署にも行った?」
「はい。数箇所に行きました。でも、1箇所だけは立ち入り禁止でセイトさんと何人かの人しか入れないのだそうです」
(そこだ!サンガが嘘をついていないとしたらそこしかない)
この頃にはチロのサンガへの疑惑はほとんどなくなっていたため、サンガの嘘はただの可能性の1つに過ぎなかった。
「サンガ、その立ち入り禁止の技術部署のことを何か知らない」
「そうですね……。確かブラックホールのエネルギーを変換するとかセイトさんが言っていたような……」
(嘘だわ。セイトは嘘をついているわ)
「ところで、宇宙艇の性能は、操縦者によってどのくらい違いがあるの?」
「大体10倍くらいのばらつきがありますね。それに、飛ばせない操縦者もいます」
「飛ばない?宇宙艇が飛ばないの?」
「はい」
「その飛ばせなかった操縦者は何人くらいいるの?」
「さぁ、よくわかりません。飛ばせなかった操縦者に会ったことがないので」
「え?どういうこと?」
「操縦席に搭乗したところまではわかるのですが、機体が一瞬で遷移して見えなくなるので成功したか失敗したかは管制塔しか知らないのです。ただセイトさんが、“あいつも飛ばせなかったか”と時々ぼやいていたので……」
「それで、その失敗した人にその後一度も会ったことがないの?」
「はい。友達だったランカも失敗したようなのですが、その後姿が見えないので心配しました」
※お詫びと予告※ この章をもって、第1部を完結させたいと思います。引き続き第2部を「脈龍RW1」として投稿したいと思います。尚、「脈龍RW1」の第1部として脈流1章分を1部分としてリライト(1回目)して載せています。読者の方にはご迷惑をおかけしますが、ここでお詫びと第2部の予告をしたいと思います。