第一話
あらすじでも書いた通り、かなり久しぶりに小説を書くのでリハビリに書いてみています。展開が強引だったり粗があるかもしれませんが、よければ感想や批評等いただけれは嬉しい限りです。
皆さんは男と女……その差についてどうお考えだろうか?
別に深い事を聞きたいわけじゃない。単に女性でもモデルみたいな高い身長が欲しいとか、甘いお菓子をたくさん食べたいがその手の店に行くのが恥ずかしいという男性とか……。性別の違いで足りないもの、出来ないことは多いと思うし、それを羨ましいと思う方もいるだろう。そういう自分も男としてそう思ったことはある。
だが、しかし……━━━━。
「アリアー?」
「今行く!」
自分の口から何年経っても慣れない高い声が出る。服や下着、日用雑貨を詰めた鞄の紐を絞め、肩に担ぎ部屋を出る。
「ほら! もうすぐ馬車が来ますから急いでね。試験書類は持った?」
部屋から出たところで心配になったのか、階下から上がってくる女性━━━━今生の母が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「大丈夫だって! ちゃんと最後に入れるの確認した━━━━そんなことしてる暇無いだろ!」
中身を検めるためか、急いで鞄の紐の結びを解こうとする母を静止して廊下を走る。
「こら! 家の中は走っちゃ駄目って━━━━アリアー!?」
手摺に腰掛け、勢いと体重に任せて滑り降りていく。大丈夫だ母さん。流石に外でやろうとは思わん。他人の迷惑になることということは解っている。
「お母さん心配だわ……まるで男の子みたいな”女の子”に育っちゃって……品性が足りないとか言われて落とされるんじゃ……」
どこで育て方間違えたのかしら……なんて言っているがそれは絶対に無い……と、思いたい。あと、男らしい=品性で繫げるのはおかしい。
「いってきます!!」
これ以上話していたら間違いなく遅刻する。ブーツの紐を絞めたのを確認し、話を遮るために大きめな声で挨拶してから玄関のドアを開ける。
「いってらっしゃい」
ドアを閉める直前に聞こえた声。どれだけ歳を重ねても送り出してくれる声はいいものだと思いながら停留所に目指して走ることにした。
アステリズム・リアン・アーテリッジ。
名前が長いと、名付けた筈の親にすら略されアリアと呼ばれる娘はアヴァロン大陸と呼ばれる大地に存在するある小さな国の中の恵まれた商家の娘として剣術を学びながら十七になるまで何不自由なく過ごす筈だった。
中身が”俺”でなければ。
特別何かした記憶も無いし、神様にあったわけでもない。単に普通に生きて病気で死んだだけだ。だというのに、気がつけば小さな身体に女物の着せられ蝶よ花よと育てられる寸前だったのだ。
確かに映画館で女性割引料金とか羨ましいなぁ……とか思ったことはある!!
だが、しかし……! 女そのものになりたいとは言ってない!
その上アステリズム……アリアと呼ばれる名前にも心当たりがあった。生前を含めても相当昔━━━━少なくとも十年単位━━━━にやったPCゲームのキャラだと気づいた時には戦慄した。
恋愛シミュレーションと、俗にマスゲーと呼ばれる戦闘パートを混ぜたゲームで、細かい内容は記憶の彼方なものの、当時は相当な人気があったと記憶している。
アヴァロン大陸に存在する大国、グナエウス帝国に故郷の村を蹂躙され、その復讐のために反帝国レジスタンスに所属することにした主人公がヒロイン達や傭兵部隊を率いて帝国軍と闘う……と、いうのが大筋のストーリーだった筈。そしてアリアはそのヒロインの一人……レジスタンスに食糧を供給していた商人の娘であり、その伝手で主人公と出会い行動を共にすることになる。
普通の恋愛ゲームなら別に慌てる必要は無いと思うだろうが、このゲーム……ヒロインが普通に死ぬ。戦闘パートでHPが0になったり、或いはストーリー上の選択肢を間違えたり……。更にこのゲーム、主要キャラであるはずのヒロインが死んでもストーリーは進むのだ。最悪ヒロイン勢が全滅しても主人公と雇った傭兵だけでエンディングを迎えられる。要するに数ある恋愛ゲームの中でもやたら主要キャラの命が軽い死亡フラグ満載の世界なのだ。
ならば主人公達に関わらなければいいかというとそれも微妙。レジスタンスと帝国の闘いはどんどん拡大し中立の小国は次々と帝国に武力で占領され、帝国に何らかの形で繋がりがある国も帝国に属していないならば、交渉次第では武力侵攻の対象にされた。
アリアの実家のある国も侵攻を受け、その際の死者は相当な数だったらしい。それまで対岸の火事と決め込んでいた国々が危機感を覚え、同盟を組んで帝国に対抗するほどだった。その同盟が後々重要になるのだが、それはともかく……。
レジスタンスに行っても死亡フラグ。静観を決め込んでも死亡フラグ。ならば第三の選択肢……帝国に行く、だ。
少なくとも自分の覚えている限り、帝国に属することで生じるデメリットは殆ど無かった。レジスタンスに捕虜になった者も酷い扱いを受ける描写も無く、住人の中で帝国に所属している者が居れば問答無用で武力侵攻ということも無い。その辺りは交渉次第だろうが、アリアの居た国は小国ながら商人達の組合が興した国だ。自分が帝国に行けば、それを伝手にきちんと話し合ってくれるだろう。
父も帝国への商業の取っ掛かりを探していたらしく「これならどうだ?」と見せてくれたのが軍学校への紹介状だった。娘を軍に送るのは流石にどうよ? と、聞きたかったが、最近は帝国で騒ぎが起きているらしく入国が厳しくなってきており帝国に入れる手段が友人の伝手を使ってもこれぐらいしか残っていなかったそうな。
じゃあしょうがないと紹介状を受け取り、準備を済ませ帝国にある軍学校へ行く為に馬車に乗り込んだのが今。
そして━━━━。
「親孝行の為か~! 偉いなぁ! 僕なんて将来やることも思い付かなかったし友達の進路に乗っかる感じで適当に来たからなぁ。凄いと思うよ!」
馬車から帝国行きの列車に乗り換えた時に会った少年に思いっきり懐かれた。