プロローグ3
下に降りると食卓に2人分の食事が用意されていた。
「ママ、優にぃは?」
「なんか会社の飲み会だって。帰るの遅くなるみたい」
「ふーん。だから私とママのぶんか。パパ外で食べてくるもんねいつも。」
優子が後片付けをすませ席につく。
「いただきまーす。」
愛実が食べ始める。
今日のメニューは、メインがハンバーグ、サラダとコーンスープにデザートに梨半分。
優子は昔、結婚する前に今でもテレビ出演があるような有名な先生に料理を師事していたため、たいていのものは何でも作れる。
「ママ、最近にぃにと話してる?」
愛実がたべながら話始める。
「おにいちゃんとするのは掃除の話くらいかなー。おにいちゃんのしてるシステムエンジニア?だっけお仕事のこと全然知らないし」
愛実の兄の名前は母の優子からとった優の字と長男だから一で優一で家族の家系のなかでもとりわけ美形で優子のお気に入り。
息子なのに家に、兄:優一がいるときは彼氏みたいに扱う。
ご飯も1人だけ別メニュー今日の場合飲んで帰ってくるので兄の好きな鮭茶漬けだ。
もちろん愛実自身も大好きな兄なのでしょっちゅう用がなくても無料通信アプリで話しかける。
「掃除好きだねー2人とも。私にはやらしてもくれないのに。」
「愛ちゃんは危険な洗剤とか触って溶けちゃうじゃん」
「いやいや私24。大人。」愛実は冷静につっこむ。
「お兄ちゃんとママは愛ちゃんのこと大人とは認めてませーんw」
こういう時の優子はすごく楽しそうだ。
食事のメニューもそうだが愛実のことを優子は小学生のように扱いそこから外のフィールドに決して出さない。
それは、彼女の生い立ちにも関係することだが今は伏せておく。
「ママ今日は家で何したの?」
「一通り、お掃除とお洗濯と夕飯のしたごしらえして、アニメ見てた。」
「アニメ好きやよねー。今期何が面白いん?」愛実もアニメは好きなので話に食い付く。
「今期はねー、PSソニックのマジカル魔女ハンターとAWワークスの黒蜜林檎姫がうちの世代にドンピシャでマジ魔女は4話まで見たけど主人公の変身シーンにマジ萌え?みたいな」
優子はもともと関西出身なので興奮すると関西弁になる。
「私も黒蜜林檎姫見たー。出てくるキャラ全部ゴスロリでかわいいよねー」
「あんた好きそうやんなーそう思って3話まで録画してあるから。リビングのテレビと寝室のテレビどっちも録画してあるから、いつでも見て良いよ。一緒に見てもいいし。」と嬉しそうに優子。
「ありがとー。私ネットオンリーだし、また見にいくね。大きい画面で見たいし」
「うん。また、携帯に連絡して。」
「ごちそうさまー」
愛実は夜ご飯を食べ終わったようで食器を持ち立ち上がる。
それにちょっと遅れる感じで
「つけといてー」と優子。
愛実は流しに食器をつけ、少し満腹なのかふらふら歩き自室に戻る。
食べた後すぐ寝転ぶのは乙女としてならんので、引き出しから今日来ていた封筒を出し、紺色のクルクル回るイスに座り、これまた星座のステッカーがたくさん貼ってあるノートPCを開け電源を入れる。
しばらくするとフィンランドのオーロラの写真のホーム画面が映し出される。
愛実は自分の気に入る写真がなかなか見つからず苦労したものだ。
そして、いつものように検索エンジンを開き”SBコーポレーション”と
打ち込む。
ものの1秒くらいでその会社のHPはヒットしたなにやら有名な教授が監修している商品を取り扱う会社らしく、いわゆる出会い系などではなさそうだ。
愛実は正直そのHPを見てもなんのこっちゃわからなかったが、好奇心旺盛な愛実はとりあえず
お問い合わせと書いてあるところにメールをだしてみることにした。
”初めまして黒谷愛実と申します。御社よりお手紙を受け取りメールさせて頂きました。お返事待ってます。”
短いなんの変哲もないメールだ。
もう、夜だし早くても明日の朝だよね。
ペットボトルのお茶をぐぃっと飲む。
リロリロリーン
「えっ?」
思わずペットボトルのキャップを愛実は落としてしまった。
でも間違いないメールボックスに”新着メールあります”の文字
「落ち着こう落ち着こう」言葉で自分をおちつかせる。
ゆっくりペットボトルの蓋を拾いあげ、しっかり蓋をし、机にペットボトルを置く。
愛実の手がマウスに触れ、メールボックスをダブルクリック
差出名は”SBコーポレーション早川”となっていた。そしてこう続く
”ご連絡ありがとうございます。黒谷様初めまして、今回、黒谷様を担当することになりました。
SBコーポレーションのコンタクダーの早川と申します。今回、当社が開発する
『人間関係構築ボタン名称は(仮)』
のテストモニターに見事当選されたので通知いたします。
つきましては、明日、土曜日午後四時に当社のほうへお越し頂きたく思います。
費用などに関しましては、当社が全て負担しますので、もちろん明日の交通費なども支給させていただきます。
何卒よろしくお願い致します。質問などは24時間わたくし早川がお答え致しますので何卒よろしくお願い致します”
愛実がこのメールを読んで最初に感じた感想は胡散臭いだった。
けれど費用も今のところ負担してくれるというし、詳しいことは明日聞くことにして愛実は眠りについた。




