プロローグ2
「今日バレンタインやけど会社でなんかあった?」
「鶴見さんと稲川さんが男女関係なく一口チョコ配ってたぐらい」
「えっ今の子って好きな人以外にあげるん?」
優子は不思議そうに聞く。
「今、好きな人にあげる人なんかいてないよ」
真顔で答える愛実。
「ママ働いてないからわかんないけどそんな感じなんかな?今って」スマホをいじり出す優子。
「元カノの裸の写真、平気でSNSにあげる時代やからねーまだそうなってないだけマシ」ミルクティーを飲む愛実。
「そんなひどいことするんや。ママん時、携帯とかスマホなかったからな。今はなんでもできちゃうもんね」
愛実は優子にそう言われ、ふと考える。連絡手段は様々増えて今の方が、圧倒的に連絡する手段も人と出会うチャンスも増えてるのに昔より人と人との関係って希薄になってきてるなって。
昔の方がその会った瞬間に気持ちを伝えなくてはいけないから強い、大事な言葉で人と接してきたけど、今は違う。
誰とでもいつでも連絡とれてしまうから、めんどくさい少しでも気にいらなければその人を排除する。
人間関係なんて選び放題でまるで王様気分で私達は生きている。
だからこそリアルの人間関係なんてめんどくさくて愛実は職場で特に一定の人間とは付き合っていない。
それこそ弱みやダメな自分を相手に知られるのはまっぴらごめんだ。
「愛実大丈夫?」
しばらくぼーっとしていた愛実は優子の言葉で我に帰る。
「大丈夫。私は誰にも隙みせてないし、誰とも付き合ってないから。トラブルにまきこまれることはないよ」
「それも心配かなー愛実には、普通に人と付き合って普通に働いてほしいら。」
『ママは今の世の中をあまり知らないからそんなこと思うんだよー。』と愛実は心の中で呟く。
「とにかく大丈夫やから。夜ご飯まで寝るから上行くね。」
「うん。また呼ぶわ。」
愛実は家の白い階段をゆっくり上る。
1番手前にある自分の部屋に入りベッドにダイブする。
うつぶせからの仰向けへと体勢を変える。
「疲れたなー」最近の愛実の口癖だ
ふと天井を見ると様々な星座が描かれている。
愛実が家を建てる時、無理言って描いてもらったものだ。
まだ子供だった彼女に天井のアレンジできるカタログをみせてしまったのがもうその後の展開は決まっていた。
いくらかかるかもわからず、星座一ついくらの世界なのに様々な星座を注文してしまった。
いまでこそ彼女もローンにはいっているのであれだが、当時の両親はあわてたことだろう。
天井だけでなく壁紙もそれにあわせて空をイメージしてるため、家族の中では彼女の部屋が一番手間とお金がかかっている。
そんなこと気にもとめてない彼女はただいまスマホをいじり中。
彼女は部屋が空のイメージ一色なように小さい頃から空、星座、宇宙が大好きだ。
部屋にいる時はだいたい、北欧の空の様子や宇宙から見た地球などを見つつまどろむのが好きだ。
もうあたりは真っ暗だったがスマホのライトだけを頼りに写真や動画を見ていた。愛実はこの時間が一番好きだ。
会社とか家族とか色々なものから開放されて機械の中の空に想いを馳せる。
自分が家にいることも忘れて、ただただ空に投げ出される。
気がつけば愛実は眠りについていた。
リンロンリンンロンリリリリリリリリリ
愛実のスマホが鳴る
「はい」
「愛ちゃんごはんできた」
「はい 行きマース」
「待ってるねー」
「うぃ」
愛実はベッドから起き上がりよろよろと立ち上がり、歩きはじめねぼけまなこで階段の電気をつけ
ふらふら下に降りた。




