~いつかの恋を忘れる事が出来なくて~
パンッ!! パパンッ!! パン!!―――――
俺の耳に響く音・・・なんだかとても懐かしい音だ。
エイ! ヤー!! そして、再び布の弾ける音――― パァン!!!
どうやら、俺は空手の道場にいるらしい。
そんな俺は、小3からずっと空手をやっていた。
しかし、「もう高校生になるし、黒帯も取ったし・・」と思い、中3でやめてしまった。
そんな数年前 空手をやっていた頃の話、 俺が中2の冬の時であるが、
長い間 慕ってきた工藤蓮という、当時 高校一年生だった先輩が引っ越した。
――そんな先輩が、 今 俺の目の前で空手の型を打っている。
相も変わらずキレのいい技の数々。 それを見て、『カッコいい!』と 俺は思うわけだ。
そんなカッコいい先輩を見ているわけだから、見惚れないはずがない・・・。
とりあえず、俺は 先輩を“ウットリ”と眺めていた―――――。
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が、しかし、 実際の先輩は引っ越している。
そして、今 目の前で型を打っている先輩は、引っ越しをする寸前の先輩の姿だ。
――っという事は、ここは“過去”・・・
――今から三年前っていう事になるんだよな・・・?? ――俺はそう思った。
ちなみに、何故 引っ越しをする寸前だと分かったかというと、
蓮先輩はずっと長い間 ショートヘアーだった―――――。
しかし、引っ越しをする数か月前から髪を突然 伸ばし始め、
今俺が見ている蓮先輩である、 肩下くらいまで伸ばしたのだ。
ある日、蓮先輩は言った。
「ずっと、長い髪には憧れてたけど、空手をやるには邪魔だから」って。
俺は昔 それを聞いた時には、“先輩が空手をやめるんだ”って事に気付けなかった。
だけど、今は知っている。 ――先輩がやめる事になるっていう事実を知っている。
だから、過去に戻った今、あの時 伝える事の出来なかったこの想いを告げる事にした。