~冬の日に起きた、最初の別れ~
とある日曜日の朝。
雪がチラつくこの季節、 地面には少しだけ雪が積もっていた。
そして、この日もデートだった。
――キスはしない癖して、デートだけは一丁前。
そんな自分に『どんなだよっ!?』っと軽く突っ込みながらも、毎日が充実していた。
そんな俺は今日、 カバンか服を買ってやるつもりでデートに誘った。
なぜなら、もうすぐ梅花の誕生日だし、それに 付き合い始めてから何かを買ってプレゼントしたことが一度もないからだ。
だから、『たまにはいいかなぁ』とか思って、デートに誘ったわけである―――――。
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梅花:「あっ、これ可愛いっ!!」
――服を手にし、鏡越しに自分に重ね合わせる梅花。
俺はその服とのバランスを見て、梅花に「いいんじゃねぇの?」っと言う。
すると、嬉しそうな顔をして梅花は笑う。 とっても可愛い満面の笑みで。
デートの帰り道、梅花を家の前まで送ってきたところの話である。
梅花:「今日はありがとね」
梅花はそう言って、服の入った紙袋を視界でチラつかせる。
俺は「いいよ」と微笑み返し、「気に入ってもらえるなら・・・」っと続ける。
――互いに、今日は楽しい1日になったと思う。 梅花も同じ気持ちだったなら―――――。
俺はそう思い、梅花に言う。
俺:「今日は楽しかったな・・・」
すると、梅花は「私も楽しかった!」と玄関先で言う。
だが、俺に耳に「私も―――」っという言葉が入ってくるかどうかのタイミングで、
梅花の後ろで車のライトが“ピカッ”と光輝き、甲高いブレーキ音と共に梅花に近付いてきた。
それを見て、俺は「危ない!!」っと咄嗟に叫び、梅花を手で押しのけた。
しかし、梅花を助け 逃げ遅れた俺―――――。 俺は、車によって薙ぎ倒される。
『いやぁああ゛ーー』 ――耳の奥に梅花の悲鳴が響く。 ――だけど、俺は何も言えない。
――すでに俺は車の下敷き。 車が重すぎて身動きの一つも取ることができない。
ただ、空しく車に轢かれるだけ。 ――俺には何もすることができない。 どうすることもできない。
ただただ痛いだけ。 俺の身体からは、頭からは、ダラダラと血が溢れ出す。
――自分でわかる、生暖かい感覚。 ――そんな中、俺は一生懸命に手を伸ばした。
少しでも梅花に触れていたくて。 少しでも梅花の手を握りたくて―――――。
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しかし、梅花の手を掴むことは出来なかった。
俺には体力というのか、気力というのかが、もうなかった。
俺は梅花の泣き叫ぶ声を聞きながら、気を失った―――――。
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“うぅ゛・・・” っと、ほんの少しの呻き声をあげる。
それから薄らと目を開け、周りを見てみる。 『俺はどうなったんだ?』って。
すると、すぐ俺の右側で、おふくろがリンゴの皮むきをしていた・・・。
俺:「俺は・・・」 ――そう話しかけると、おふくろは言った。
母:「あんた、ずいぶんうなされてたわね・・・」
:「大丈夫なの? 疲れてるんじゃない??」 っと。
――俺はそれを聞いて、言った。
俺:「そうかもな・・・」
:「で、俺は何を・・・?」
母:「はぁ? んなこと知らないわよ!!」
:「ほらほら、リンゴ! リンゴでも食べて、気分転換!!」
――そう言って、おふくろは俺にリンゴの入った皿を渡す。
――やはり、梅花とのデートや全てが夢だった。
――けれど、心の温もりは、まだ 消えていない。
――俺は梅花との事を思い出す。 なんだか、少しだけ寂しい感じがした。
――今まで一緒にいたから、その感覚がなくなるっていうのはちょっと・・・。
それから、俺は笑った。 ――あんな夢を見てしまった自分を馬鹿にする意味で・・・。