~俺の思い と 他人の想い~
ここは 桃源高校2-A。 俺のクラスの中だ。
そんな俺は今、自分の足で立っている。
――久々に自分の足で立っている感覚。
俺は、夢の中の事だけれども、その事を少し嬉しく思った。
そんな風に、俺が感情に浸っていると、廊下から俺を呼ぶ声がした。
「先輩っ! 上条先輩っ!!」 ――っと、とてつもなく大きな声で。
俺は、廊下の方を見る。 “誰だ?俺を必要としているのは?”と気にかけながら。
すると、教室の扉を勢いよくガラガラと開け、ズカズカと廊下から人が入ってきた。
その入ってきた人とは、学年が一つ下の笹川梅花といサッカー部のマネージャー。
『なんでこいつが?』 ――確かに、梅花は俺を好いている。それは俺も知っている。
――だからと言って、何故 梅花なのだろうか?? 俺は、かなり不思議に思った。
だが、そんな俺に梅花は声を張り上げて言った。
梅花:「やりましたっ!!」
:「やりましたよ、先輩っ!!」 っと。
しかし、俺にはその意味が分からず、思わず「はっ!?」っと聞き返す。
すると、梅花は さらに声を大きくして、叫び散らすように俺に言葉を放った。
梅花:「いやっ、「は?」じゃありませんよ!! 大会の話ですよ!」
:「先輩、寝ぼけているんですか(笑)? 頭、大丈夫ですか!?」
:「前に、大会で相手が反則してるって抗議した話ですよ!!」
:「結局、ハンドしていたかどうかはわからなかったんですけどねっ?」
:「なんと面白い事に、相手チームはドーピングをしてたんですって!!!」
:「あははっ! 今の時代にもあるんですね、 ドーピングなんて(笑)」
『おぃおぃ、何の話だよ!』 っと俺は突っ込みたかったが、止めておいた。
っと言うよりも、出来なかったんだ。 梅華が急に泣き崩れたから・・・。
梅花:「でっ、でも、よかったれすぅ・・・」
:「ほんっ・・・ほん・・とうに・・・よかった・・・」
そう言って、鼻水を垂らす寸前まで来ている。 泣きまくっている。
だから、俺は 床に崩れてしまった梅花の肩をグイッと引っ張って、椅子に座らせた。
だが、それでも梅花は泣き止まない。
むしろ、鼻水をズビッーっと啜りながら、話し続けた。
梅花:「らって・・・」「だって、足が治ったんですよ?」
:「お医者さんも無理だって言っていた先輩の足が、治ったんですよ?」
――なるほど、 そういう設定なのね・・・。
俺は、あまりにも現実味を帯びているアリスの夢の設定に、少しだけ感動した。
本当に、少しだけ。 本当に、少しだけの話だけれども・・・。
それから数分経って、梅花は涙と鼻水を拭ってから 俺に言った。
梅花:「やっぱり私、ダメなんです・・・」
:「私、 先輩がいない間、ずっと何かが“足りない”気がしてて・・・」
:「でも、今 わかったんです・・・私には上条聖馬先輩が必要なんだって!」
:「だから、好きです!! 私と付き合って下さい!! 」 っと真剣な顔つきで―――。