~悪夢の階段は、 希望への道に繋がるはず~
映画が始まってから、ちょうど28分・・・。
右斜め前に座っていたオッサンの携帯が“ジリリリ”と鳴る。
暗い館内に、『11時28分』と光り輝く画面が一つ。
そして、その画面を見て、オッサンは電話を出ようと耳に当てよう顔に近づける。
――その時だ!! 俺は『上映中だぞ? 電話に出るなよ!』って少しイラっとするわけだ。
だが、その心の声がオッサンの耳に届くことはない。
まぁ、聞こえてもらっちゃ困るんだが、オッサンはとにかく電話に出た・・・。
いやっ、出ようとしていた。 だが、出るか出ないかのところで、それは阻止された。
何故か・・・それは、急に地面がぐらりと揺れたからだ。
それはそれは、大きく揺れたなんてものじゃない。 とっても大きく・・・だっ!!
だから、俺の身体は椅子から一瞬 中に浮き、そしてバランスを崩し、周りをガシッと掴む。
だが、そんな慌てふためき『どうしようか?』と考えている俺の隣りには 大事な綾奈の姿があり、
『震度5はあるだろ?』と思えるほど大きな地震は、 停電を起こして、目の前を真っ暗にする。
だが、感覚でわかった。 ――『やばい、天井が崩れる』って。
っと言っても、それは第六感だとかの馬鹿げた感覚などではなく、
鈍くて、何かが崩れようとする音・・・聴覚によって気付けたんだ!
とにかく、俺の頭上には崩れる寸前の天井が・・・。
だから、俺は咄嗟に『このままじゃ、死ぬ』って思うわけである。
だが、残念ながら時間は待ってなどくれなかった。
俺は逃げることもできずに、天井が迫ってくるのをひたすら待っているだけで。
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だがしかし、俺の身体は無意識のうちに、左にいた綾奈をかばっていた。
そのおかげで、綾奈の身体にはかすり傷の一つもついてなどいない・・・。
だから、『よくやった!』と俺は純粋に自分を誉め称えた。
しかし、そうやって馬鹿みたいに喜んでいられたのも一瞬の事であった。