~癒えぬ痛みは、気付けばサヨナラの涙に~
“グサリ” っと鈍い音をさせて胸に突き刺さる、ナイフ。
赤い、赤い、真っ赤な血が、ドクドクと脈打つ鼓動と共に溢れだす。
それは止まる事を知らず、辺り一面は俺の血の色で染まる事に・・・。
――それにより、俺は意識が朦朧としてきていた。
そんな俺を見ながら、さらに多くの涙を零しながら先輩は言った。
蓮:「あなたの所為で・・・」
:「あなたの所為で、わたしのビデオが世界中に流れる羽目になったじゃない!」
:「なんで・・・なんで、わたしがこんな目に合わなきゃいけないのよ!?」
:「あいつは「俺に何かあれば、お前とのビデオはネットに流れる」って言っていた!」
:「だから、あんたの所為でわたしの・・・わたしの・・・わた・・・しは・・・」
――先輩はそこで話すのを止めた。 っと言うよりも、続ける事が出来なかったんだ。
それは、苦しくて、想いが強すぎて、言葉に出来なくて、続ける事が出来なかったんだ。
俺は先輩をより不幸にしてしまった。 幸せにするはずが、不幸にしてしまった。
だが、『こんなはずじゃ、なかったのに』と いくら後悔したところで、時すでに遅し。
――どれだけ後悔したところで、 先輩の心の傷を癒す事は、もう出来ない。
正確に言えば、俺には癒す事が出来ない。 こんな俺には、もう何も出来ない。
俺は大好きな先輩を・・・大好きだった先輩を、さらに不幸にした最低な人間。
俺にとって憎かったジュンと俺とじゃ、先輩にとっては変わらない。 どちらも最低。
――俺は視界が掠れ、意識がだんだんと薄れていく中で、そんな事を考え続けていた。