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四愛 ~人生の価値~  作者: 尖角
-蓮の章-
11/22

~想いの数は、心に刻まれた傷の数で~























 蓮先輩には彼氏がいた。



 しかも、そいつはものすごい暴力男。



 何でもかんでも気に入らない事があれば、すぐに暴力で片付けようとする最低な男。




 ――でも、蓮先輩は強いのに、なんでやり返そうとしないのだろうか?



 そうやって、俺は ふと 不思議に思い、蓮先輩に尋ねてみた。











俺:「先輩は強いのに、なんでやり返そうとしないんですか?」


蓮:「ムリよ、 そんなことをしたら全てが終わるもの・・・」


俺:「どっ、どういう事なんだよ・・・全てが終わるって、一体・・・?」




































 ――だが、俺の放った言葉は、あまりにも無神経だった。









































 バタン―――――   それは、 突然 道場に響いた音。




 そう・・・俺の言葉を聞いた蓮先輩は、見るに堪えぬ形で泣き崩れた。











 5分、10分、  ひたすら時ばかりが流れて行く・・・。




 1秒の時が流れると、蓮先輩の瞳からは一粒の涙が溢れ出る。



 いや、もっともっと多い量かもしれない。 わからないが、先輩は泣き続けた。






 ――だが、何故 先輩は泣くのだろうか? 泣き止まないのだろうか?



 俺はその答えを必死になって考えた。  ・・・だが、答えは出なかった。




 そして、そんな答えの出ない俺を前に、 先輩は涙を拭いながら立ち上がった。



 ――それも、悲しく小刻みに震える肩を、必死に自分の手で支えながら・・・。


























 それから、先輩はそっと口を開いた。




蓮:「わたしが逆らえないのは、あいつが・・・」

 :「ジュンが、私のビデオを持っているから・・・」

 :「だから、わたしは逆らう事が出来ないの・・・」


俺:「ビデオ??」



 ――俺は そう言いながら、フリーズ寸前の頭をフル回転させる。



蓮:「そう・・・ビデオ・・・」

 :「あのビデオは、ジュンがわたしとの初めて(・・・)のを撮ったモノで・・・」

 :「本トに馬鹿だと思う・・・」 「わたしはそれを撮ってた事に気が付かなかった」

 :「でね? そのビデオについて知ったのが、撮影された日から二ヶ月経った時で・・・」

 :「その頃 私は、ジュンが暴力をふるう人だって知って、ジュンが嫌になったの・・・」

 :「だけど、これを機に直してくれればいいと思って、「別れて」って言ったの・・・」

 :「けどね? あいつは反省なんか少しもせずに、笑いながらわたしに言ったのよ!!」

 :「「お前は俺とは別れられない! このビデオがある限り!」って!!」






 そう言って、蓮先輩は再び涙を溢した・・・。



 だが、今度は先輩が泣き崩れる寸前で、俺が身体を支える。




 ――また、泣かれても困るんだ。 せっかくの可愛い顔が台無しになってしまうから。






 だから、許せない。  先輩をこんなに泣かすジュンとやらを、俺は許さない・・・。





 俺は憎悪の念を心に抱きながら、 先輩が泣き止むまでひたすら支え続けた。

















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