終章
さつきが発狂してその場から動かなくなってから、居合わせたヒトたちはそれぞれの居場所へと戻っていった。ジョーカーとジャックしかいなくなってからジャックが笑いながら切り出した。
「あ~あ、楽しかった!!ありがとな。ジョーカー」
「ん?何のことだ?」
唐突にジャックに礼を言われたジョーカーは何のことかわからずに聞き返していた。
「惚けんなって!あいつを此処に呼んだのお前だろ?」
まるで確信しているかのような物言いで言い切ったジャックにジョーカーは、
「何故そう思ったんだ?俺は帰そうとしたんだぜ?」
そう思った理由を聞こうとしていた。
「お前しかいねぇよ。」
お前しかできねぇよ。言外に滲ませたこの言葉をも読み取ったジョーカーは、
「…確かに、その通りだ。」
誤魔化しもせずにすぐに認めたのだった。
そう、ジョーカーの“特別”は、『場をかき乱すジョーカー』なのだ。その“特別”をもって工藤さつきという人間だったものを、此処に呼んだのだ。ジョーカーの“特別”でしかこの山に普通の人間を呼ぶことはできない。そのことを知っていたジャックは、ジョーカーに楽しめた事への礼を言ったのだ。
「すぐ認めんのな。じゃあ聞くが、何故呼んだ?」
「何故?決まってるじゃないか!楽しいことを作り出すためさ!オレは楽しいことが大好き!混沌が大好き!何てったってジョーカーだからネ!」
彼はジョーカー。ヒトの姿をしているが、トランプのジョーカーそのものだ。彼の“特別”は、トランプが54枚ある中で2枚しか入っていない数字を持たないカードという特別。そして、ゲームの中で混沌を作る役割や、数字が入っているカードの代わりになれるという役割、自身を持つものを負けさせる役割などを持つ特別。つまりは、ゲームという場を成立させたり、混沌を作り出すことのできる特別。二つが合わさり“トランプのジョーカー”の化身たるジョーカーは”特別”になりこの山に入ることができた。存在し続けることができているのだ。
「確かに楽しかったな」
「アア!彼がどんな“特別”へと変貌していくのか、今から楽しみだ!!」
「変貌?」
「この“不思議の山”に、普通を持つものが入ると持っている普通な事が変貌していく!卑弥呼がいい例サ!」
卑弥呼は確かに普通とは違う占いの能力があった。しかし、精神は普通の精神を持っていた。普通とは言っても通常の人間よりは高潔な精神だったが。そんな普通の精神をもってこの山に入った卑弥呼は少しずつ心を無くしていった。変貌し終わった後は、心は無く何にも興味を持たずに占いだけをしているようなひみが生まれていた。
「ふ~ん」
聞いてきたジャックはジョーカーの答えに興味を持たずに受け流した。
「さあ、見届けようか!彼の、さつきのこれからを!!」
《五年前、登山中に失踪した工藤さつき君だと思わしき死体が昨日発見されました。死因は現在調査中です。………では、次のニュースです。》
暗闇が広がる部屋に一つだけ机があった。机は部屋の真ん中にポツンと置かれている。まるで机にスポットライトが当たっているかのように一筋の光が差し込んでいた。そんな部屋の中に男のヒト、ジョーカーが居た。ジョーカーは机の前に立って一つの写真を眺めていた。机の上に一つの写真が浮かんでいるが、その浮かんでいる写真を眺めていた。その写真は一度ギリギリ目に見えるかくらいの粒子となりもう一度写真を形成した。しかし、写真に写っているものは変わっている。粒子になる前は、森の中で一人の少年が笑っている写真だった。粒子になった後再形成した後は、森の中は変わらずに表情が変わっていた。口角は上がっているのに目が笑っておらず、目に絶望を宿している。まるで絶望の中無理矢理笑わされているかのような表情だ。
写真の変化を見届けたジョーカーは、
「ここからが本当の変貌だぜ?彼はどんな“特別”へと変貌するかネ~?」
と、笑いながら部屋を出た。
これは、特別になることを夢見た少年が“不思議の山”で“特別”に成った物語である。
こんにちは!
この作品はこのお話で完結です。
最後までお読みいただきありがとうございました♪
語彙が少なく、表現の技法も拙い私の作品を短いものとはなりますが、一応最後まで読んでいただけたのはとても嬉しく思います!
いろんなものに手を出し過ぎて完結しきってない作品しかない中でようやく完結したものを出せてよかったです。
繰り返しとなります。きっとたまたま目についたから読んでいただけたのではないかと思いますが、最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。




