二章
置いて行った男がそんなことを言って、考えているなんて知らない少年は、走るのはやめ山を歩いていた。
「あいつ何!?自分が特別だからって、…絶対僕のことを見下してるんだ。あいつ等みたいに。」
男に対する愚痴を言いながら。少年は、この山は広いし山にいる人はそんなにいないからすぐに会うことはない、と思っているから愚痴を声に出しながら道を歩いていた。あいつ等とは、この少年をよく普通だ!とからかう同級生たちの事である。同級生たちは最悪なことに少年とは幼馴染で、小さいころからからかわれているのである。そのため、少年の心はとっくに同級生(幼馴染)から離れているのであった。そんなことは置いておいて、少年は一人だと思って愚痴を言いながら歩いていた。
「うるさい」
そんな慢心している少年に対して声を出して存在を知らせたヒトがいた。
急に声をかけられた少年は驚きながら、そのヒトに尋ねた。
「誰!?」
声が聞こえた方へ向きながらそう尋ねた。声の主は、どの時代の物かわからないが、現代の物ではなくとてつもなく古い時代の服を着た女のヒトだった。その女は、石で出来た椅子に座り、これまた石で出来た机に丸い何かを持った手を置いていた。女の向かい側、机の前にも石で出来た椅子があった。
「独り言、本当に迷惑。静かにして。」
「……すみません」
女は、少年の問いに答えなかったが、女の言うことも一理あると思い少年は素直に謝った。しかし、女の口は止まらなかった。
「それに、人に名を聞くときは自分から名乗るのが礼儀。違う?」
「すみません。僕は、……工藤さつきです。」
少年が名乗った瞬間リンと、一度鈴の音がなった。山に入った時と同じ鈴の音だ。しかし、音色は同じだが、少しだけ音が小さくなったように感じる。
少年は名乗る前にちゃんと男の忠告めいたことを思い出していたが、自分から聞いたのだから、と考えちゃんと自分の名前を名乗った。
「そう、私はひみ」
女、いや、ひみは会話を続ける気がないのだろう。そう言って手に持っていた丸い何かに目を向けていた。
少年はひみが何をしているのか気になり、開いている向かいの椅子に座った。ひみはそれを一瞥しただけで何も言わなかった。そして、痺れを切らした少年が話しかけた。
「…何してるんですか?」
「占い」
ひみはやはり会話を続けようとしなかった。しかし、少年は根気強く質問をしていく。
「何の?」
「君の」
「僕の?」
「そう、もういい?」
ひみはうんざりしながら会話を終わらせようとした。だが、少年は意に介さずまた話し始めた。ただ、その話も少年が少しキレながら進めていたが。
「勝手に何やってるんですか!?」
「君だって、勝手に座った」
「それとこれとは「別じゃない」
言葉を遮られた少年は少し、ムッとしながら考えを切り替えた。
「僕のことを占ってるなら聞いてもいいですか?どうやったら特別になれるか。」
そう少年に聞かれたひみは、嫌々ながらも答えてくれた。
「………君はもう“特別”」
「どこが!?」
だが、その答えは思っていたものと違った。
「君はもう“特別”になれる道を選んだ。ただ、その道のせいで面倒なことになる」
また、少し違う答えが返ってきた。
「どういうこと?道??」
少年は答えの例えがわからず、困惑していた。少しでも理解しようと、ひみに尋ねてみたが、
「君は選択を迫られる。その道はどっちも後悔しかない。」
「……ねえ、聞いてる?」
道、という例えが何かを聞いたのに答えてもらえなかった少年はもう一回問いかけてみた。
「それも仕方ない。その道を選んだのは君なんだから。」
しかし、ひみはまた少年の問いには答えず、占いの結果を言っていた。聞いていないと判断した少年は静かに立ち去った。少年が去ったことにも気づかずひみは話を続けていた。
「まあ、一番いい選択肢は、今から来た道を戻って“普通”に戻るっていう……もういないか。せっかく親切に全てを教えようとしたのに。それを無駄にしたのは君だから。」
そう、少年が去って行った道を見ながらひみは呟いた。
少年が去った方向へ木の上を駆け抜けていく存在がひみの呟きを聞き、ニンマリと笑みを浮かべた。




