3 私に気付いて
「今日の名簿はー?…じゃんっ!」
『ジョン騎士隊長がケガをした』
「おー。お気の毒に」
『食堂の看板娘がかわいい』
「うわ見てみたい!届けるの楽しみ!」
『商会の会長を殺したのは、2番目の息子だ』
「…」
カリカリカリ。
「さあ、今日もノルマ達成しなきゃねっ!」
◆◆◆
うわぁぁぁぁっ———!会長が、会長がっ!
『叫喚』。それは、殺人現場を目撃した者の義務だ。びっくりして叫ぶのではない。ビビりだから叫んだのではない。殺人犯を逃さないための決まり。
その後は、犯人を街ぐるみで捕まえる。ただ、ほとんどの者にとっては所詮他人事だ。
◆◆◆
のどかな昼下がり。それぞれ煙草と新聞を手に、商人たちが談笑していた。
「おいお前ら聞いたか?あそこの会長、殺されたらしいぞ」
「そうなのか?ゴタゴタしてたもんなあ」
「会長殺したらあの大商会が手に入るんだろ?…誰が犯人でもおかしくねえな」
商人たちは目の前の大きな建物を見上げ、ごくりと唾を飲み込む。
「お前、やったのか?」
「馬鹿言え。こちとら新婚だぞ」
その横を真っ白な少女が通り過ぎた。
頭から爪先まで真っ白で、ハチマキのようなリボン。間違いなく目立つはずなのだが、誰一人として気にしてはいない。彼女は、そういう存在なのだ。
「いらっしゃい。本日は何をご入用で?」
「2番目の息子さんを1人」
「…はい?」
「冗談です。少し渡したいものがあって」
「ああ…なるほど。少々、お待ちください」
商会は十数人を雇い、食品から輸入品のアクセサリーまで幅広く扱う。大きな建物には事務所、倉庫、銀行、宿泊施設、さらには礼拝堂まであるとか。
「ったく。親父が死んだばっかりだと言うのに、どいつもこいつも…」
筋肉質で大きな体格の若い男が、短いヒゲをポリポリと掻きながら出てきた。ひどい内股だ。
「こんにちは」
「お嬢ちゃん、悪いが俺は忙しいんだ」
「…お時間は取らせません。ただ、お手紙を届けに参りました」
「手紙?」
『商会の会長を殺したのは、2番目の息子だ』
ダンッ!
男は、手紙を目の前で真っ二つに引き裂いた。そのままグシャリと握りつぶす。
「ふざけんなっ!おいガキ、いたずらにも限度ってものがあるんだよ!」
「いたずらではありません。これは、『噂』です」
「誰がこんな馬鹿げたことを『噂』したと?ぶっ殺してやる…」
「さあ?私は届けるだけですので」
「ちっ、名前を言えっ!親はどこだ?家は?親の職業は?」
「『噂』と申します」
「もういい。出ていけ!次来たら許さねえからなッ!」
ガンッ
「…ノルマは達成した。帰ろう」
少女はロリィタドレスを軽く払った。白いため、土が付くと目立ちやすい。
彼女が立ち上がろうとしたその時、誰かが前に立ちふさがった。
「面白そうな事やってるね、いたずらっ子ちゃん。俺、そういうの好きだよ」
少女は、戦慄した。転生して、1度も人に声を掛けられたことがないのに。認識すら、されにくいのに。
「なんで、?」
「俺は———」
皆さん、事件現場に遭遇したらちゃんと叫んでくださいね?叫べたよ、という方は下の☆☆☆☆☆をそっと埋めてください。報告、お待ちしております。




