2 金と銀の少女
「面倒くさい…」
金瞳を持つ少女は、ベッドに背中から倒れ込んだ。
その手には一通の手紙が握られている。
「きれいな子だった」
真っ白な封筒をシャンデリアに透かすと、あの不思議な少女の姿が浮かぶ。
突然バルコニーに現れた、人形のような少女。
「———そうだ」
窓を半分開け放つと、冷たい風が吹き込んでくる。
少女は布団を肩まで被り、無理やりに目を閉じたのであった。
◆◆◆
「お早うございます。素敵な天気ですねえ」
目を、開く。ふわっとなびく銀色の髪と、間延びした声。
「また来たのね」
「はい、お手紙を届けに参りました」
「…今日はどんな悪口かしら」
まだ寝ぼけている目をこすり、開くとたった1行。
『公爵令嬢は、使用人をいじめている』
ふぅ———
「『噂』さん。これは、誰からのお手紙なのかしら?」
「さあ?…ただ、あなた宛てでは無かったんでしょうねえ」
「変なの」
「そうですねえ。では、さようなら」
「ええ」
コンコンッ
「お嬢様、朝でございます。もう朝食を召し上がりますか?」
「今行くわ」
◆◆◆
昔々、この国に『隣国で民が迫害されている』という噂が流れた。
わが国の民を守る。
それは、王が宣戦布告の書類にサインし、騎士たちが剣を抜くのに十分な理由であった。
戦争は10年にもわたって続き、史上最も悲惨な戦とも言われる。
最後に終止符を打ったのは、隣国の王が病に臥せったという噂。
この国は、それをきっかけに総力を上げて攻め入り、勝利を掴み取った。
噂で始まり、噂で終わった争い。
後に、王の部屋から一通の白い封筒が見つかったとか。
それもまた、噂だ。
◆◆◆
「それでな———エリシア。聞いているか?」
金瞳の少女は、王太子に向かって優雅に微笑んだ。
「もちろんでございます。ご購入なさった方がよろしいかと」
王太子も優雅に微笑み返し、カップを手に取る。
「分かった。これから買いに行こうと思う。…父上を」
王太子の背後に控えていた執事が、何かを堪( こら)えるように深呼吸をした。
「っ、へ?」
「聞いていなかったんだろう?丸わかりだ馬鹿」
「すみません…」
昨夜あまり寝られなかった少女は疲れていた。
カップの湯気をぼうっと見つめる。半月に一度、婚約者である王太子とのお茶会だ。しっかりせねば。
「———だったんだよ。だから、どうだ?今度の日曜日に行かないか?」
今度こそ、扇子まで広げて優雅に微笑む。
「ぜひ。日傘を持っていかなければいけませんね」
王太子も再び微笑んだ。
「ああ。やはり日傘がないとな…図書館で日焼けしたら大変だ」
ゴフッ
執事は、ちょっと耐えることができなかった。
明日図書館に行く予定がある方。日傘を忘れていませんか?忘れていたという方は、ぜひ下の☆☆☆☆☆を埋めて下さい。報告、お待ちしております。




