表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/16

水浴び(挿絵有)

――――遭難三日目。


 魔界制限自治領


 マジェラ樹海南部。アパポリス川上流支流。時刻は朝。天気は快晴。


 大量の食糧を放棄しても河川の捜索を優先したのは正解だった。


 でなきゃ脱水症状で倒れているだろう。それほどまでに高温多湿の環境は暴力的だ。


 それでも河川に近いおかげで風通りが良くマシではあった。


 この辺りの環境は墜落地点とは大きく異なっている。


 対岸は鬱蒼とした木々が水中にまで深く根を張っていて、魚や甲殻類の隠れ家になっているだろう。


 水面から鋭いヤシの葉を伸ばしているものもある。アマツ皇国では見たことのない種類だった。


 対して拠点側は鋼樹スチールウッドが深く根を広げ地面を固め、隙間を埋め尽くすように竹が生え揃っていた。


 特に竹は革新的だ。何にでも使えるだろう。


 容器、罠、武器、寝床……。今日は竹を伐採し続けることになるかもしれない。


「…………シロロンはどこに行ったんだ?」


 珍しく彼女のほうが早く目を覚ましたらしい。周囲を見渡しても見当たらなかった。


 だが彼女もバカではない……はずだ。無茶なことはしていないだろう。


 ユミフネは作業の前に体を洗い流すことにした。最後に湯浴みをしたのは【鉄竜】に乗る前日だ。


 実に四日ぶり。日夜泥と汗と血に濡れた体はハッキリ言って不快だった。


 幸運なことに支流の流れは穏やかだ。


 川は幾つにも枝分かれしているようだったが、茂みの向こうから覗く水場は、少なくとも拠点周りは透き通っているようだった。


「はぁ……。まだクソ痛えな」


 服を脱いで、腹部の傷口を押さえる。膿んでいないことが奇跡だった。


 そうやって俯きながら水場に向かっていくと、チャポンと、水の流れに反した音が響いて、ユミフネは顔をあげた。



挿絵(By みてみん)



 ――――シロロンが素っ裸で水浴びをしていた。


 目と目が合う。言葉が出るよりも先に耳が倒れた。


「っ――――………………」


「あーーー…………いや、悪い。俺が不用心だった」


 硬直したまま口だけが謝罪をぼやく。


 目は素直に、シロロンをずっと捉え続けていた。


 服越しでも理解できた大きな双丘が揺れる。


 視線を下に向けると、昨夜手の触れた臀部から、尻尾が映り込んでくる。


 泥に汚れて虫の住処になりかけていた薄汚い尾は、水を吸って細まりながらも、純白の毛並みを取り戻していた。


 良くみると水面でダニが溺れていた。


 虫にまで視線が向かうと、シロロンは我に返って、牙をあらわにした。


「い、いつまで見ているのかね……? 人の体にくっついていた虫にまで欲情して……はっ、ワタシがいくら美し可愛綺麗とがいえ、ガン見は……紳士的ではないと思うがね」


 わなわなと腕が震える。恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくのがわかる。


 ――異性に見られた。それも敵に! 一つ口をひらけば嫌味ばかりのやつに! いや?


 だが雨曝しの際に一度裸は……いやいや、これは緊急時ではない……!


 ぐるぐると思考が巡って、開いた口はぱかーとしていった。尾が激しく水飛沫を飛ばしていく。


 それでもシロロンにとっては、女々しく悲鳴をあげたりだとか、動揺して体を隠すのはなんだか負けた気分になる行為だったから。


「別に、ワタシは平気だがね? そちらの倫理を問うているのだが?」


 って感じで振る舞って誤魔化すことにした。


「ああ……? そっちが平気なら別に俺は気にしないが」


 ユミフネは僅かに首を傾げすっとぼけると、すぐ横で自分も体を洗い流し始めた。


「えぇ……? ええ? 君はもしかしてとてつもなく鈍感なおとぼけ野郎なのかね?」


「嗚呼、そうだ」


「ガルルル……! すっとぼけるな! 本当にそうなら、嗚呼、そうだ! なんて返事はしないだろう……!」


 現状に余裕があるわけではなかったが、それはそれとしてユミフネは見れるものはしっかりと目に刻んだ。


「それより今日は竹を可能な限り沢山集めておいてほしい。ずっとハンモックじゃ体が曲がるから、高床の寝床を作る。屋根付きでな」


 そのくせして、まるで興味がないかのように振る舞って、全く関係のない話題を振ってみせる。


 生きるか死ぬかの話なら最低限の譲歩はするが、別に紳士ではなかった。


「……その間ユミフネは何をするのかね?」


「溝を掘る。初日みたいな雨が降ったら水浸しになるからな。そろそろ朝食に戻ろうか」


「昨日の肉は食べきってなかったかね?」


「いや、通りがかりに蜥蜴からいたから数匹頭を潰しておいてあるのと、今、足の指で一匹、ドジョウらしきものを掴んでいる」


「君は実はここで暮らしていた経験でもあったりするのかね……?」


 シロロンは引き気味に顔を引き攣らせた。

全体イラストが視たい?

まぁ健全な範囲でだが……なぜだか皆ピクシヴに向かっていくね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ