表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/15

死ぬはずがない

 二章:ベースキャンプ



『嗚呼、ヨミには言っただろ。大した夢じゃない。とっとと前線から退く! 溜めた金でハヤアキツの森の奥にでも引っ越して農場を作る。そこで鬱陶しい人間関係もおさらばだ。晴耕雨読ののんびり生活。……ふっいいだろ』


『待て。俺は今のヨミの言葉を聞き逃したくはない。音量あげるから待て……。よし、いいぞ。ハッキリ言ってくれ。頼む』


『その、農場…………!! 一人だけだと手が足りなくて……大変だと思うんすよねぇ……? だから、よかったら……私は、その、着いてってもいいっすけどね。…………可愛いお嫁さんが欲しいともぼやいてたじゃないすか』


 ヨミは無線記録を何度も繰り返し再生した。


 意味はない。


 ただそうしなければ叫んだり、壁を蹴ったり、部下に悪態をついてしまいそうだった。


「軍曹 サカノユミフネ、作戦行動中行方不明。推定死亡」


 まだ三日目だというのに、そんな一枚の書類が届けられて、署名するように命じられている。


 それは同時、ユミフネの救助要請が却下されたことも意味していた。


 あたりまえだ。戦争をしているんだ。


 軍曹が一人墜落し、即死していないから皆で助けに行こうなんてことはありえない。


 ……わかっているが。


「ユミフネが死ぬわけないっす……」


 ヨミは確信をもった様子でぼやいた。


 魔王戦争の際も窮地に陥ったことはあった。


 前線を押し進めるための拠点が強襲されて、ユミフネと二人だけで、真っ暗な川に飛び込んで、一カ月以上もの間遭難していたことがあった。


 魔法の雷撃で腹部に酷い裂傷があったのに、木を倒して家を作って、モンスターを狩猟して血肉を喰って、しぶとく生き延びてみせたんだ。


 思い出すと尾が自然と揺れる。


 川から這い上がり、体を温めるために触れあった肌の熱を思い出すと、今も熱く火照ってしまいそうなくらいだ。


 金の双眸がじっと、壁に貼られた地図を睨む。


 何度も、何度も、【鉄竜】の移動経路を、そして墜落地点を指で撫でた。


 もし生きて地上に辿り着けたなら、ユミフネはアパポリス川を目指すだろうか。


 大陸は鬱蒼とした密林ばかりだが、下流域には前線拠点の跡地が残っている。


 【鉄竜】が着陸できる程度のスペースもあるだろう。


 けれど魔界は危険な場所だ。


 ……いや、手つかずの自然そのものが危険な場所だ。


 アマツ皇国の歩兵装備や、帝国の魔法があればモンスターにも対抗できるが。


 【鉄竜】を操縦する際は軽量化のために、装備は最低限に限られている。


 以前に遭難したときとは話が違う。


 それに生きていても大きく負傷していたら?


 容赦のない高温高湿度はすぐに体力を奪い、蟲は容赦なく血肉を啜り続けるだろう。


「……絶対、助けるっす」


 ヨミは決心するように、窓の外の【鉄竜】をじっと見据えた。


「地獄までお供すると、……約束したんすから」


 思い出すように頬を赤らめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ