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六人目 〜花苑 火芽〜

第一章 崩れる日常

私の名前は花苑はなぞの 火芽ひめ

夫を早くに亡くし幼い一人息子の、花苑はなぞの 紫耀しきを女で一人育てている


昔から不幸を引き寄せる体質だった私は、怨念が纏わりついてるから、大切な人を失うと占い師に言われた

実際、世界で一番愛した夫の花苑はなぞの 健斗けんとは我が子を拝む事なく死んでしまった

早くに結婚した事や子育ての事もあり、シングルマザーとして日々忙しい毎日を送っている




ある日近くに住む紫輝しきさん夫婦に誘われて、最近できてた〝憩いのカフェ〟へ行った

子育ての気分転換に行ったそこは、とても美味しいコーヒーを出していて私はすぐ気に入った

疲れていた体を優しく包むようなそのコーヒーを飲み終え


実来みらいさん、朽実たくみさん

すごく美味しくて疲れが取れました

いい所を紹介して頂いてありがとう

花乃目はなのめさんも美味しいコーヒーありがとうございますね」


そう告げる

その後も何度か紫輝しきさんと〝憩いのカフェ〟へ行ってはコーヒーを飲んで過ごした

しばらく一緒に行っていたが、紫輝しきさんも忙しいらしく一緒に行く機会は減っていった

私はそれでも気に入ったその〝憩いのカフェ〟によく顔を出していた




そんなある日、カフェのオーナーである花乃目はなのめさんが声をかけてくる

常連客にはいつもしているそうだ


なんでもストーカー被害にあっているのだが、全く証拠がなく捜査打ち切りで落ち込んでいたらしい

そこで〝娘であるさくらの事を気にかけてやってください〟と頭を下げられたのだ


それについては先に、紫輝しきさんに事情をある程度聞いていたから知っていた

それでも心配だが、最初の頃はあまりに気していなかった

ただ話を聞いてからも通い続ける中で、少しずつ知らない間にさくらちゃんを気にかけるようになっていた




それからしばらく通っていたが、ある日息子の紫耀しきが〝自分もついて行きたい〟と言ってきた

私はせっかくなら一緒に行きたかったので


「そうね、じゃあ今度一緒に行きましょ」


そう言って〝憩いのカフェ〟に訪れた

初めて一緒に行った息子も、すぐ気に入ったらしく何度も一緒に訪れた

ただ仕事なども忙しく一緒に行けない日も続いた

そんな中、息子は〝憩いのカフェ〟に一人で行くようになった

しっかり者とは知っていたが、一人でカフェを飲みに行くにはまだ幼い子供と思っていたから、その成長に少し驚いた

それからも何度か一人で息子は〝憩いのカフェ〟に行っていた




ある日、買い物に出かけようとした私に


「お母さん、今日は買い物が終わったらまっすぐ帰ってきてね…

なんか良くない気配を感じるから…」


と言ってくる

いつも何も言わない息子は、最近オカルトにハマったのか、時折こんな訳の分からない事を言ってくる

私はそれを聞いて


「うん、わかったよ紫耀しき

ちゃんとまっすぐ帰ってくるからね」


と言って買い物に出かけた

その日、買い物に行く為に閉めた扉の先で、少し不安そうに泣きそうな息子の顔が、頭から離れなかった




それから買い物を終えた私は、家に向かっていた

その時〝憩いのカフェ〟のさくらちゃんの姿を見つけた

私はさくらちゃんに声を掛けようとすると、こちらに気がついたのか不意に近づいてくる

それに対して私は不意に近づいてきた事が気になって


「こんにちはさくらちゃん

こんな所で偶然ね?今日は一人?」


と軽く挨拶をしながらどうしたのか聞いてみた

するとさくらちゃんは急に抱きつく形で、私に縋り付いてきた


それと同時に私は背中に寒気を感じた

次の瞬間には腰に冷たい何かと痛みが走る

それと同時に暖かい何かが、背中から全体に広がっていくのを感じた

その急な事に対して私は、咄嗟に抱きついていたさくらちゃんを突き飛ばした


突き飛ばした時に前のめりになっていたのか、そのまま地面に倒れ込む

薄れゆく意識の中で息子の最後の言葉を思い出していた


「お母さん、今日は買い物が終わったらまっすぐ帰ってきてね…

なんか良くない気配を感じるから…」


そんな何気ない言葉を思い出しながら、笑顔を浮かべると


「ハハハ、ごめんね紫耀しき

私…帰れそうに、ない、かも…」


そう呟きながら私は、眠たい時に重たい瞼を閉じるように目を閉じると、そのまま意識を無くした

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