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二人目 〜花乃芽 陽子〜

第一章 崩れる日常

私の名前は花乃芽はなのめ 陽子ようこ

女子高生、花乃芽はなのめ さくらの母である


田舎から出稼ぎに来ていた私は、周りの状況に慌ただしくも楽しい日々を過ごしていた

そんな時、仕事場で夫の花乃目はなのめ 堅太けんたさんと出会った

私はすぐ一目惚れ、堅太けんたさんも一目惚れだったらしく、両思いだった私たちは晴れて恋人同士となった

その後、私たちは結婚して一人の子供を授かり、とても幸せな家庭を築いていった




しかしある事件を境に私は、娘のさくらとの接し方が分からなくなり、距離を置いている

一緒の生活にも耐えきれなかった私は、さくらを置いて住んでいた所も出て行った

結局、さくらには生活費だけ振り込んで、後は干渉しない現状にいたる

どことなく、そんな状況に引け目を感じながらも〝さくらは賢い子だから大丈夫〟と言う事を自分に言い聞かせながら、、、




そんなある日〝さくらの親友〟と名乗る子が家に訪ねてきた

名前は神谷かみたに ひかり

さくらと同じ高校に通う子である

ひかりちゃんの話をまとめると〝さくらがストーカーにあっている〟と言う内容だった

でも長い間、さくらと離れていた事もあり、どんな顔で会えばいいか分からなかった私は


「そんなの、私たち夫婦には関係ないわよ」


と言って追い返した

そんな私の横で夫の堅太けんたさんは、ひかりちゃんの様子に少し申し訳なさそうにしている

けれども私にはさくらと向き合う覚悟がなかったのだ…


しかし、それからもひかりちゃんは私たちの家に訪ねてきた

朝は学校が始まる前に訪ねてきて、学校が終わったら放課後にまた来る

休みの日は朝、昼、夕方と、何度も足を運んでいた

そんなさくらのために動くひかりちゃんを見て、私は申し訳なさそうな思いでいっぱいになった




そんなある時、堅太けんたさんが


「一度くらい、詳しく話を聞いてやってもいいんじゃないか?」


という一言に背中を押されて、ようやくひかりちゃんの話を聞くこととなった

話の内容から

『〝警察〟も協力してくれたが〝形跡がないストーカー被害〟の為、捜査は打ち切り

その結果を聞いてさくらが心身ともに落ち込んでいる〟』

という現状を初めて知った


話を聞き終えた私は堅太けんたさんと話し合って、さくらの事を何も見れてなかった事をひどく反省した…

しばらくして私と堅太けんたさんはさくらの住む家に戻る事にした


一緒に暮らす様にになったが、これまでの事があったからか、ぎこちない関係が続いている

そこにストーカー被害もあったので余計に距離がある気がした

そんな日常が続く中でも少しずつ関係を深めて、ようやくさくらともまともな会話ができる様になる

それでもさくらは時折周りを気にしたり、ストーカー被害に怯えてる現状が見られた




ある日、堅太けんたさんがさくらと話をしていた

それからだろうか少しづつだがさくらにも笑顔が見え始める


少しして堅太けんたさんから、昔に夢見てたカフェの店を開きたいと言われた

たしかにこの家は一緒にカフェが出来るように作った家だったから、店の内装となる作りも全てある


しかしさくらと再び一緒に暮らし始めてからは、さくらや仕事などで忙しかった事もあり、その話は無くなっていたものだった

そんな中での突然の事だったが、堅太けんたさんに〝さくらに人の温もりを感じられる時間を作ってやりたいから〟と強くお願いされ昔の夢だったカフェを開くことになった


堅太けんたさんがコーヒーを専門に扱う職に就いていた事もあり、周囲の評判も良く開店後は大繁盛していった

そして店の名前は、娘のさくらの為を思い〝憩いのカフェ〟となった




その後、近くの家族さんたちが常連客として来るようになり、さくらの事も気にかけてくれている

そのお陰もあってか、少しずつであるがさくらも店に出てきて手伝いをする様になった


それからしばらくした頃だったか、シングルマザーの人が、常連客の若い夫婦と一緒に店に来店される

事情を知ってから知らずか、さくらの様子を見て少し心配そうな表情を浮かべていた

たしかに明るくなってきたさくらだが、時折視線を感じるのかビクつく時がある

そんな様子がシングルマザーの人にも伝わったのかもしれない


それから何度か訪れたシングルマザーの人は、息子さんを連れて〝憩いのカフェ〟に訪れた

息子さんはまだ幼いなりにもしっかりとした考えや、大人に引けを取らない態度が目立つ子供だった




ある日、さくらが店の手伝いで注文を受けにいった際のことだ

そこにシングルマザーの息子さんが来店された

さくらはいつものように彼の注文を受けに行く

そこで息子さんと少し話をしている様子だったが、急にさくらの表情が暗くなるのが見えた

カウンターに戻って来ると


「あのテーブルのお客さん、いつものカフェオレ一つだって」


とだけ言い残し二階の寝室へと戻っていった

その様子を見ていた堅太けんたさんが、その息子さんの所に、作ったばかりのカフェオレを持って行く

少し話していたが、堅太けんたさんはすぐ戻っていつも通り仕事に入った


それからだろうか、またさくらの暗い表情が目立つようになる

心配して親友のひかりちゃんも、何度か様子を見に来てくれたが、さくらは日に日にやつれた姿が目立っていった




ある日、いつもの様にさくらの様子を見に、ひかりちゃんが〝憩いのカフェ〟に来店された

快く迎える私の横で堅太けんたさんは無言で珈琲を一杯出す

それをひかりちゃんは飲み終えると


さくら〜来たよ〜」


と呼ぶがいつもと違いさくらは返事を返さない

せっかく来てくれたひかりちゃんに対して、その態度はなんなの?

という思いから〝なにしてるの!〟と叫びかける

それを横でひかりちゃんが止めてくれた


「もしかしたら、少し疲れてるか、寝てるだけかもしれないから様子見てくるね」


と言いながらひかりちゃんは二階に上がって様子を見に行った


それからしばらくしてーー


〝バタン〟


二階から大きな音がする

何事かと思い急いで私は二階に上がるとひかりちゃんが廊下に倒れ込んでいた

私は急いで駆け寄り声を掛けるが返事がない

近づいた際にドロリとした液体が足元に伝わる


〝なんで、どうして、何があったの〟


と動転する私は慌てて携帯を取り出して、救急車を呼ぶ為に番号を押す

その時だった後ろに痛みが走る


背中に感じる〝冷たい感じ〟と〝暖かい感じ〟が混ざる不思議な感覚と共に、視界がぼやけてひかりちゃんに覆い被さる形で倒れ込み、私は意識が無くなった

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