表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の死に、祝福を。 ―魔王を倒した英雄が反逆したその後の物語―  作者: 坂町ミナト
2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/107

44. 経験値の違い

茂みをかき分けると、そこでは三人の青年が飛竜の群れに襲われていた。抵抗してはいたが、飛竜の数が多すぎた。


「大丈夫ですか!」


トールは青年らに近づこうとする。しかし飛竜に阻まれ、進めなかった。


「…っ」


トールの顔が歪む。トールは飛竜の攻撃をよけつつ、一体一体倒すので精一杯だった。


「…ニコラ、ちょっとここで待ってて」


アーサーがニコラに言う。


アーサーは少し膝を曲げ、勢いを貯める。そして勢いよく飛び出したかと思うと、トールの横を通りすぎ、目にも止まらぬ速さで飛竜たちに斬撃を加えていった。短剣から滑り落ちた飛竜の血で、アーサーの短剣が通った軌跡が見えた。


アーサーは体の右側に剣を振り抜きながら、軽やかに地面に着地する。飛竜の群れが、ドサッと音を立てて地面に落ちた。


「…!」


アーサー以外の全員が、唖然としてそれを見守っていた。わずかに残っていた飛竜は、急き立てられるように森の奥へと逃げ飛んで行った。


「君…、一体、何者なんだ…?」


ニコラが驚きを顔に表したまま、アーサーに尋ねる。


「…各地をめぐって魔物を倒す、狩人みたいなものかな」


アーサーはそう言ってにこっと笑った。


飛竜の群れに襲われていた青年らは呆然としていたが、ニコラを見て目を見開く。


「! ニコラじゃないか!」


青年らが叫んだ。三人ともあちこちに切り傷がついていて、ぼろぼろだった。ニコラは安心したように、顔をほころばせた。


「みんな…!」


ニコラと青年たちは駆け寄り抱き合った。


「よかった、無事で…」


「お前こそ…!はぐれて、もうだめかと…」


一人がニコラの右腕に気付き、表情が固まった。


「ニコラ、その腕…」


「…小ドラゴンにやられたんだ」


「嘘だろ…」


ニコラの右腕を見て、青年らは言葉を失った。


「あ、でも、ちゃんと処置はしてもらったんだ。しかも、ジェナスが助けを呼んでくれたんだよ。この人たち」


ニコラは落ち込んでしまった仲間を見て、明るく言った。青年らはアーサーとトールを見る。


「ジェナスが…?」


「ああ」


驚く青年らに、ニコラがうなずく。


「トールです」


「アシルです」


トールとアーサーは青年らに名乗った。


「ニコラ、この人たちがはぐれた人?」


「ああ。一緒にいたやつは、みんないる」


ニコラはほっとしながら、アーサーの質問に答えた。


「すぐに合流できてよかった」


アーサーはほほえんだ。


「えっと、みなさんは今、どんな状況で…?」


トールは青年らに尋ねる。青年らは困ったような、悲壮感漂う表情をした。


「とりあえず村を目指してたんだ。でも、だめなんだ…。ここから抜け出そうとしても、いつの間にかここに戻って来ちまう。飛竜にも襲われるし…。ドラゴンに遭遇してからこうだ。一体何なんだよ…」


その人は頭を抱えてしまった。彼らが陥っている状況は、トールたちと同じだった。


それを聞いて、トールは前に気付いたことを思い出した。


「あ…。アシルさん、俺、さっき気付いたんですけど…」


「ん?」


アーサーはトールの方を見る。


「アシルさんがニコラさんに気付いて森の奥に進んだとき、なんか、膜みたいなのを通った気がしたんです。そこを通過したら、空気が変わったみたいで…」


トールが話すのを聞いて、アーサーは目をすっと細めた。


「ああ、そういえばトール、何か言いかけてたね」


アーサーは顎に手をあて、少し考えた。


「…どうやら、この結界、あんまり質が良くないみたいだ」


「え?」


アーサーの言葉に、その場の全員が思わず聞き返した。


「結界って、質がいいものほど魔物だけを閉じ込めるらしいんだよね。でも、質が悪いと、容量がある限り何でも中に入れて、閉じ込めちゃう。たぶん上位の魔物のドラゴンが出現して、結界の容量がオーバーして中下位の魔物が結界から押し出された。まあ、その結果、人間が入れるくらいの余裕ができてたんだろうね」


トールはアーサーの言わんとしていることが、自分の考えていることと同じであることを悟った。


数人は、現在自分たちの置かれた状況がわかったようで、顔が青ざめていた。


「つまり、どういうことだ?」


遠回しなアーサーの言い方に、一人が理解しきれず尋ねた。


「つまり、俺らは今結界の中にいて、閉じ込められてるってこと」


アーサーが平然と言ってのけた。


改めて口に出して言われると、比にならない現実味が襲ってきてトールは震えた。他の人も、ドラゴンとともに閉じ込められている絶望的な状況に絶句し、顔面蒼白だった。


「それ、どうするんだよ…。ここから逃げられないってことだろ?ドラゴンもいるんだろ?最悪じゃないか…!」


狼狽が他の人にも伝播し、絶望感が漂った。


――まずい、この雰囲気、なんとかしなきゃ。


トールは負の方向へ向かうその場の雰囲気に焦る。


「とりあえず、残りの人を探そう。それで、ドラゴンを倒そう。抜け出す話はそれからだ」


アーサーが言った。落ち着いた声だった。


「でも…」


「…仲間が残ってるんでしょ?結界から抜け出せるかはわからない。ドラゴンがいる中で結界から抜け出す方法を探すは危険すぎる。なら、まずは残りの人を探しつつ、ドラゴンを倒すべきだ」


アーサーの言うことは真っ当だった。渋っていた青年も納得したのか、黙った。


アーサーはやはり魔王討伐パーティーの一員だったのだと、トールはアーサーの慣れた様子を見ながら実感していた。経験値が違った。


「あまり離れすぎず、手分けして探そう」


アーサーの言葉に、全員がうなずいた。







「あいつら、どこにいるんだろうな」


一人がぼそりと呟いた。


探し始めてから一晩を越していた。ニコラたちはずっと不安げな顔をしていた。誰も口には出さないが、もしかしたらもう、と思ってるのが見てとれた。木々の葉が怪しげに揺れる。


唐突に、アーサーがばっと右斜め前方を見た。鋭い視線だった。


「…いた」


そう呟くとアーサーはその方向へと走り出し、あっという間にトールたちから遠ざかった。


「え、どこ行くんだよ!」


突然走り去ったアーサーに、一人が驚いて声を上げる。


「きっと向こうに何かあるんです。行きましょう」


トールは残された四人を促し、アーサーを追って行った。


走っていくと、少し開けた場所に出た。


「…!」


そこの光景を目にし、トールらは絶句する。


そこには、ぼろぼろになって戦いつつ、なんとか逃げ回っている青年らがいた。


そしてその中心にいたは、真っ黒な巨体のドラゴンだった。


読んでいただきありがとうございます!


面白かったら下の☆☆☆☆☆から評価、またはブックマークをしていただけると励みになります。


次回更新は1/3です。

次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ