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英雄の死に、祝福を。 ―魔王を倒した英雄が反逆したその後の物語―  作者: 坂町ミナト
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24. アーサーを探せ

トールの宣言に、その場がしん、と静まり返る。


「…いや、冗談だろ?危険だ。騎士団に任せておけ」


口火を切ったのは店主だった。本気でトールを心配しているようだった。


しかし、トールは首を横に振る。


「いいえ。俺が捕まえないと、だめなんです。俺が納得しないんです」


「お前さんの気持ちはわかるがな…。騎士見習いだった血がさわぐんだろ?しかもしばらく一緒にいたとなるとな、捕まえたくはなるだろうが…」


「とにかく、俺は行きます」


トールは言い放つ。トールの気迫に負けた店主は、ため息をつくと言った。


「…そうか。くれぐれも気を付けるんだぞ」


「はい」


トールは店から離れようとする。


ふと足を止めると、トールは振り向いて言った。


「あ、店主。心配してくれてありがとうございます。お世話になりました」


トールはにこっと笑うと、歩いて行った。


「アースと同じこと言うんだな…」


店主はぼそりと呟いた。






町は、アーサー・ラングレット出現の報で騒がしかった。


町のいたふところに騎士団や武器を持った人々が見受けられた。それを見て、トールは何か冷たいものが心の中に広がるような感じがした。


トールは町の掲示板の前に立つ。


そこには、アーサーの手配書やアーサーが現れたという新聞、そしてアーサーを見かけたら騎士団へ通報するよう呼びかける貼り紙が貼ってあった。


--アーサーさんを、捕まらせるわけにはいかない。


トールはアーサーが反逆した理由も、逃げ続けている理由も、知らなかった。けれど、短い間でもアーサーが悪い人ではないとトールは分かっていた。アーサーに捕まってほしくなかった。


だからこそ、トールは自分でアーサーを見つけ出したかった。そして、連れ去りたかった。


トールは無意識に、貼り紙のうちの一つをぐしゃっと握りつぶす。


なんだか無性に悔しかった。


トールが掲示板を前に立ち尽くしていると、道を行き交う人々の話し声が耳に入ってきた。


「騎士団が町の門で検問してるって」

「南の方はまだらしいよ」

「アーサー・ラングレットがこの町にいるらしい」

「怖いな」

「反逆者を捕まえたら英雄になれるんじゃ?」

「裏道の方を若いやつらが探しているらしい」

「危険じゃない?」

「裏道は治安が悪いからな…」


人々が話すのを聞いて、トールは焦りをつのらせる。


--アーサーさんを、この町から連れ出さなきゃ。


トールは掲示板から道の方へ振り向く。


すると、トールの目の前には二人の若い男が立っていた。


「…」


トールの頬に冷や汗が流れる。


「おい、お前、見ない顔だな。何者だ?」


片方が聞いてくる。


--まずい…!

「えっと、俺はたまたまこの町に立ち寄っただけで…」


トールは慌てて弁解する。さっき、トールがアーサーといたことが町の人に知られたばっかりだった。早くアーサーを見つけたいのに、騎士団にでも連行されたらたまったものではなかった。


トールはとっさに作った笑顔がひきつっていないか不安だった。


「こいつ、別に顔似てないぞ?」


もう一人の男が、トールの顔と手に持った紙とを見比べながら言う。


トールに尋ねてきた男は紙をのぞきこむ。


「…はずれか」


男は残念そうに言う。


「勘違いだ、悪かったな」


そう言うと、二人は去っていった。


何事もなかったことに、トールはほっとする。


「裏も行ってみるか?他のやつらは行ってるぞ」


「裏なあ…。裏の人間も動いているらしいじゃないか。危なすぎないか?」


去り際の二人の会話がトールの耳に届く。


「…」


--今、アーサーさんってすごく追われてる状況なんじゃ…。


トールの頭の中では、今まで聞いた情報をもとに、アーサーが騎士団、町の人々、裏の人間に追われている図が出来上がっていた。


アーサーなら逃げきれてしまう気もしたが、トールは言いようのない嫌な予感がしていた。


--すぐにアーサーさんを見つけられれば、南から逃げられそうだけどな…。


トールは頭を抱える。問題は、アーサーを見つける手段だった。


トールは、はたと気がついた。


--アーサーさん、俺のマント持ったままだ。

トールの口角が上がる。


--これなら、アーサーさんを見つけられる…!


トールは裏道に入り、まわりに誰もいないことを確認すると、懐から杖を取り出した。


ふう、と深呼吸をすると、トールは額の前で杖を持ち、目を閉じる。


「"エクスプロール"、俺のマントはどこ?」


トールが呪文を唱えると、杖の先から何本もの光が空へと立ち上ぼり、瞬く間に横に広がっていく。


トールが使ったのは、民間魔法の一つである探索魔法だった。探し物をしたい時に使うもので、あまり魔法が得意でないトールは、自分のものを探すので精一杯だった。使える範囲も限られているので、すでにアーサーが町から出ていたら、見つけることは難しかった。


--アーサーさん、どこにいますか…?


トールは杖に集中する。杖から立ち上った光は、初めはふよふよとあてもなく空中を漂うだけだったが、だんだんと一つの方向へと収束した。


トールの脳裏に、アーサーがトールのマントを来て歩いている姿が映った。


「そこか」


トールはばっと目を開き、光の向かう方向を見る。光は、南の方向へ、裏道の奥へと伸びていた。


トールは無事、アーサーの居場所を特定することができた。


--今行きます、アーサーさん。


トールはきっと決意をにじませた表情を浮かべると、アーサーのいる方向へと伸びる光に沿って、走って行った。


読んでいただきありがとうございます。

次回更新は11/2です。

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