6
—
「と、いうわけで、このまま旅に出る事になりました……」
「斬新すぎますよ!」
リュウノスケは急な路線変更に憤る。昨日の会議はなんだったのかと、この場の誰もが思っていた。
「こっちの身にもなってほいしですわね!」
「うう、チーム対抗戦は、どうしますか……?」
「そうだね……、せっかくみんなが考えてくれたからね」
「もう、大事件が起きて、対抗戦が中止になるって感じですかね、学徒出陣をせざるを得ないような」
「では、魔王軍が学園に攻めてきて、そのあと軍隊と一緒に旅に出るのはいかがかしら?」
ニーナはナロウナに反対する。
「こ、ここで魔王軍が来るのは得策ではないと思います。味方軍が関与するより、冒険パーティの手におえる範囲内の事件でないと、話が広がりすぎて、戦記のようになってしまう可能性が……あると、思います……よね? リュウノスケさん」
「確かに、もし、パーティごと軍に入ってしまったら、以降は軍隊と行動を共になるでしょう。冒険っぽさは薄くなるでしょうね」
「軍と別行動するのは?」
「軍に編入されたけど、別行動を“許されている”というのは凄腕のベテランがやることで、学園の一年生には荷が重いし、読者も違和感があるでしょう。チート展開でもないですし」
「チートは避けたいね、作るのが難しくなると思うんだ」
ジョカンは前作の設定がひねりすぎて展開に制約が出たことを覚えていた。監督は今作は王道ファンタジーにすると言っていたのはそのためだ。
「もうこうなったら、リセットですわ! こんな感じに……」
…
「これより!チーム戦の開始じゃ!」
今日はいよいよチーム対抗戦だ。僕はみんなに声をかけた。
「みんな! 用意はいいかっ! 」
みんなが返事をする。
「いいわっ!」「任せろ!」「もとより……」
気合を入れる僕たち、そして……審判が開始の合図を送る。
「それではこれより! チーム対抗せ……、うわっ! なんじゃあれは!?」
――ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!
現れたのは、あの時のドラゴンだ! ドラゴンは試合会場に降り立ち開場を破壊し始めた!
…——カット!
「んー、展開が強引過ぎないかな?」
注文を受けたナロウナは不敵に笑い、得意げに言う。
「実は! このドラゴンはエピを探してるのですわ! そして学園をめちゃくちゃにして、主人公チームが追い払う、そして! 力に気が付いた学園がエピに目をつけて、そこから冒険の命令を出すのですわ!」
全員が身を乗り出して声を漏らす。特にロイは大きく頷いて賛成した。
「エピとドラゴンの深い関係の伏線か、……これは良い。展開が広がるかも、実はエピは竜を操ることができる古代人……とかね」
ジョカンは案を書き出す。ナロウナは得意顔だが、例のごとくリュウノスケが苦言を呈する。
「しかし急にドラゴンが壊しに来るのは、方向転換が丸わかりな気がします。……設定自体は良いと思いますが」
リュウノスケの言葉は一同が気にしていたところだった。製作者にとって、作品の裏を覗かれることは、正直言って恥ずかしいものだ。
「……方向転換には気づかれないようにしたいね」
唸りながら案を考える一同をしり目に、ロイが聞かせるでもなくつぶやく。
「対抗戦の内容を変えるのかな……」
それを聞いたジョカンは、少し時間を置いて思いつく。
「……なるほど、チーム戦の内容は戦うだけじゃなくて、遺跡の奥の宝を取ってくるとか、龍を一番に倒してくるとか、学園の外にすればいいんだ!」
ジョカンはホワイトボードの真ん中に学園と書き始めた。
「拠点はあくまで学園にして、そこから冒険に出るんだ! 学園ものと冒険ものも両立できる! 」
「竜退治であればドラゴンとの関係性も活かせます! これで行きましょう!」
皆同じ山を登り、山頂が見えた時のように、全員がまた一体となってまた、目標に向かっていく。
ニーナの筆も快調に進んだ。