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 会議が再開される。


 それぞれの作った仲間との出会いのシーンのお披露目だ。



「ワタクシですわね! 熱血剣士の出会いのシーンよ! 名前はブレイド!」


「よお! お前! 強えんだってな? 女連れとは優雅だねぇ、俺はこの学園で番長やってるブレイドってんだ!」


 赤髪の大男は僕に言った。大剣を担いでいる。


「僕は主人公、よろしく」


「よろしくするかどうかは、お前の力しだいだ……っぜ!」


 僕は急に振り下ろされた大剣を避けた。いきなり攻撃だとっ!


「どうした? 逃げてばっかりか!」


 こいつ、すごく速い! 避けるので精一杯だ。


 ……けど、隙はある。……ここだっ!


「ぐはぁ!

……俺に片膝をつかせるとは、やるじゃねえか!

これからよろしくな兄弟!」


 気がつくと、一部始終を見ていた他の生徒たちが噂をしているようだった。


「おお!

 赤髪のブレイドが主人公に忠誠を誓った!

 主人公! アイツやばいぜ!」


 周りから誤解されてしまったようだ。とほほ……


…——カット!



「どうですのっ⁉︎」


 ナロウナは小ぶりな胸を張って、意気揚々と評価を求めた。いつものようにリュウノスケが突っかかる前に、ジョカンが早々に切り上げる。


「少し言葉を足す必要がありそうだけど、大筋はいいんじゃないかな? 」


「つ、次は僕です!」


 恒例のナロウナへの抗議をする余裕がないくらい緊張をしていた様子のリュウノスケは、ぎこちなく前に出ると、口を開いた。


「では、魔法使いの出会いのシーンです。な、名前はアメリア」



「ねえ! 主人公くん! 」

 後ろから声をかけられる、振り向くと同じクラスのアメリアさんがいた。

「今度の団体演習、私もチームに入れてくれない? その、まだ、チーム決めてないでしょ? 私、攻撃魔法使えるし、回復魔法も使えるよ? 少しだけど……」

 僕はいつも明るい彼女が少し不安がっているのが見てとれた。確かに誰だって断られたら辛い、僕は即答する。

「アメリアさんが入ってくれるなら心強いよ! ありがとう!」

 それを聞いたアメリアさんの顔がぱっと明るくなったが、それに気がついたのか、あわてて隠す。

「そ、そう? えへへ、ま、この超秀才魔法使いにまっかせなさい!」

 彼女は安心した表情で、いつものアメリアさんに戻る。愁いを帯びた碧いまつげが上向いていくようだった。

「あなたもよろしくっ! えーと……」

 アメリアさんは僕の後ろにいるエピに声をかける。少し戸惑っていたが、前に出るとアメリアさんに答えた。

「私、エピ……、よろしく」

「うんっ、よろしく!」

 これであと1人、来週までには集めないと……。


…——カット!



「ど、どうでしょう!」


 不安そうに問いかけるリュウノスケは、アメリアのオマージュのようであったが、ジョカンは優しく答える。


「いいんじゃないかな、剣の女の子の名前もちょうどいいからエピにしちゃおう。じゃあ次は、ニーナ」


「は、はい。忍者のカスミです」


 ニーナはその場で立ち上がって文を披露する。



「動くな、動けば良くない事になる」


 僕は後ろから壁に組み伏せられ、刃物を押し付けられていた。相手の姿は確認できないが、交渉を試みる。


「……しゃべるのはいいのかな? 」


「……許可する」


「えっと、僕は主人公、一年生だよ。君は?」


「カスミ、この学校の生徒で一年だ。何しに来た? まさか刺客か?」


 なんでわざわざ同級生を暗殺するんだ、と、思いながらも、僕は背中の感触にドギマギしながら言い訳をする。


「た、たまたまこの小屋を見つけたから入ってみたんだ。まさか君がいるとは」


「そうか、では敵ではないのか、それは悪かった。」


「あの、離して欲しいな、その……当たってるから」


 僕の背中には彼女の胸がずっと密着していた。彼女は気がついてないのだろうか。


「ひゃっ!」


 腕を解かれた僕は彼女に向き直る。体を腕で覆い隠している彼女に向かい、お願いをすることとした。


「君、今度のチーム対抗戦の仲間は決まった? よかったら入らない? ちょうど探していたんだ」


 意外なお願いだったのだろう、彼女は困惑している顔を隠すのに必死と言った表情だ。


「別に……良いが」


「本当! ありがとう、じゃあまた明日、教室でね!」


 小屋を出た僕は走り出した。ようやく揃った! ようやくだ!


 これで4人、ついにチーム戦が始まる!


…——カット!



 ニーナは不安そうに全体を見回す。ジョカンはまた優しく答える。


「いいね。これで仲間は揃ったわけだ」


 ここまで黙って聞いていたロイが口を開く。


「ここからが本番だね。正直今のところ目新しい要素はない。このチーム戦でどんなことが起きるのかでこの小説の面白さが決まってくる……、と、僕は思うよ」


 ロイの言うことは正しい、小説を書く者に毎回突きつけられる“斬新さ”という銃口、それを払い除けるには相応の努力とアイデアがいる。ジョカンは力強く応えた。


「そうだね、ここから勝負だ。」







 翌日、昨日の会議で決まった仲間との出会いのシーンを撮る。順調な撮影に監督も上機嫌だ。



「カットー! ……よし、仲間との出会いのシーンはこれでオッケー! この後、投稿してくれ」


「はい、それで監督、学園編の次の展開なんですけど、チーム対抗戦の……」


「おお! ジョカン! それなんだかな、チーム対抗戦は止めにして、やっぱり冒険にしようと思うんだ。やっぱり小説は冒険だろ? 学園は卒業ってことで、これからは冒険を撮っていくぞ!」

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