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3

「どうでしょう監督……」


 次の日、ジョカンは出来上がったものを監督に見せる。監督はじっくりとそれを眺め、ゆっくりと口を開いた。


「なるほど、うん、良い。これで行こう。特にこの剣の女の子が良い!」


「ありがとうございます!」


 ジョカンは仲間達と出した結論が認められたことを喜んだ。しかし、続け様に放った監督の言葉を聞いて、落胆するのだった。


「そうだ! せっかく女の子が出てきたから、この後は学園ものにするぞ! この女の子と学園に入って、……うーん、そうだな。王立の学校に入って、学園コメディ要素を入れる! これで行こう! 早速撮影だ!」





 ナロウナはまた叱りつけるようにジョカンに言った。


「学園……!? 王道ファンタジーはどうなりまして? 」


「そんなの監督に言ってよ……」


力なく机に突っ伏すジョカン。それに釣られてリュウノスケもぼやいてしまう。


「まぁ監督の気まぐれはいつものことですが……、にしても学園ものとは……」


 その場の全員が頭を抱える難題に、ニーナが足掛かりを差し出す。


「あの、一度、全体の展開を整理しませんか? 起承転結を確認して、学園パートの位置付けを決めるのは……?」


 それを聞いたロイは立ち上がる。


「そうだね、最初とは随分違ってきたみたいだし。あ、そうだ、これ、監督の企画書」


 こういう時のロイは恐ろしく準備が良い、まるで話し合いの展開をあらかじめ知っているかのように、全員に書類を配る。


「この企画書か……」


 リュウノスケをはじめ、全員が渋い顔をする。全員が手にしているA4用紙1枚の企画書には大きく“題名未定”と書かれていて、裏を返すと目につくように“王道ファンタジー”と乱雑に書いてある。そして下を見れば、ストーリーの全体像が書いてあった。


【主人公が旅に出る → 困難(成長!!)、仲間との出会い → 覚醒(本当の自分に気づく) → 魔王を倒す(激闘!!)happy end!】


 リュウノスケは重々しく口を開いた。


「これを企画書と呼ぶのだろうか……。“あの人“がどうして監督になれたのか不思議だ、……」


 誰もが飲み込んでいたその言葉にナロウナも共鳴する。


「最後の英語がなんかイラつきますわね」


 ロイは軽く庇うように補足する。


「監督は頭の中で物語を溜め込むタイプだからね。毎秒構想が変わっているみたいだけど」


 ロイと監督は長い付き合いのようだが、特段仲良しというそぶりもない。その詳細は誰も知らぬところだ。ジョカンは続ける。


「今回の学園パートは仲間との出会い、成長がテーマになるってことだね」


 ジョカンは例のごとく、ホワイトボードに展開をまとめる。リュウノスケはそれを見て、ため息をついた。


「旅に出たのに、途中で学園に入学するんですか?」


「それなら、最初から学園の生徒にしては? 戦闘シーンの最後に“学園に帰らなきゃ”って入れれば辻褄が合いましてよ?」


 ナロウナの思い切りの良い提案をジョカンは受け入れる。


「じゃあそうしようか。女の子を連れて帰って一緒に通う展開になるなぁ」


 するとリュウノスケは鼻息荒く提案する。


「学園に帰ると、主人公の事を好きな同級生が嫉妬するって展開ですね! 学園ラブコメの王道です!」


「モテモテハーレム展開も流行ってるね。途中の展開に入れてもいいかもしれない」


「あ、後は、仲間……ですよね?」


 ニーナの疑問にナロウナが答える。


「あら? 主人公以外の登場人物っていなかったかしら? キャラ設定の資料があったような?」


「ええと確か……」


 ジョカンは資料を漁り出す。随分前に渡された資料だったのか、少しくすんだ紙が出てくる。


「これは……」


 覗き込む全員がなんとも言えない表情になる。

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