キミとの出会い
――ここは? そうだ僕は、竜に追われて、それで穴に落ちたんだ……。不確かな記憶を探りながら、あたりを見回す。
蔦だらけの小部屋、どうやら遺跡に落ちたようだ。この辺には大昔の遺跡があると聞いたことがあるけど、いつの時代のものだろう。
――ここだよ
「え?」
思わず声が出た。ここには僕しかいないはずなのに声が聞こえた、いや、頭の中に響いたというべきか。
そして導かれるように薄く光るそれに近づいて蔦を払う。
「剣……?」
僕はそう呟きながら、束を握った。
――光りだす剣
信じられないことに、その剣は人間に姿を変えた。人間の女の子に。
「ふあぁああ、あれ? キミ……誰?」
「え、僕? 僕は……」
――ギャオオオオオオオオオオン
恐ろしい轟音がする方を見ると、さっきの竜がこちらを睨んでいる。まずい! ここまで追ってきた! 僕は身構える。
「君! 僕の後ろに隠れ……」
呼びかけようとした時には、彼女は消えていた。
——ここだよ
ふと、右手を見ると、短い剣が握られている。
——私を使って
剣に引っ張られるように竜へ切り込んでいく。すごい力だ。僕は剣を強く握りしめた。
剣と僕はまっすぐ竜に向かっていく、向かってくる鋭い爪、でも不思議と避けられる気がする。心が強くなった、そんな感覚がした。
「はぁっ!」
僕は導かれるように、竜の目を斬りつける。
——細かいことは覚えていない。だけど、僕は竜を追い払った。あの竜をだ。現実味がない、けど、僕には確かな証がある。
右手にあるその剣を見て、先程の女の子を思い出す。
「やっぱり、夢だったのかな……」
そう呟いた途端、剣が光を帯びたかと思うと、目の前にまた少女が現れた。
「夢じゃない。私、ここにいるよ?」
「うひゃあ!」
僕は変な声をあげてしまう。僕は何故か彼女の胸を握りしめていた。しかし彼女はお構いなしだ。この子が剣に変身していたってことか……?
僕は顔を逸らしながら、僕のマントを差し出した。そして彼女は不思議そうにこちらに問いかける。
「あなた……だれ?」
——こうして、僕とこの子の冒険が始まるのだった。
——と、その前に、学園に帰らなきゃ!