ばあちゃんは空腹のお腹を抱える
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
ランキングに入っていて驚きました。
ありがとうございます。ホントに嬉しいです。
創作の活力になります♪(*´▽`*)
読んで下さりありがとうございます。
ランキング1位に二度見で驚きました。
嬉しくて小躍りしてしました。
ホントにありがとうございます。(*´▽`*)
誤字脱字報告ありがとうございます。
コチラの続き ばあちゃんは日本食が恋しい。
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合わせてよろしくお願いします。
今私はのんびりと領地で過ごしている。
前世100歳は生きたばあちゃんだ。
今世はどうしようかと考えた。
でもその前にのんびりとして落ち着きたい。
ホント死んで、すぐにバタバタしたからね。
死者はこんな感じなのかね?
どういう訳か、前前世に逆行転生してしまった。
いい人生だったらよかったんだけどね。
最悪なクソ人生だった。
だからめちゃ抗って、のんびり田舎の領地で今は暮らしている。
死んだら、なぜかやり直し人生。
ならば、前前世でやりたかった事をしよう。
死んだ後まで後悔するならやってみよう。
これを今世のポリシーにして、生きてみようと思う。
そこで、この何もないで原っぱでいろいろと考える。
と言っても、作業をのんびりとしている。
私は領に来てから、まず初めに生ごみのコンポストを始めた。
何でそんな事しているのか?
そりゃあ前世の癖ってヤツです。
前世農家の嫁だった私は、毎日毎日していたことだった。
だからだろうか。朝起きたらついついやりたくなる作業。
しないと気持ち悪くて仕方がない。
始めは母のマリアナも反対をしていた。
でもその良さを説明していくと、父のオスバルドが興味を示す。
だから屋敷の裏山の原っぱで、チマチマと作業をしているのだ。
それじゃ材料はどうやってここまで持って来たのか?
すっごく重たいからね。
なので荷物運びの一輪君で持って来た。
メイドのカーラが押して一緒に来てくれる。
初日は生ごみ運びに少しイラっとしたようだが、使ってみると面白かったのだろう。
それ以来自分がやりますと、率先して手伝ってくれる。
始めは領の人達も、私の姿を見て驚いた。
凄く短い髪のスタイルに、戻った理由も不名誉な内容。
皆が変な目で見つめて、不審そうにしていた。
そんな子が領主に連れられて鍛冶屋に行き、特許を取った商品。
一輪君という馬鹿げた名の商品。
しかし使ってみると凄く有能で、瞬く間に人気商品となった。
そして作った理由が、生ごみの再利用に使う、という訳の解らない内容。
あの髪もそうだが、不思議な価値観の持ち主なんだろう。
うちの領のお嬢様は少々張っちゃけた変わり者だ。
多少行動にいろいろと問題はあるが、こちらに害は及ばない。
だから今ではやる事成す事、生暖かく見守ってくれるスタンスになっている。
さて、前前世は何と言うか、ホント人生ムダにしたんだと思う。
だって経験した人生なのに、初めてばかりに遭遇するのだ。
ホント前前世は、王宮の中だけの世界だった。
だから、この世界に戻ってきたのかもしれない。
それ以外の世界をよく見ろって事なのかね?
まあ、神様のお計らいだ。
のんびりムリなくボチボチとしようと思う。
土いじりをしながら、自然の空気を楽しむ。
少し汗ばんだ身体に、風が心地いい。
息を吸えば、ホント空気が美味しい。
排気ガスがないからね。
いろいろ考えて思うのは、おしゃれ・料理・友達(知り合い)そこら辺を重点的に活動したいな。
だって前世でも、若いうちにオシャレができなかったから。
憧れの人をマネて自分の物にしたい。
想うようにオシャレを楽しみたい。
それに料理はやっぱり、前世食にこだわる国の出身者。
その記憶が今回障害となって、思いっきり苦痛を与えている。
「不味いんだよね。たまらなく不味いんだよな。」
家族には前世の話をした事により、毎食のお小言はなくなった。
それは良かったと思う。
しかし、食事から逃れられる訳もなくついて回る。
もう自分で作って仕舞おうかとさえ思う。
だけど悲しいかな………
私はまだ幼女だった。
この小っちゃい手で包丁を握れないし、作業台にも届かない。
「ホントに困ったね。ご飯食べないと大きくなれないよ。」
それに勿体ない精神の日本人だ。
御残しは許せないのである。
「大体なんであんなに不味くなるのかね?今度調理場を見せて貰う?」
ホントはおしゃれを第一に考えたいが、自分の身体の成長にも関係する。
今だってお腹を空かせているのだ。
でもあの不味い料理を食べると、どうしても少ししか食べれない。
お腹空いてても、おかわりができない。
「今世は飢え死にしそうだよ。ホント戦時中は何でも食べた
のになんでだろうね。」
とにかく現在、危機に瀕した状態だった。
******************
屋敷に帰って両親を探す。
「どこにいるのかな?」
ポテポテと歩き、使用人に両親のいる場所を聞く。
するとサロンで来客中との事だった。
それならどうしようか?
窓の外を見ると広いお庭が広がっている。
それなら庭師の人を捕まえようかね。
ちょうどいろいろと聞きたい事がある。
植物の事やら花の事、世界によって生きる動植物も多少違うのか?
新たに勉強しないといけない。
だって思うのだ。
”あの不味さは植物由来とかじゃないか?”
ちょうど通りかかった使用人に、庭師の所に行きたいと我儘を言い連れて行って貰う。
ホントお庭は広い。余りにも歩みが遅い。
だから使用人は私を抱っこして、連れて行ってくれた。
「ありがとうね。お名前は?」
多分高校生くらいじゃないかと思う?
「ハロルドと言います。お嬢様」
爽やかに微笑みながら庭師を探してくれる。
「ハロルド、庭師さんはこの辺にいるの?お仕事途中なら一人で探すよ?」
私が気にしてそう言うと、ハロルドは小さいお嬢様を一人にできないと言う。
だからハロルドに抱っこされて、あっちこっちとウロウロする事になった。
そうこうしていると兄のクリスに出会う。
「二人とも何をしてるの?」
庭の周りを抱っこされ、ウロウロしているのだ。
確かに変に思うだろう。
「クリス~おかえり~♪」
私がそう言うと
「クリス兄!」
と訂正が入った。
「おかえり~クリス兄♪」
そう言い直すとご満悦のクリス兄は、ハロルドと抱っこを代わる。
「すまなかったな、ハロルド。大変だったろ」
「いいえ、私の方から申し出た事ですので。それで実は庭師を探しているのですが、どこにも見当たず」
申し訳なさそうに言うハロルド。
気にしなくていいのに、私は大変安定感があって楽だった。
ハロルド、妾はそちが気に入ったぞよ♪
お姫様気分味わえた。
「ああ、庭師のじいさんは帰った。確か息子がいるはずなんだが…… 後は引き受けた。戻っていいぞ」
「ハロルドありがとう。また抱っこしてね♪」
私は素直に自分の欲求を言った。
だってホント楽だし安定感あるしで最高だ。
礼儀正しい子は大好きだよ。
そんな私を見て、眉を上げ「おやっ」とおどけた仕草するクリス。
「いいえ、また何かございましたらお呼び下さい」
そう言って下がって行った。
ハロルドが或る程度離れたのを確認したクリスは言う。
「何だ?ばあちゃんはハロルドみたいなのが好みか?」
「好みかどうかはわからないけどね。礼儀の正しい子は好きだよ。」
私がそう言うとクリスは困った顔をして
「フィル、精神年齢は仕方ないが出来れば好いた人を作って欲しい」
クリス兄はそう言って優しく微笑んだ。
「好きな人??」
どうしてそんな話になるのだろう。
「フィルは前々回最悪な人生だった。だから今世は好きな人と結婚させようと両親と決めたんだ。身分差にも文句は言わない。自分の人生を楽しんで生きてくれ」
「クリス兄……… 」
私は両親やクリス兄の気持ちをありがたいと思った。
実際もう前々回の様な経験は懲り懲りだった。
自分で選べば、自分でその責任が取れる。
嬉しいと思った。
ありがとうございます。フィラメントは幸せ者です。
私は空の様に晴れやかな気持ちでほほ笑んだ。
【 クリスティオ視点 】
庭師の息子は見つからない。
一体どこに行ったのか?
「フィル、庭師を見つけてどうするつもり?」
ボへ~と庭を眺めているフィルに聞いた。
するとフィルが自分の考えた事を話す。
『なんでご飯が不味いのか』
「イヤ、それは料理人の腕の問題じゃないの?」
俺は呆れてフィルに言うと、フィルはそう思っていないようだ。
フィルの言い分は
『生野菜が青臭いという事は、野菜そのものが不味いのではないか。』
他にもいろいろ思う事があるようだ。
眉間にシワを寄せ、苦味潰した何とも言えない顔をしている。
「まあね。テーブルに着く度に絶望の顔を毎回見ると、こちらとしても辛いものがあるよね。」
俺は苦笑を浮かべて微笑んだ。
ゆっくりと屋敷に帰りながら、妹との時間を楽しむ。
「自分の成長を阻害はしたくないの。頑張って食べようとは思うのよ」
妹となんでもない話をしながら幸せをかみしめる。
「ご飯を食べるのに頑張ろうって、それなんかおかしくないか?」
なんてない事を話しながら、可笑しな文章に笑いがこみ上げる。
「どこもおかしくないわ。私真剣よ。死活問題と言ってもいいくらいよ」
プンプン可愛い頬を膨らませて文句を言うフィル。
「確かにフィルは小さいからね。さらに少食だから身体は小さいままだ。」
”ご飯が不味くて食べれない。”
一見我儘な話なのだが、違う世界で料理を教えていたという前世。
それを考えると、ホントに食卓に出る料理というか、この世界の料理はすこぶる不味いのだろうか?
俺達はそれに気付かず、普通に旨いと食べる味覚不能者という事なのだろうか?
それとも、世界が違えば味覚も違うという事もあるのか?
それを確かめたいという気持ちがフツフツと湧いてくる。
ホント、フィルといると飽きないな(笑)
いつだってなんてことない日常を、刺激的な毎日に変えていく。
妹とそんな楽しい時間を過ごす今世の俺は、前前世の俺に想う。
お前ホント勿体ないことしたんだな………
******************
私はその後、兄に連れられて厨房へ向かった。
要は、確かめてみなければ分からないという事だ。
確かにクリス兄の言う通りそうだなと思う。
厨房のテーブルには、この世界の野菜や肉など食材が並んでいた。
ちょうど納品されたばかりで、これから忙しくなるぞ~という時に私達はやって来たのだ。
個人的にはラッキーなタイミングだが、料理人達にはアンラッキーだろう。
「これはこれはクリスティオ様フィラメント様。この様なところに何か御用でございますか?」
奥の方から料理長らしき人が、慌ててこちらへやって来る。
父より年配の、渋みの味のあるがっしりとした男性だった。
「やあ!ガルム急に来てごめんね。ちょっと気になる事があって、確かめに来たんだ。」
にこやかに笑いながら話すクリス兄。
他の料理人達は目を、食材と私達の間をウロウロと彷徨わせている。
どうしたらいいのか悩んでいるのだ。
逆に私は食材に目が釘づけだ。
見ていると、あちらの世界とそう変わらない似たような食材沢山ある。
味も一緒とは限らないが………
「フィラメント様、私はガルムと申します。何か気になる食材がございましたか?」
私が食材にくぎ付けで、見ているのがわかったのだろう。
”まあ料理が不味いと言ってる事も知ってそう”
それを考えると、何とも居心地の悪い事だ。
「ごめんなさい。料理長忙しい時に……… 」
いろいろな思いを込めて、申し訳なさげに謝る私。
料理長に何故調理場へ来たのか、理由を説明する。
そして原因が、食材その物ではないかとなった事を話した。
「なるほど…… 確かに野菜は子供にとってアクを強く感じますね。」
料理長は面倒くさがらず話を聞いてくれる。
「フィルはどうも舌が繊細な様でね。それがどんなに調理されても、感じてしまう様なんだ」
「ごめんなさい。料理長」
今からホントに忙しいのにね。
「フィラメント様、謝ることではございません。むしろ誇っていいのです。料理人の私としては羨ましいです。舌が繊細なのはいい事ですよ。」
そう言ってニッコリ笑う料理長はとても優しかった。
「フィル、料理長がよく使う素材を少しずつ持って来てくれるそうだ。ついでに素材の特性や気になる事も教えてくれる。俺も気にはなるから楽しみだよ。一緒に食べよう♪」
笑いながら楽しそうに言うクリス兄。
それを聞く料理長の部下たちも面白そうに笑っている。
料理長の補佐だというジンさんが言うには、誰もが一度はやるのだそうだ。
少しずつ出された食材、兄と私は少しずつ食べていく。
いろいろな表情で豊かに表現できただろう。
それはとても野性味のある個性的なお味でした。
もしかして品種改良前の野菜ってこんな感じだったのかしら。
凄く凄くお水が美味しかったです。
*****************
今日もいつもの原っぱで生ごみをせっせせっせと混ぜている。
となりにはガルム料理長らが同じ作業をしていた。
「しかしこの土凄いですね。フカフカです。」
元は農家だったという部下が、土を触って感動している。
ジンさんも土の匂いを嗅い足り眺めたりしている。
「お嬢様、この土どうするんですか?」
そうまだ土づくりで止まっている。
今度はこれで畑作りをしないといけない。
「お父様が近くに畑作っていいって言ってくれたから、この土でお野菜育てるの」
土の上に骨を砕いたものをばらまく。
実際は分量やら配分を考えないといけないが、私は使う担当だったからわからない。
”旦那に少しは聞いとけばよかった。”
これから先の土の発展は旦那の仕事だった。
「これで作った野菜は、もしかして味が違うのでしょうか?」
ガルム料理長もそこは気になるよね。
実はあの後、クリス兄がこの土の話を料理長達に話した。
すると、農家出身の者達は気になるのか、
「それは拝見していいでしょうか?お願いします。」
とお願いしてきたのだった。
土の出来によって収穫量も変わる、成長度合いも変わる。
それがホントならとても画期的で、農家としてもありがたい話だ。
それに味も変わるかもしれないとなったら、なおさら興味も湧いて来る。
「実際この土を使って、作ってみないとね。人も動植物も一緒。食べるモノで体格や質も変わるはず。と思うんだよね。」
ニパッと子供らしい笑顔で答える。
そしてウンショウンショと混ぜ込んでいった。
皆も思う事があるのだろう。
皆も頷いてウンショウンショと作業をした。
おかげで原っぱは広範囲が土だらけになった。
「他に混ぜ込みたいものってありますか?」
ジンさんが聞いて来た。
今のところ入っているは、料理で使った残飯と庭師の雑草など庭関係のゴミ。
そして馬や家畜のフンだった。
「差し当たってこれぐらいで大丈夫だよ。フカフカだしね。」
そう言って足を踏み鳴らす。
「畑作られる時はぜひお声がけください。お手伝いします」
何人かの部下さんは申し出てくれた。
それには料理長とジンさんも
「その時は私も手伝います。何を植えるか決めているのですか?」
と聞いて来た。
そうまだ何を植えるか決めていない。
「それだったら、元農家の部下さんにお願いしてもいいかな。その種の手配とか判らなくって」
私が困って言うと、ニコニコしながら
「もちろんです。お任せください。料理長も希望がありましたら教えてください」
そう料理長たちも使うのだ。それに私も欲しい食材があるわ。
「私出来たらトマトが欲しいわ」
そう、そのまま食べれるし、料理にも使え、栄養価もいいトマト。
「トマトも青臭みが強いですよね。でも比較し易いし、時期的にいいので用意しましょう」
料理長もほうれん草や気になる野菜を言っている。
「楽しいですね。いつも野菜の味と格闘していたので、ホントどんな結果になるのか、今からワクワクします」
そう言って笑う料理長。
それは他の料理人たちも同じらしく笑っている。
「お嬢様、勝ちますよ。野菜どもに勝って旨い料理を作りましょう♪」
ジンさんも楽しそうに笑いながら、私を励ました。
それ以来、裏の原っぱで私とカーラだけの作業に、時折料理人の人達も加わった。
時には元農家の使用人も加わる。
だから人も増えれば、土の出来上がる量も増えていく。
おかげで、もう少し先かなと思っていた畑は出来上がり、作物の植えまで終わっていた。
毎朝の水やりは庭師が請け負ってくれるそう。
何でも成長観察と植物への影響が見たいらしい。
さてさてどうなるのかね。
私は不安と期待でドキドキだった。
*****************
今日も土づくりに勤しむ。
今日は私とカーラだけで裏の原っぱへ来ている。
と言っても、もう原っぱの箇所はなくなって、土だらけなんだけどね。
実は畑の方が順調に育ち、食材もそろそろ食べ頃になってきている。
それだけではない。
育成観察をしていた庭師や元農家の使用人が、野菜の成長速度が早いと騒ぎだす。
他にも植物の丈夫さなど、比較にならない程だと訴えた。
実などたわわについている。
つまりはその土づくりは、とても効果があり、有用性があるという事。
手伝いをしていた料理人や使用人は駆り出され、今領内では作り方の講習が行われている。
”でもさ、味がわかってからでもいいんじゃないかな”
私としてはそれが不満だったりする。
まあ、いいけどさ………
そんな事を思いながら、今日もウンショウンショと作業するのだった。
最近気になる事がある。
というのも、私は帰る時土地は平らにして帰るのだ。
デコボコでもボコボコでもない、平らにしている。
なのに原っぱは、なぜかボコボコのグチャグチャ状態になっている。
大きな穴がぽっかり空いて、所々には小山も出来あがっている。
もう最近では平らにするのがムリなくらい、ヒドイ時もある。
だからその穴にゴミを投下し、上から土をかけ埋めするという作業をしている。
実際それで臭いが充満し土をダメにするようなら、もう止めて別の場所にしようかと思うが、そんな事もなく普通に柔らかい土が沢山出来上がっている。
だから私はそのままその場所で作業を続けた。
遠くの方ではカーラが何か考え込んで、あちらこちらに移動し眺めているのが気になる。
とにかくそんな日が続いているが、そのまま作業を続けるのだった。
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「お嬢様、今日は待ちに待った収穫祭です♪」
そう今日は遂に、畑で作った食材を使って料理をする日である。
そこで両親と兄は私も料理をしたいだろうと、外で料理をする事になった。
それには料理長たちも了承。
だって畑仕事をしている時、私も料理してみたいアピールは欠かさずしていたからね。
「さてでは始めに食べ比べからしましょうか」
そう言って、トマト、ほうれん草、ジャガイモに人参、そしてこの世界特有のネーレ!
ネーレと言うのは木の野菜だ。
さとうきびに近いだろうか、木をパキッと割ると中から甘い蜜が出る。
それこそドロドロと出て来る。
ただこの世界の野菜だ。
甘いが渋い、つまりアクが強いのだった。
「ただこのネーレ、暖めたらアクは大分抜けるんですよ。だから砂糖代わりに使っています。」
そうこれは庶民の味方な食材なのだ。
栄養価も高いし簡単に育つ。
ホントにありがたい野菜だ。
「では始めに、素材その物の確認から始めたいと思います。」
うちの屋敷全員が固唾を飲んでいる中、出て来たのはトマトだった。
そして庭師の人が出て来て言い募った。
「まずはじめに、見た目色つや大きさ全てパーフェクトな美人トマトが、たわわに実りました。ええ、もう美人トマトと名前を変えて、市場に出した方がいいでしょう。もう完全に別物です。」
そう言って切ったトマトを渡された。
皆が鼻を近づけ匂いを嗅ぎ、眺めている。
「瑞々しさが違うな。みずをたくさんやったからか?」
オスバルドが庭師の人に確認する。
「いいえ、逆に少ない方が良さそうです。」
そう言ってもう一皿トマトが回って来た。
私達はそれぞれ食べる。
こ、これよ!!そう普通に日本で食べたトマト。
青臭みもなく瑞々しい、生で食べても美味しいトマト。
それなら水の少ないトマトはどうなんだろう?
「うま~~~~………… !!!」
「アラアラアラ……… 」
「信じられん……… 」
皆が唖然としている。
「はい、水が少ない方が味が濃く、更に甘みが増して凄く美味しいのです。なのでヴィーナストマトと名付けて出荷する予定です。」
執事のロバートが凄く嬉しそうに言った。
「確かに普通のトマトじゃ他のトマトはなんだとなるからな。名前もいいと思う」
「ありがとうございます。育てた庭師達が自然とそう呼んでいたので、それに決めました。」
うん、凄くぴったりな名前だよ。
「フィルちゃん、このトマト凄いわね。とっても美味しいわ。今までのトマトもう食べれないわ」
マリアナはめちゃくちゃ幸せそうな顔をしている。
「そっかー、世界関係なく味覚一緒なんだ。ハァ~、俺達味覚不能者……… 」
クリス兄はある意味ショックを受けている。
「しかし一発目でやられたな。フィルこれは凄い事だぞ。ホントにお前は凄い!!」
オスバルドは、驚きと嬉しさで興奮している。
「お嬢様は天が与えた奇跡の人です!」
奇跡の人て、イエスキリストか?!
ガルム料理長はキラキラの目を向けて言い、部下たちもうんうんと頷いている。
「そっか、フィルは天使なんだね。うんうん♪」
とクリス兄は頷いている。
いつまでも言われるのは恥ずかしい。
他の野菜はどうかな?
食べてみると他のも野菜も、アクそのものがなくなっている。
食べておいしい食材に生まれ変わってる。
えっ、こんなに変わるものだっけ?!
変わり過ぎて、ほぼ品種改良されてないか?
「という事は、土をしっかり美味しく?すれば、素材も美味しく育つって事ですね」
「そうなんだろうな。育つ速度も丈夫さも段違いだ。ついでに実りも……… 」
他の皆は土のおかげと思ってるけれど、こんなに効果が出るものなの?
私は一人、疑問に思っていると………
「それにですね。どうもあの原っぱの土は特別らしいです」
えぇっ、そうなの?!
「そうなのか?」
「はい。なので肥料として販売する事に致しました。沢山ありますしね。お嬢様も承諾頂いてます」
「ホントにいいのかフィル」
「はい、たくさんありますから、役立てて欲しいです。」
あの土が特別なんだ。どうしてかな??
「ありがとう、フィル」
オスバルドが礼を言う。
「それじゃフィル。料理をしよう」
「はい、クリス兄」
頭を捻りながらも、目の前のことに集中する事にした。
まず初めにトマトをサラダにする。
ガルム料理長に牛乳とレモンを用意して貰い、クリス兄にフレッシュチーズを作って貰う事にした。
トマトはそのままでも甘いけど、美人トマトのチビを使ってレーネに入れる。
クリス兄は迷いなく手順に従って料理を楽しんでいる様だ。
「沸騰して布でこす。おお、ホントに分離している。」
「ホントですね。この汁はどうするんですか?」
「もちろん使うよ。この入れ物に少し汁を入れて、お肉をつける。するとお肉は柔らかしっとりに生まれ変わる。」
ガルム料理長には、人参とジャガイモを湯がいて貰っている。
ホントは蒸し器があったらいいんだけどね。
出来上がったらマッシュして貰う。こちらはケークサレを作る予定だ。
ほうれん草とミニトマトを使い、チーズも入れて焼いていく。
人参もマッシュし、こちらはパウンドケーキにする。
レーネで甘みを付け、クルミでアクセントを入れる。
このふたつには、先程の汁を牛乳代わりに入れて使う。
「フレッシュチーズ出来たよ。フィル」
結構たくさん出来た様だ。
レーネにつけたトマトの上に、フレッシュチーズ・クルミ・レーネをかける。
まだまだ材料はあるからいろいろ作るぞ!!
皆でワイワイと作る料理。
ホント気楽な田舎生活。楽しくて仕方ない。
作った料理は多岐にわたる。
料理人たちも使用人達も、自分の得意料理を振舞う。
そして食すたびに驚き、そして歓喜した。
皆で食べる料理は、ホントに美味しくとても楽しい。
「フィルの作ったこのケークサレ俺好きだよ!」
クリス兄、気に入ってくれたようだ。
「お嬢様脱帽です。ホントに美味しい。このトマトをレーネにつけるという発想、そして美味さ脱帽です」
ジンさんトマト頬ばり過ぎ………
「しかしこれだけ味が変わるとは!」
「俺達なんで、もっと早く気付かなかったんだ」
「考えればわかる事なんだよ。家畜だって食べ物で肉質変えるんだから……… 」
「だよな。なんで植物もって思わなかったんだろ」
使用人や料理人たちは固まって、土の話をしている。
「フィル、俺達ホントに味覚不能だったんだな。もう俺はこの畑の野菜以外、食べれる気がしない」
「フィルちゃん、おかあさんもう夜会には出ないわ。パーティーも無理ね」
クリス兄とマリアナは、もうこの畑以外の物食べません宣言している。
「フィル、俺が作ったチーズとレーネ合うな。今度また一緒に作ろう」
レアチーズケーキも美味しかったらしい。
「フフフ子供達の合作のお料理が食べれるなんて、私なんて幸せ者なのかしら♪」
そう言ってパクパク食べ、おかわりをするマリアナ。
「食べ過ぎじゃないか?」
そんなマリアナを心配するオスバルド。
食べる物が美味しい。
ただそれだけで、こんなにも幸せの輪が広がる。
みんなの笑顔が、何よりも嬉しいと思った。
それに、死活問題は解決した。
晴れ渡る空を眺め、清々しい笑顔で皆と思う存分食べる。
*****************
余談だが、先日の屋敷の来客は、城の者だったらしい。
来た目的は、婚約の打診。
えっ、もう終わった事じゃ?と思うだろう。
私達だってそう思っていた。
なりたいヤツは、沢山いるのだ。
わざわざ気違いの烙印を押して、領に戻っているんだよ。
ならどうしてか?
一輪君!!
なんと短期間で、世界的ヒット商品となっていたのだ。
そしてそれを考案したのが私。
ついでに、あの令嬢(婚約者)がいろいろと遣らかしたおかげで、他の人をという話になっている様だ。
すると、世界的ヒットを作った私だと旨味もあり、もともとそんな話をしたんだからと来たそうだ。
だがうちはもちちろんnoで、私がいなくなると領としても痛手だし、逆に損でしかないと言ったそうだ。
そしてしつこいから、私の様子を見せて、王宮での生活は無理ですと伝えた。
それに、他の令嬢(元側室)達を紹介し、候補者はこんなにいるのだから、特殊な娘をわざわざ打診するのは、遠回しな嫌味ですか?と言ったらしい。
娘はやる気もする気も全くなく、自由気ままが一番いいので、もう来ないでください、と睨んで言ったそうな………
しかし話はここで終わらない。
自尊心だけはやたらと高かった、婚約者令嬢とその家族。
どうやら私に刺客を差し向けていた様で、いろいろとしたようだ。
しかし私は何事もなく生活している。
それにそんな事を幾度となくすれば、王宮も知る所となり婚約は破棄となった。
するとその恨みつらみが、どういう訳か私達に向き領を襲撃した。
もちろん今まで耕した畑らが、めちゃくちゃにされてしまう。
そこで立ち上がったのがなんとワーム。
俺達の美味しい住処を壊すなとばかりに大立ち回りを繰り広げた。
最近うちの領の作物が、異様に美味しくなったのはワームらのおかげだった。
そしてその出来上がった美味しい食物、が今度はエサとなってやって来る。
するとワームらのエサも美味しくなる。
そして更にワームが土を美味しくする、という無限ループが発生。
だからこそワームらは、怒り狂ったのらしい。
このループを壊されたくないよ、お互いにね。
今まで刺客も、ワームらが秘密裏に処理してたようです。
この一件で、令嬢家族らは爵位を取り上げられ罪人となり、一部は国から追放となった。
そして私もこの一件で、ワームをテイムしていた事が発覚した。
何故テイムに至ったのか?
私の原っぱは、いつの間にかワームの住処になっていたそうだ。
そしてそこに、せっせとエサを投下する私。
時には空気を入れ替えたり(混ぜてただけ)
おやつもくれるし(カルシウムの骨を撒いてただけ)
とにかく、いろいろと私がお世話していたそうである。
そんな私は、ワームにとっても優しく可愛がってくれる人となっていた。
いつもおいしいご飯を用意してくれるいい人。
だから大好きっとなっていた様だ。
私はどうなのかというと、前世の知識でミミズはとっても必要だと思っている。
畑にいないと困るからね。ホント大切にしてあげないと………
これにより、いつの間にか意思疎通による魔獣契約となってた様だ。
名前もいつの間にかミミズになっていた。
多分どこかでミミズと言ったのだろう………
ついでにミミズは5匹いた。
揃って貰って、一郎次郎三郎と名前を付けていった。
ミミズは苗字扱いだ。
ウネウネと動くワームらと戯れる私。
ハッキリ言って絵面がヒドイ。
それを見た城の者は、顔を引きつらせて帰ったらしい。
更に王都での私の悪名は、凄い事になっているのだろう(笑)
しかしこのミミズらのおかげで、うちの作物は最高に美味く生産量も大幅に上がった。
やはり土がおいしくないと、作物も美味しく育たないのだ。
ついでに害虫(魔獣)駆除も盗賊駆除も気がついたらしてくれるミミズ。
とても優秀な子達です。
今では領の子らと遊んでいる事さえあるそうだ。
こうなると人とは現金なもので、何故か可愛く?見えて来るらしい。
「いや~始めはうげ~…… となってたんだけどね。慣れって凄いよね。」
今では領の人気者。
沢山の貢ぎ物がミミズ達に届く様で、とても喜んでいる。
だから仕事を頑張ること♪頑張ること♪
おかげでうちの領は美味しいだけじゃなく、新たな品種も大幅に増加した。
これで完全に死活問題は脱却したわ。
「お嬢様、一郎様がお見えですよ」
ハロルドのすごい所は、ミミズが見分けれるところ。
何処見てわかるんだろ?
おかげで私の次に懐いているのは、ハロルドだった。
今まで従僕の仕事が主だったのに、私の世話係となった。
多少の事にも驚かず、ついて行ってくれるハロルド。
とてもありがたい存在だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)