差別された
差別嫌な人は見ない方がいいです。
ガサッ、ガサッガサッ!
「何?」
クロエがマジックバックに荷物を入れてとうとう出発しようとした時、近くの草木が揺れ動いた。
「キキィィ!」
「あれは、一角ウサギね。」
クロエは自分が倒せる相手かどうか心配になっていたのだが、相手の姿を確認した瞬間獲物を狩る猛獣のような目になっていた。
犬もクロエの猛動さを隠しきれてない瞳を見てしまったようで尻尾を丸めている。
《水よ、力を貸して ミウォーターカッター》
クロエが呪文を唱えた途端に一角ウサギの
首からピシューと血が吹き出して真っ白だったはずの毛は真っ赤に染まった。
「ミニウォーターカッター略してミウォーターカッターで倒せる相手だったのはラッキーだったわね。しかも、美味しいし。ウサギを持ったら、川までとりあえず行くわよ、犬。」
「……わ、ん!」
川で飲み水とウサギを洗い肉を切り出した後は順調に足を進め、村と町の境目のような少し栄えた村に辿り着いた。
「やっと、着いたわね……。」
「ワン!」
いつも、家で引き篭もって本ばかり読んでいるクロエには重労働だった。
犬は楽しそうだ。
村に辿り着き、村の中を歩き始めるとそれは始まった。
「見て、あの子あんなに髪の毛が真っ黒で神様から嫌われているのね。かわいそう。」
「あの子、、忌み子だわ。縁起が悪い。」
「あの嬢ちゃん真っ黒だ。俺の店に寄ってくれるなよ。」
「森から出てきたな、魔女みてぇだ。」
罵詈雑言ではないものの、クロエに対する悪口、可哀想発言が。
クロエも外の世界で自分の髪色がどう見られているかは故郷で知っていた。それでも、初めて向けられる悪意のこもった視線に耐えきれず下を向いた。
その時、間抜けそうな犬と目が合い彼女はいつもの自分を取り戻したけれど。
クロエは、もう、犬を召喚魔法の供物にすることはできないわねと思った。
これが全ての始まりであった。
クロエは犬と自分のためにリウゴを買うことにした。
リウゴは甘酸っぱくてシャキッとしていて美味しいから買いだめしとこうと考えた。
見た目も、炎みたいに紅くて綺麗だし。
クロエは綺麗なものが好きだった。
「リウゴは好き?」
「ヴゥ?」
犬はリウゴを食べたことがないようで頭を傾けた。
繁盛してた屋台に決めた。
クロエが近づくと客はいなくなったし、クロエに関する批判的意見が聴こえるもののもうクロエは気にしていなかった。
「リウゴを10個頂ける?」
「リウゴ10個で1金ですよ。」
クロエは疑問に思った。
だって、リウゴ1個10銅と書いてあったからだ。
「あなた、ここに1個10銅と書いてあるように見えるけど。計算間違えているわよ。」
「チッ。数字読めたのかよ、めんどくせぇなぁ。俺の店に黒ごときが近寄るんじゃねぇよ。」
そして、リウゴを1つ思いっきり投げられて渡されたのでクロエも10銅を静かに台の上に置いた。
クロエが受け取れるとは思っていなかったようで、驚愕していたが同時に気味悪がられた。
クロエは無言でその店から去った。
他の店からも同じような扱いを受けた。
唯一、ハズレた所にあった、小汚いお婆さんがやっている店からは良くしてもらって買いだめ出来た。
「みんな、髪ごときでぐちぐちうるさいわ。あなたは私の髪素敵だと思わない?」
「ワン!ワン!」
「そうよね、綺麗よね。リウゴ美味しい?」
「ヴフッ!」
結局、泊めてくれる宿もなかったのでクロエは犬を抱き抱えて野宿した。
黒髪は忌み子。完璧な黒髪は黒の魔女しかいない。
闇魔法も嫌われてる。
マジックバックは時間停止してる。
※リウゴはりんごの古名がリウゴウだからそっからとってます。