昔の話+クロエの話
昔々、あるところに狼男がいた。その狼男はとある村の少女を好きになり、狼男だということを隠して合い恋人になった。彼女の胎には子が出来た。
普通は出来ないはずの子が……狼男は自分の正体を明かし、彼女に産んで欲しいと懇願した。
しかし、彼女は彼がバケモノでも彼を愛していたから産んだが産後の肥立ちが悪く死んでしまった。
狼男は嘆き悲しんだ。
自分が「彼女に産んで欲しい」などと言わなければと……。それでも、サラアワであるラキのことを5歳まで森の中で育てて、とうとう耐えきれなくなり崖に自分の身を投げて自殺した。
※サラアワ・・・半狼人間
☆☆☆☆☆☆
クロエは村を出て直ぐに小さな犬を拾った。
「この薄汚い犬は何?」
「ッグク、、、ヴルゥゥッ」
彼女は茶色く汚れところどころ血が滲んでいる多分犬だろうと分かる動物に会うのが初めてだったのである。言葉に悪意はない。
「まあ、愛嬌は多少あるかしら?ダメだったら、綺麗にして召喚魔法の供物にしよう。」
そう、楽観的に考えたクロエはひょいと瀕死の犬を拾い上げ、「スリープ」と唱え唸っていた犬を眠らせた。
彼女は犬に結構魔力持ってかれたなと思った。
「本当に汚いわね。」
クロエはすぐ側に流れていた川で犬を洗った。じゃぶじゃぶと。
辺りが暗くなりつつあったので川でとった魚を火の魔法で焼いて食べてまだ意識が戻らない犬を抱えて樹洞に籠って寝た。
「………………わんっ、ワン!ワン!ワン!」
「っうっるさい。……何?お腹すいたの?」
朝は犬の鳴き声で起きたので、クロエの機嫌はひどく悪い。
「わん!!」
クロエの言葉が理解できてるかのように犬は鳴いた。
「これ、村から持ってきた保存肉。多分、動物も食べれるから食べなさい。昨日とは対応がだいぶ違うのが引っかかるけれど、気にしないことにするわ。私、優しいから。」
クロエは犬と一緒に硬い硬い肉をしゃぶって食べた。犬も嬉しそうに見える。
「犬、あなたその傷痛む?」
「っわん!」
「そう、《肉よ、戻れ》」
「わん? わん!ワン!?」
犬は怪訝そうにしていたが、自分の傷が消えていることに気づき興奮した。
クロエはどこか誇らしそうだ。
「そういえば、今日歩けば森を出れるから久々にベットで寝れるの。犬、急ぐわよ。」
犬は大きく頷いた。