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赤子は大変です(2)

 私の居る部屋では物騒な話題を避けているということを両親がひとりごとのように呟いたのだ。


『この子の前では幸せな話題だけにしよう。……最近は物騒な事件が多いからな』


 多分精神衛生上というか、情操教育上良くないと思ったのだろう。私の前ではいつもにこにこ微笑んでいるし、優しく溢れるばかりの愛で包み込んでくれていた。


 で、皇家の話はそこに関係する。どうやら最近の皇家は、血で血を洗う凄まじい事が起こっているらしい。それも立て続けに。

 ペラペラとお喋り好きの侍女達が、仕事の手を止めて大声で話しているのを聞いてしまったのだ。


『──第一皇子が何者かに殺害されたみたいよ』と。


 本来ならば井戸端会議のようなことしてないできちんと仕事をしなさいと怒るところだが、あいにく言葉も話せないし、私にとっては重要な話。


 もっと、もーっと話して! あわよくばユースの情報を! と思い、寝たフリをしながらバッチリ聞いたのだ。


 ──第一皇子が殺害された。


 これは帝国の中で大きなニュースだろう。この国では例外を除いて、ほとんど第一皇子が皇太子となり帝位を継ぐ。


 従って、一番警護に人員が割かれているはずの皇子は本来殺されるなんてことあってはならないし、あるはずもない。ありえない。


(ユースは大丈夫かしら……少なからず皇子が狙われてる可能性もあるの……かな?)


 理由の筆頭候補としては、第一皇子の政敵が彼を殺害したというもの。


 ユースは皇家と折り合いが悪い。

 他の皇子ともあまり仲がよくなかったから、政敵に敵認定されて標的になるようなことにはなってないと信じたい。むしろ皇子を殺せるほどの力がある敵側の味方に入っていて欲しい。


 彼にはまだまだ味方が少ないのだ。後見人だった私の家、ランドール公爵家も取り潰しになってしまったし。


 これ以外にも物騒な話題はあるもので。何やら皇帝陛下が粛清を始めたとかなんだとか。

 次々皇帝陛下の側近だった家臣が凄惨な死を遂げているらしい。皇帝自ら剣を振るって。


 あくまでも噂……だけれど。


 私的にはやりそうだなと思う。けれど、疑問なのが側近を粛清していることなのだ。普通、反対を突きつけてくる者を殺すのが一般的だろう。味方を殺して何がしたいのだろうか。


 彼らは優秀ではあるが、皇帝陛下の腰巾着のようなもの。逆らう勇気などなくて肯定しかしない人間の集まりなのに。


 侍女達の話なので、あまり真に受けてはいけないのかもしれない。彼女達は又聞きで聞いているだけで、直接その現場を見た訳では無いのだ。


(お母様かお父様、もしくはお兄様の会話を盗み聞きしたいな)


 そうそう、今世ではお兄様がいる。


 名前はクローヴィス。愛称はヴィスでヴィスお兄様だ。


 一人娘の私には前世今世通じて初めてのお兄様。

 お母様の腕に抱かれて初めて対面した時は緊張してしまった。けれどもその緊張を忘れさせてくれるくらい、お兄様は優しかった。

 ユースも優しいが、それとは少し性質が違う。のほほんとしすぎていて、不安になるレベル。


 ここら辺でヴィスお兄様は置いておいて、話を元に戻す。

 

 家族によってほぼほぼ徹底的に血みどろ皇家の話題が遮断されているので、情報を掴むには彼らに気づかれずこっそり話を盗聴するしかない。


 だからハイハイでせめてこの部屋から出られるようになりたい。あわよくばお父様の執務室のクローゼット辺りに隠れたい。


 伯爵家当主のお父様の元には、きっと皇宮内部で起こっている正確な出来事、且つ最新の内容が入って来ると思うから。


 なのに、一歩歩くだけで転んでいたらダメダメだ。


(頑張るって決めたんだから)


 一秒でも早く歩けるようになりたい私は、とても広いベビーベッドの上で、夜な夜な追加練習をするのだった。

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