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彩夢屋へようこそ~どんなくだらない願いも叶えます~  作者: みずひらみなと
プロローグ
5/11

チー牛は女子高生をスイープする

ぐっ、重い…


真は何かが自分の胸の上にぐーっと圧し掛かっているのを感じた。胸に感じる重圧のせいで息をするのがとても苦しい。


「…起きてください。マコトさん。起きて」


どこからか親の声より聴いた可愛らしい女の子の声が聞こえてくる。真はぼんやりとした意識の中、薄目を開いた。


「もう朝ですよー。真さーん」


ちょうど真の胸の上でマウントポジションを取っている体勢で、見知らぬ女の子が掛け布団越しに自分の胸の上に体重を預けていた。


「うぉわぁあああ!?」


真は驚愕し、上体を思いっきり跳ね上げた。


「きゃあ!?」


女の子はベッドの上からすっころぶと顔面から畳の上に真っ逆さまにダイブしてしまう。ごちんという鈍い音が部屋に響いた。


「えぇ!?誰、君!?」


カギをかけたはずなのに、一体どこから入ってきたんだろう。


寝起き直後で訳が分からず唖然とする真だったが、目の前で痛そうに手で鼻の辺りをさすっている少女にどこか見覚えがあった。


紺色のブレザーに黒のプリーツスカート。腰のあたりまで伸びた、若干ウェーブのかかった黒い髪。ふくよかな二本の脚は黒タイツで包まれている。


顔は驚くほど小さく、目はキリッとしていて利発さを感じられた。


制服の左胸には、ゲームやアニメの中でさんざん見た『聖バルトロマイ女学院』の金色の校章が朝日に照らされて燦然と輝いていた。


「嘘だろ…陽菜乃?」


そこにいたのは紛れもなく、『JKこれくしょん』の登場人物の一人、聖バルトロマイ女学院の高校三年生で同校の生徒会長を務めている(という設定)の一ノ瀬陽菜乃いちのせひなのだった。


目の前の女の子は、こほんと咳ばらいを一つして居住まいを正すと三つ指をついて真に挨拶をした。


「初めまして伊地知真さん。直接お話しするのは初めてですね。一ノ瀬陽菜乃と申します。以後お見知りおきを」


「え、えーっと、君は間違いなく『JKこれくしょん』の一ノ瀬陽菜乃さん、なの?」


目の前の少女との会話のキャッチボールを成立させなければと思い、真はとりあえず質問を投げてみた。


「はい。わたくしは真さんが知っている一ノ瀬陽菜乃、本人ですよ」


可笑しなことを聞く人だといわんばかりに、少女はくすくす笑う。


喋り方やしぐさがアニメやゲームでさんざん見た陽菜乃そのもので真は感動した。驚いたことに声も声優が当てている声そのものだった。


うわー、華がありすぎて陽菜乃が俺のボロいアパートにいると違和感が物凄い…


それにしても店員さん以外で自分と同い年くらいの若い女性と話したのはいつ以来だろう。


「えっと、君はどこから入ってきたの? 俺、戸締りはちゃんとする方なんだけど」


「はい。あちらから」といって少女は天井の辺りを指さした。


なんのことだろうかと真が見上げると、天井に貼ってあったポスターの、一ノ瀬陽菜乃の萌えイラストが描かれていた部分だけが綺麗に真っ白になっている。


…まさかあの質屋で願ったことが現実になるなんて。


間抜け面で呆けている真が面白いのか、少女はブレザーの袖で口を押えてくっくっと笑いをこらえていた。


「ふふ、真さんって変なの。じゃーあ、今度は私から真さんにいろいろ質問しようかしら」


「え、あ、うん。別にいいけど…」


推しのアニメキャラから一体何を聞かれるのだろうと真は身構える。


「どうしてそんなにも私を愛してくださりますの?」


少女口元は微笑んでいるが、目が真の本気度を問うていた。


「えっと…それは…」


なぜ愛しているのかと急に問われて真は困惑してしまった。目の前の陽菜乃は微笑から真顔になりじっと見つめてくる。


真にとってかなりのプレッシャーだった。シドロモドロになりながらも、必死に理由を考える。


「それは…うん。一目惚れだったからだよ。『JKこれくしょん』をプレイしていて、聖バルトロマイ女学院のステージで初めて出会った女の子が君だったんだ。

君は生徒会長で、長い黒髪もスタイルも100点満点で、ほかの人にも思いやりがあって優しくて…うまく言えないけど、『うわ、この娘素敵だな!』って思ったのが理由かな」


喋っている途中でなんだか小っ恥ずかしくなってきたが仕方がない。真にとってこれは嘘偽りない感情だった。


…が、目の前の陽菜乃はありきたりな答えに満足がいかないのか、若干ムスっとしていた。


「ふーん、そうですか…では真さんは私のことをどのくらい愛していらっしゃるの?」


どれくらいといわれても…しょうがない。無難なワードを紡いで陽菜乃に伝えよう。


「世界中の女性全員に告白されたって、君を一番に選ぶよ。一生君のことを、愛すると誓う…」


「一生?」


その言葉に陽菜乃はぴくっとする。


「一生じゃ私満足しません。たとえあなたに来世があるとして、そのまた来世も…」


いつの間にか陽菜乃の目からハイライトが失われ真っ黒になっていたので、真はぞわっとする。


「この世に七度生まれ変わったとしても変わらぬ愛を誓ってください。でないと私満足しません…ッ!」


「うっ…もちろんだよ。誓う。何度生まれ変わったって永遠に君を愛する」


それを聞いた陽菜乃の表情がぱあっと明るくなり、感激で真の右手を取ると両手でぎゅっと包んだ。


「素敵!ありがとう真さん。でもね。もし他の女の子にほんの少しでも恋心を抱くようなことがあったら…」


陽菜乃は真に口づけせんばかりの勢いでずいっと近づいてきた。


「私はあなたを殺して、ポスターの中に戻りますから」


この時の真の右手をググッと握る陽菜乃の握力は、明らかに成人男性のそれを超えていた。


あれ嘘だろ…こんなに重い娘だったかな?


そういえば聖バルトロマイ女学院の一ノ瀬陽菜乃が出る面では一度もゲームオーバーになることなく次に進めたことを思いだした。


バットエンドになるとどうなるのか、その辺りはアニメでも描かれていなかった。今度和田に会ったとき陽菜乃について詳しく聞いてみよう。アイツはこういったことには詳しい。


その日の夕方、真が大学から帰宅すると陽菜乃が夕食を作って待っていた。


「あ、真さん。おかえりなさい。ちょうどお夕飯出来たとこですよ」


今朝のきっちりとした制服姿とは打って変わって、黒く長い髪をポニーテールに結って薄ピンクのキャミソールに青のホットパンツというかなりラフな格好になっていた。


俺が大学に行っている間に外出でもして服買ってきたのかな?それより…


制服を着ていた時はあまり気にならなかったが、薄いキャミソールのせいで陽菜乃のメロンのように豊満な胸がかなり強調されており、ホットパンツから伸びる長い脚があられもなく晒されていて目のやり場に困った。


「ささ、どうぞこちらに座って」


陽菜乃が真に座るよう促した。ちゃぶ台の上には真の好物のハンバーグが用意されていた。


「おお、すげぇ。美味しそう。ハンバーグ大好きなんだよ俺」


「ふふ、前々から存じ上げてますよ。さあ食べましょうか」


ん? 前々からってどういう意味だ? それになぜこの娘が俺の好きな食べ物まで知っているのだろう?


ハンバーグを箸で切ってぱくっと食べると、肉汁の旨味が口いっぱいに広がった。冷凍やお湯であっためて調理するモノとは違って、わざわざ手でこねて作ってくれたのだろう。


「おいしい…うん。旨いよ陽菜乃」


「まぁ!本当ですか。よかったー。頑張って作った甲斐がありました」


文武両道、容姿端麗、料理上手…。なるほど、ゲームと同じく陽菜乃の優等生キャラ設定は現実リアルでも生きているようだ。


食事をしながら『JKこれくしょん』のゲームやアニメの話をしたが、女の子と会話をするときはいつもキョドってばかりいた真でも、不思議と陽菜乃とは会話が弾んだ。


ああ…目の前で女の子が手作りの料理を作ってくれて、俺の取り留めのない話で笑ってくれてる。なんて幸せなのだろう。もう、たった一人で寂しくモソモソと飯を食っていた頃にはもう戻れない。


食後は陽菜乃と二人で『JKこれくしょん』のアニメを視聴することにした。もう何度も見たアニメだったが、陽菜乃が隣で一緒に見てくれると余計に面白く感じられる。


二人でベッドの上で座りながらテレビを見ていたが、しばらくすると陽菜乃が無言で真の二の腕に抱き着いてきた。


キャミソール越しに巨大なマシュマロのような感触がむにゅりと伝わってきて真の脳に衝撃が走る。


「うっ…陽菜乃、さん?」


陽菜乃を見ると顔を赤らめて、恥ずかしそうにしている。


「真さん。したくないですか…?」


ぎくりとする。男女が密室で「する」ことと言えばこの場合一つしかない。


「したいって…あやとりとか?」


陽菜乃はあきれ声で「もう!」というと、真の二の腕をぺちんと叩いた。


「女の子に言わせないでください! 真さん、毎晩毎晩私のポスターに向かって『はらめ!』とか『俺のドーテーを奪ってくれ』とか仰りながらお一人でなさっていたじゃないですか…」


そういって陽菜乃は右手を猫の手のように筒状に握ると、しゅっしゅっと上下に動かす動作をした。


「がっ…!!!!」


余りの恥ずかしさに言葉を失う。


「ふふ…私ね、全部天井から見てましたよ。真さんのこと…今まで想像の中で私を愛してくださったんですね。でも、いいんですよもうガマンしなくて…私はここにいるんですから。」


いたずらっぽく微笑む陽菜乃はこれまでの優等生キャラとはまるで違って、まるで淫靡な小悪魔だった。


キャミソール越しに見える豊満な胸元、色っぽくて艶めかしい太もも、香水とバターを混ぜたような女の子特有の甘い香り…


真の理性のタガが外れるのにはそう時間がかからず、その日の夜は真にとって一生涯忘れられない夜となったのだった。


朝、真はベッドの中で何も身に着けていない違和感で目が覚めた。


傍らに視線をやると、自分の腕の中で裸の女の子がくうくうと気持ちよさそうに眠っている。それを見て昨晩の出来事の記憶がだんだんと思いだされてきた。


「あー…そういえば、俺もう童貞じゃないんだっけ」


好きな女の子で童貞を捨てた喜びで満ち溢れていたが、それと同時にアニメオタクとしての大切な構成要素まで失ってしまった淋しさも入り混じっていた。


陽菜乃の寝顔に愛しさを感じて頭を撫でていると、しばらくして陽菜乃もぱちりと目を覚ました。


「ん~…真さん。おはようございます…昨晩は凄かったですね」


んひひっと陽菜乃がいたずらっぽく微笑む。


「う…」


確かに昨晩は凄かった。


真は二回目でもう疲労困憊だったが、陽菜乃が「もっと。もっと…」と繰り返しせがんできたので精気まですべて吸い取られてしまい、そのまま死んだように眠ってしまったのだ。


「結局5回も…いや6回でしたっけ?まったく真さんはお猿さんみたいですね」


求めてきたのはお前の方だろ。この狼女め。もう後半は『労働』みたいになってたぞ。


とは言え毎晩こんな調子で求められるのだろうかと思うと真は若干気がめいった。


まぁ昨晩だけが特別だったんだろう。そうであってほしい。でないといくら若いとはいえ体が持ちそうになかった。


「ちょっと待っててくださいね。今、朝ご飯を作りますからね」


陽菜乃はベッドから起き上がると、床に散らばっていた下着や服をてきぱきと身に着け始めた。

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