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5、 修行と助けるという事

5、 修行と助けるという事



「どう? 似合ってる!? デイヴィス!!」


「ああ、似合ってるよ。 それにするか?」


「うん! この服にする!」


ここはあらゆる冒険者が世界中から集まり、栄える町。フレイム。

複数のギルド集会場があり、そこではFからSSSランクのクエストが掲示板に張り出されている。


その中でもオレはSランクの冒険者としてクエストを受けられる。

だが、冒険もしたこともないFランク以下のアレンに合わせるため、初めはFランクの猫探しのクエストを受けた。


剣術の鍛錬もしたいということだったので、弱い魔物を倒していきながら、剣術の修行も兼ねていた。


それから、三ヶ月。猫探しのクエストも軽く終え、徐々にFランクから今はCランクのクエストまで受けられるようになり、資金面でも豊かになったところで、やっと防具屋でちゃんとした服を買えるまでになった。


「Cランク冒険者にもなれたし、これで私も一人前の剣士ね!!」


「いや、そう言ってるうちはまだまだ半人前だな」


「何よ! ケチ!!」


夕方。防具屋から今日泊まる宿屋に帰る時だった。


「お前の家系は金もない、権力もない卑しい貴族の末裔だ!」


「そうだぞ! この生意気な下級貴族が!」


「やめて! その服はお母様がくれた唯一の服なの!!」


何やら町の路上で不良少年2人と少女1人が言い争いをしている。

一方的に、少女の持っている服を引っ張って破ろうとしていたのだ。


「待って! あれ、テイラーだわ! 助けなくちゃ」


「テイラー?」


「昔の友達よ! 早く行くわよ!」


アレンにオレは腕の裾を無理やり引っ張られ、言い争いしている場所へ向かう。


「ホントにやめて!! これ以上は破けちゃう!」


「うるせえ!! お前の事情なんて聞いてないんだよ!!」


ビリビリッッ!!


テイラーという少女の持っていた服が破かれる音がする。


「ちょっと!! 何してるのよ!! 服が破れちゃったじゃない!! 弁償しなさいよ!!」


「嫌だね〜。 オレらはお前らと違って、上級貴族だから何しても良いんだよ〜だ」


「そうだ! ゴミくさい冒険者はとっと家に帰れ!!」


「なんだとお!! コラああああああああああああああああああああ!!」


グッと拳を握りしめ、その腕を振り上げようとするアレン。

その時、オレはサッとアレンの腕を止めた。


「何よ!? なんで、止めるの! デイヴィス!?」


「相手は貴族だ。 これ以上揉めて、問題になったらオレらの冒険者としての権利は剥奪されかねない。 だから、ここは任せろ」


「なんだ〜? 冒険者風情が何粋がってんだ? ああ?」


「……」


アレンを引き止めると、オレは見下した鋭い眼光を不良少年2人に向けた。

すると、仰け反るようにして2人はオレに対して、畏怖の念を表情に出した。


「な、なんだよ。 ちょっと服を破っただけじゃないか」


「くそ! い、行くぞ。 こんな奴らに構ってられるほどこっちは時間はないんだよ!」


そう捨てゼリフを吐くと、貴族の不良少年たちは家路へと帰っていった。


「大丈夫? テイラー、久しぶりね。 怪我はない?」


「うん。 ありがとう、怪我はないけど、大切な服が…」


「ホント、ひどいことするのね! 今の上級貴族ってやつは」


「私は大丈夫。 それよりごめんね。 私、ケンカに巻き込んじゃって」


「いいのよ。 昔からの仲じゃない」


ボロボロと涙を目から流すテイラー。それを慰めるようにして彼女に肩をさすってあげるアレンを見て、オレは2人の思いというものをなんとかしてやりたいと思った。


「ねえ。 デイヴィス。 この服、なんとかならないの?」


「元にはもどらないが、服を修繕することはできる」


「それだわ! テイラー! さっきの防具屋に行くわよ!」


「えっ? ちょっと!?」


テイラーのきているドレスと腕をアレンは引っ張ると、この町の防具屋に向かって走り出した。

オレも呆れるように、2人の後を追うことにした。


「すごい! 見事に服が修繕されたわ! ありがとう、デイヴィス!」


「オレのおかげじゃない。 礼は防具屋のオヤジに言え」


「本当に何から何までありがとうございます。 私、今お金の持ち合わせもないのに修繕までしてもらっちゃって」


「いや、たまたま資金が潤っていただけだ。 それより、アレンには感謝を述べないのか?」


「そうだった。 ありがとう、アレン」


「私のデイヴィスにかかれば、どうってことないわ!!」


いつから、オレはアレンのものになったんだろうか。アレンはまるで自分のことのように自信ありげに鼻息を荒げた。


「そう言えば、アレンはどの学校に行くって決めたの? 私は剣術学園に行くって決めたけど」


「剣術学園!? 何それ!! どこにあるのかしら、そこは!?」


「この町の西をずっと行った先にある、マルティネスという城下町の中にその剣術学園はあるけど…」


「そうなの!? デイヴィス! あんたはそこの場所、知ってるの?」


「まあ、オレもそこで剣術を習ってた学生の1人だったからな」


「すごいじゃない! じゃあ、デイヴィスはそこの卒業生なのね!!」


「…残念だが、オレはそこの学園から退学した。 剣聖としては半人前だった上に、勇者パーティーにスカウトされていたからな」


「あ、あんた勇者様のパーティーにいたの!!? なんでそのことを言わないのよ!!」


「聞いていなかったか?」


「聞いてないわよ!! バカなの、あんた!?」


オレとアレンの言い合いを気まずそうに途中から聞いていたテイラーは次の言葉をハリスに提言した。


「アレンはこれからどうするつもりなの?」


「もちろん、それを聞いて黙ってちゃいられないわ! 私もその剣術学園に行くわ!!」


「冒険者をやってるみたいだけど、学園に行くお金はどうするの?」


「剣術学園には上位合格者において、学費免除が存在する。 それを使えばいい」


「そんな…無茶なことできるはずが…」


「いや、」


「私たちならできるわ!! だって、元勇者パーティーの剣聖と超、超、超つよーい冒険者の私がいるんだから!!」


冒険者として、アレンの剣術を鍛え上げるつもりだったが、今。目的が変わった。

オレはアレンとともに、西にある〝剣術学園〟の入学を目指すこととなった。

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