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手に職を!!  作者: 手に職を!!
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ここはどこ?

見渡す限り緑の草原。


生えている植物の名前は・・・わからない。

雑学も身を助けるという事で、図鑑などもよく見ていたが覚えのある植物が見当たらない。

そんなことよりも、


「ここ、どこ!?」


落ち着け、俺はうちの施設の病室に入院していた。

熱にうなされていた、うなされ続けていた。

目を開けたら草原にいた。


「なんだ、夢か・・・」


そう考えればすべて説明がつく。

熱にうなされたせいで、寝落ちして今絶賛夢の中。いわゆる覚醒夢とでもいうのか、夢の中でこれが夢だと気が付いているという事だ。

それにしても、リアルだ。見たこともない草やにおい、それも秋のにおいだ。そう言ったものが余すことなく知覚されている。


見たこともない植物を想像できるのもすごいと思うが、まあ、適当に草を書けと言われれば、どこにも生えていないような草を普通は書くので、ないこともないだろう。


においなども、おそらく記憶のどこかから引き出されてきているのだろうし、秋のことを考えていたから秋のにおいだと思っただけだろう。


そう考えれば、夢とはいえ久しぶりに屋外にいるのだから少し散歩でもしてみようか。


理性のかなりの部分が、これって現実じゃねぇ?と訴えてきているが、常識を司る精神的なものが、夢です!!これは夢なんですぅぅぅ!!!と訴え、実際俺の心は千々に乱れているのだが、背中と額を伝う冷や汗としか言えない何かを感じながらも、ひとまず逃避への第一歩を踏み出した。


サクサクと丈の低い草を踏み分けながら歩く。丈が低いといっても、ひざ下くらいまで伸びているので、結構歩きづらい。夢なので仕方ないが、入院中の簡素な寝間着に裸足なのだが、草が思ったほど固くなく、足の裏が少しくすぐったい程度で、痛みもなく歩けた。


入院中に体力もずいぶんと落ちているかと思っていたが、さすが夢の中だけあり、多少息が切れるが普通に歩けている。


「痛っ!」


ずんずん進んでいたが、草の下の何かを踏んでしまい、足の裏に刺さるような痛みを感じた。

その場に座り込んで足の裏を確認したが、幸いなことにケガなどはしていなかった。


「なんだこれ?」


踏みつけてしまった何かを草の下から取り出してみると、動物の骨のようなもの。これまた、俺の知っている生物の骨にこんなものは無いように思える。頭蓋骨の一部だと思うのが。


「角?なのか?」


頭蓋骨の全体像はわからないが、あたりに同じ動物のものだと思われる骨がいくつか落ちていたが、推測するに身長は120cmから140cm程度、ほぼ人体と同じような骨格だが、頭蓋骨に明確な突起があるようだ。

気を付けてみれば、あたりに同じような骨が散らばっていた。今まで踏まずに歩けていたのは運が良かったのか、何よりこの角のようなところを踏んずけていれば、怪我くらいはしたかもしれない。

せっかくの散歩が台無しになるところだった。夢の中とはいえ、注意は必要だなと周りを見渡してみるが、遠くに岩山のようなものと雑木林というには幅が広く、奥の見通せない森のようなものが広がっている。それでも数kmは先だと思うが・・・


しかし、とがったものを踏みつけて痛みを感じた。実際、夢だとしても、記憶の再現である以上五感もある程度は再現されるとは思うが、いよいよ常識的な部分が否定している病室から謎の草原に移動しているんじゃないかという非常識な考えが現実味を増している。


意識していなくても五感は常に刺激されているわけだし、覚醒夢だとしてもいろいろおかしすぎる。海外の自称「Mabudachi」たちからすれば、日本人が転生や異世界に転移するのはよくあることらしいので、そう言ったことに巻き込まれたのだろうか。


「なんてね」


転生だとすれば俺は死んだことになるし、何より死んだときの格好で草原に寝ている意味が分からない。異世界転移(笑)の可能性はまだあるかもしれないが、そうするとあるべきイベントが起きていない。


女神も神様も、謎の高次元な存在にも会っていない。もちろん、超強いチート能力もない。初期装備が寝間着で剣と魔法の世界に送り込まれた日には、現代っ子など瞬殺されること請け合いである。


すでに思考がかなりおかしなことになっている自分を半分ごまかし、ひとまず道的なものがないのか森に向かって歩き始める。

夢の中で道を探すのもおかしなものだが、何の骨かわからないものがそれなりに落ちている草原でもう一度昼寝をしゃれ込めるほど、俺の精神は強くはない。


森があって、知的生命、できれば人間が生活しているならば、燃料として薪くらいは調達にくるはずで、そうなれば森の周りには道があるのではないかという淡い期待があった。いや、夢なんですけどね。


「もうちょっとわかりやすい設定がないと、対応も出来ないんですが」


万が一、夢でなくどこかで俺のことを見ている存在があるかもしれない。内心そんなことを中二的な感覚で呟いてみて少し照れた。が、いまだ何の反応もなし。


「夢・・・なんだろうな」


いえ、夢ではありませんよ・・・

そんな女神の声が聞こえてくることもなく、森が段々と近づいてくる。

近づいてくると森の木々の一本一本が意外と大きなことに気づいた。草原は、森の始まりよりも一段高く丘のようになっていたらしい。上から見ると大人3人が手をまわしてやっと届くくらいの太さの木々が、そこかしこに生えていて、伐採されているのか切り株も見える。という事は、俺以外の人がいるという事だ。夢の場合はそんなの関係ないが。

予想通りというか、想像したのだから当たり前というか、森のふちに沿って少し離れたところに踏み固められた道が見えた。ここから木を伐りだしたり、薪をとっているのだろう。

と、そのとき近くから女の子の悲鳴が聞こえた。


「え?イベント発生ってことか?」


状況はわからないが、すでに俺の中の理性的な部分は、夢という説明にかなりの無理が発生していることを認めており、この悲鳴からの状況で判断しようという気になっていた。

声が聞こえたのは、向かって右のほうに続いている街道の先だと思われたので、そちらに向かって走る。25歳の平均的な体力で、若干息も切れたころ女の子が襲われているのが見えた。

しかも襲っているのはアニメでも見かけたゴブリンといわれる種族だろう。3人?匹?で襲っている。アニメと違い質感がものすごく自然で、肌の色が緑ということで違和感もものすごい。人類が初めて自分と違う肌の色の人種を見たとき、きっと同じように感じたのかな、などと思っていたら突然ゴブリンのうちの一人が、こん棒のようなもので女の子を殴ろうとした。


「待て!」


大きな声で呼びかけてしまってから気が付く。とっさに声をかけてしまったが、俺どうする気なんだろう?




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