これが俺の宣誓
四条たちも自分たちの所定の位置に並んだ。
本部のすぐ正面、朝礼代があるそばの近くに選手宣誓の三人や生徒会と言った面々が並んだ。
皆開会に向けてかなり気持ちが高揚している様子だった。
初めての体育祭に期待が高まる一年生、二回目で多少余裕のある二年生、そして最後の体育祭でその時間を一つ一つかみしめる三年生。
それぞれの思いが交錯する中、いよいよ体育祭の開会が宣言されようとしていた。
本部の放送を担当している生徒がマイクに手を掛けた。
そして右手の人差し指で二度ほどマイクを優しく叩いた。
「、、、ッつーー」
本部のマイクの音がグラウンド中をこだました。
その場の空気は一瞬にしてマイクに向いた。
放送を担当する生徒の策略だったのだろうか。
マイクの音一つで場の雰囲気を一気に引き込むそのセンスも王を育成するこの学校ならば当然のように備わっていくスキルなのだということだろう。
放送する生徒は続けて自分の口元をマイクのそばに近づけ、アナウンスをし始めた。
「皆様お待たせしました!一年に一回のスポーツの祭典。今年も無事この日を迎えることとなりました。今日一日この体育祭の総合アナウンスを務めさせていただきます三年三組、風祭茜です。どうぞよろしくお願いします!」
非常に元気のいい声が会場の人たちの耳に入り込んできた。
しょっぱなから生徒たちのテンションの上がるようなアナウンスをした。
会場からは風祭に向けて大きな拍手が送られていた。
ちなみに風祭は全国中学放送コンテスト優勝の実力者である。
拍手が鳴りやまない間にも風祭のアナウンスは続いた。
「それでは早速参りましょう。まずは、生徒会長による開会宣言です。」
あらかじめ朝礼代の近くにいた会長の早川が歩いて壇上に上がった。
早川は壇上に上がると、マイクの高さを手際よく調節して一礼をした後に開会宣言を始めた。
「只今より、国立王都高等学校体育祭を開会することをここに宣言します。」
一礼をした後に颯爽と壇上を後にした。
会場全体の雰囲気が熱くなっていくのを四条は肌で感じた。
一言で会場の雰囲気を変えることのできる人間がいずれ一流の王になるんだなと実感した。
早川が元の位置に戻ると、いよいよ選手宣誓の時間がやってきた。
四条はなるようになれと言った半ば投げやりな気持ちで緊張を強引に抑えていた。
しかしそんな四条の状態など関係なく選手宣誓のアナウンスが流れだした。
「早川会長、ありがとうございました。続いては各学年の代表による選手宣誓です。」
アナウンスと共に選手宣誓を担当している三人は朝礼代へと足を運んだ。
綺羅は三年目で慣れているため、軽い足取りで壇上に上がった。
真田も緊張はしているものの、周りからはそのような雰囲気を感じさせない様子だった。
肝心の四条はと言うと、三人の中で明らかに一番緊張していた。
だがしかし、周りから見て明らかに様子がおかしいというほどでもなかった。
森宮など一部の人からは四条が緊張している様子が分かっていたようだが、そこまで上がることはなかったのである。
並んでいる生徒たちから見て右から順に真田、綺羅、四条の順に並んだ。
そして選手宣誓がついに始まった。
「宣誓!」
三人の息の合った声が会場中にこだました。
この一言で三人の緊張も幾分か和らいだ。
まずは一年生の真田からマイクに声を通した。
「私たちはこの学校の生徒であることに誇りを持ち、」
一言もかむことなく言い切った。
そして次は四条の番だ。
言う前に一つ大きく息を吸って臨んだ。
「この体育祭を全身全霊でやりきり、」
四条もふたを開けてみればいい選手宣誓になった。
緊張を微塵も感じさせない響き渡るいい声だった。
そして最後は綺羅。
「この学校をより良いものにしていくことを誓います。」
綺羅は勿論普通にやり切った。
三人の宣誓が終わると会場全体から押見の無い拍手が送られた。
四条はその光景を上から見ているとなんだか自分がすごい人間だと思えてきた。
しかし実際この大役を務めることのできる人間はごくわずかなため、四条が思ったこともあながち間違いではないのである。
それほどまでのことをやってのけたということに会場から拍手が送られたのである。
壇上から降りると三人はそれぞれのクラスの列に並びに行くことになっている。
四条が自分のクラスに行こうとすると綺羅から一言だけ言葉が送られた。
「お前も立派に王してるじゃないか。」
その一言だけ言って綺羅は自分のクラスの列に行ってしまった。
しかしその一言が四条にとってはとても大きいものになっていくことになる。
四代王家の一人からそんなことを言ってもらえたのである。
四条にしてみればこれ以上ない誉め言葉だった。
四条はニヤニヤしながらクラスの列に向かった。
角川が並んでいる前に四条は入った。
「雪斗、何かいい顔してるじゃないか。まあいい宣誓だったぞ。」
四条は誇らしげに角川の方に振り向いた。
「当たり前だ!」
その一言に四条のやり切った気持ちが凝縮されていた。




