開会直前
体育祭当日がやってきた。
生徒たちは既に学校の第一グラウンドに集まっていた。
生徒たち全員が体操服を着ている光景を見るといよいよ体育祭が始まるんだなという高揚感が四条の心に広がっていた。
四条はクラスメイトが集まっている場所ではなく、生徒会などが集まっている本部にいた。
選手宣誓をする生徒のため本部に招集されているというわけである。
勿論その中には、三年生の綺羅や一年生の真田の姿もあった。
「じゃあみんな、一度集まってくれ。」
生徒会長の早川の招集がかかったため、本部にいる生徒たちは早川の周りを円で囲むようにして集まった。
早川は集まった生徒たちに対して意気込みを話し出した。
「取り敢えず君たちのおかげで今年も問題なく体育祭を開催できることになった。ありがとう。そしてこれからが本番なので気を抜かずに最後までやってほしい。ということで、今日一日頑張っていこう。」
早川の言葉に集まっていた生徒たちは身が引き締まる思いになった。
四条も身が引き締まると同時に早川みたいに周りを鼓舞できるような人になりたいという憧れの気持ちもあった。
体育祭開会までの間に四条たち選手宣誓組は最終確認をした。
「二人とも緊張していないか?」
「俺は大丈夫です。多分。」
四条は噓をついた。
ここに来て無茶苦茶に緊張していた。
しかし見栄を張りに張りまくってしまった。
ただ嘘をつくのもよくないという気持ちも多少なりとも持ち合わせていたこともあり、語尾に多分という保険を掛ける形になった。
「緊張してないなんてすごいな。肝が据わってていいじゃないか。」
「あ、ありがとうございます。」
少し後ろめたい気持ちになった。
「真田はどうなんだ?」
「緊張はしてるっす。けど大丈夫っす。」
真田の方が四条よりもよっぽど肝が据わっていた。
適度な緊張というべきものに近い状態だった。
「一年生で緊張するのなんか普通だからな。気にすんなよ。」
四条は自分のことを棚に上げた。
「そうだな。適度な緊張は必要なこともある。あまり気にすることないよ。そろそろ開会式だし並びに行こうか。」
「はい。」
二人の威勢のいい返事が響いた。
と言ってもほとんど真田の声だった。
所定の位置に行こうとした時も四条だけ場所を間違えてしまった。
明らかに様子がおかしい。
緊張がマックスに達していた。
ここに来て四条は自分がやることじゃないといった悲観的な考えに至るようになっていった。
すると、その様子を見かねた綺羅が一言声を掛けた。
「心配するな。俺がいる。」
四条は心なしか少し気持ちが楽になったような気がした。




