破戒僧ジャック
アリスが神界から追放される日、教会の地下にある古びた檻の中に破戒僧ジャックはいた。彼の監獄には持ち込みが許される聖書、聖典、ご神体の書かれた肖像画、フィギュアもとい木像が散乱している。
「今日は誰に“お祈り”しようかなー」
彼は監獄に入れられ、自らの過ちを認め、反省している……訳がない。
彼は持ち込みが許されている聖なる物品を『性なる物品』として扱っているのだ。
「おっ! 今日はアリス様にしよう! いつも天候を操っていらっしゃることに感謝を示さねば」
そういって彼は両手を合わせ……ることなく煩悩、本能の赴くままの行動に出る。
そのとき監獄の扉が開かれる。
看守が入り、ジャックの下半身が露出していることに気が付くと深いため息をつく。
「おい、お前の処遇が決まったそうだ。いま檻から出してやる」
「はぁ? 勝手に入ってきてんじゃねえよ! ノックくらいしろや!」
看守はジャックの言葉を無視して開錠する。
固く閉ざされた扉が開き、晴れて自由の身となったジャックは動く気配がない。
「なあ? 俺はこの部屋から出たら生きていくために働かないといけないんだろ? なら俺はこの檻から一歩も出ない!」
「おっ、お前は何を言っているんだ! 破戒僧なんて殺されないだけましだろうが!」
「いいや、俺は出ないね! 働くくらいなら死んだほうがましだ!」
なんとも勇ましく、情けない言葉に看守が顔を引きつらせる。
「いいから立て! 下半身をしまえ! 今日は恐れ多くも神様が直々におまえを導いてくださるそうだ!」
それを聞いてジャックは動揺する。
「えっ? 神に導かれるの? 俺殺されるの?」
「よかったな! 働かなくて済むぞ」
「いやいやいや、さっきのは冗談ですよ冗談。いやー頭の固い神官は冗談を真に受けるからこわいなー」
看守は目の泳いでいるジャックの様子を見て勝ち誇る。
「アリス様が神儀の間にいらっしゃったそうだ。アリス様直々に導いてくださるなんて羨ましい限りだぜ」
「あっアリス様! さっき“お祈り“したのに殺しに来るなんて神のやることかよ!」
「お前マジで殺されても文句言えないレベルだぞ」
看守が本気であきれる。そしてジャックをつかみ無理矢理外へ連れていく。
「おい離せ!」
看守は無視する。そしてほかの看守に指示を出しジャックの両手と両足に枷を付け、口にはしゃべれないように猿轡を付ける。
「さすがに女神のお耳にこんなカスの戯言を入れるわけにはいかないだろう」
両手両足、そして口の自由を奪った看守はジャックを担いで神儀の間へ向かう。
看守が神儀の間へつくといつもは厳かな空間がまるで保育施設のような騒々しさだった。神儀の間の扉を開けるとそこには冷や汗をかいている教皇たちと大声で怒っている白髪の美女がいた。
彼女の顔はこの世の美を集めたかのように美しく、透き通る純白の神と羽衣は神々しさを感じさせる。が、今はとても怒っていた。






