喫茶店のあの子
ここはモダンな雰囲気が売りの喫茶店だ。
丸い照明がお洒落なつくりのテーブルの真ん中に吊り下がり、テーブルの間には隣の人の顔が見えるか見えないか程度のレンガで造られた仕切りがある。
ゆるやかに天井についているスピーカーから流れ出るのはクラッシック。
数人で集まって気軽に談笑も楽しめるし、1人で勉強するにもいいだろう。
お気に入りのテーブルにちょこんと腰かけ、わたしは喫茶店を一通り見まわした。
うむ、いつもどおり。
女友達と笑い合う常連、初デートらしいちょっとぎこちない雰囲気の学生2人、新聞を広げるサラリーマン、コーヒーの湯気に眼鏡を曇らせる壮年の男性、しきりにノートと参考書を見比べる受験生。
さまざまな人間がここを訪れる。
彼らを眺めるのがわたしの楽しみであり、仕事なのだ。
――おや、窓際にいるのは初めてのお客だろうか。
栗色の髪を高く結い、右手で頬杖をついている。
それだけでも十分に行儀が悪いのだが、彼女はその上をいっていた。
飲みかけらしいアイスティーのグラスについていたストローを口に咥えたまま、女の子らしいデザインの携帯をまじまじと見つめている。
メールでも見ているのだろうか。
髪と同じ栗色の瞳が大きく見開かれている。
さては、彼氏に振られたな?
そんな邪推を楽しみつつ、私は彼女を見つめ続ける。
赤いリボンのセーラー服はこの辺の高校のものだろう。
さては学校帰りか。買い食い、立ち寄りを禁止しない学校というのも珍しい。
時代の流れ、なのだろうか。
もちろん、『校則は破るためにあるもの』という彼女なりの信念を持っているのかもしれないが。
なにはともあれ、お客を観察するのは楽しい。
それでこそ、わたしがいる甲斐があるというものだ。
「ありがとうございましたー」と少々間延びした言い方で、アルバイトのウェイトレスがごちそうさま、と去るお客に挨拶する。
わたしはあげていた右手をお客のほうに向けた。
またお越しくださいネ、お客様。
なにせわたしは、招き猫なのだから。
イラストを見ながら描写、というのは初めてのことなのでとても楽しかったです
たくさんの方が投稿されていたので、思わず書きたくなって書いちゃいました
うまく描写、できているのでしょうか…