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◯◯しないと出られない部屋2 前編

○○しないと出られない部屋2 前編



「………またこの部屋……?」

「これで三回目よね?」

「……そうだね」


 そこは教室一個分程度の広さで四方を白い壁に、そして床と天井も真っ白のなんとも殺風景な部屋。

 出入り口どころか窓も通気口さえも無い完全な密閉空間だった。

 そしてそこに佇むのは二組、四人の男女。


「ねえビアンカ、あの紙はあった?」

「あったんだけど……」


 ビアンカと呼ばれた亜麻色の髪の少女が何か書かれた小さな紙切れを僅かに茶色がかった黒髪の少年に手渡した。

 それをもう一組の男女がのぞき込む。


「ヒロは何の事だかわかる?」

「いや、聞いた事も無いゲームだなあ……アユーシとユキは知ってる?どこかの地方特有の遊びとかなのかな?」


 黒髪の少年が赤毛の女性と蘇比色の髪の青年に聞くが二人とも首を横に振る。


「うーん……「全員がポッキーゲームで親睦を深める」ねえ……これはおねーさんも聞いたこと無い遊びだなあ、ユキはどう?」

「俺も知らないなあ……取り敢えず危険はなさそうな感じだが」

「「「「………うーん………」」」」


 悩むビアンカとヒロ、アユーシとユキ。

 

「ところでさ、さっきから気になってたんだけどビアンカちゃん」

「はい?」


 きょとんとした顔で振り向くビアンカ。


「さっき「またか」とか「三回目」とか言ってたけどここが何なのか二人とも知ってるん?」

「あー……実は僕もビアンカも今と同じように閉じこめられた事があってさ」

「この部屋、その紙に書かれた条件をクリアしないと元の世界に帰れないんですよ」

「えっ……じゃあ「ポッキーゲーム」とやらがどんなのかわからないんじゃ永遠に出られないんじゃ…?」

「うん、いやあ困ったねえ」

「………あまり困ってるように見えないんだけど」


 へらりと笑うヒロにビアンカが微妙に頬を膨らませる。


「え?そう?」

「なんか楽しそう」

「おねーさんにもそう見えるなあ……閉じこめられた時にビアンカちゃんと二人きりで何かしたん?」

「えー?心外だなあ、別に変な事をした訳じゃ……ん?地震?」

「あ、本当だ揺れてる……あれ?なんか揺れが大きくない?」


 最初はごく小さな揺れだったのが次第に振幅が大きくなる。


「ちょっとやだ、崩れたりしないよね?」

「こっちへ!部屋の真ん中より壁際の方が天井は落ちにくい筈だ!」


 ユキの声に全員が慌てて壁際に寄る。


『転移行程において事故発生。危険が予想されますので参加者の皆様はご注意下さい』

「え?!ちょっと?!事故ってそれどういう事!?」


 どこからか耳障りな警報音が聞こえてきた。

 四人の前、上方の空間が虹色のカーテンのように輝き、そして歪む。

 その歪みが徐々に開く。


「ヒロ、何か出てくる!凄い魔力を感じるからちょっとまずいかもしれんぞ!!」

「この魔力量、ヤバいかも!気をつけて!!」


 ユキとアユーシの注意喚起に緊張が走った。


「まさか……魔族?」


 ビアンカの声と同時に二人の人影が虹色の歪みから落ちてくる。


「みんな身を守る準備を!」


 ヒロの言葉に全員が頷くとビアンカは棍を、アユーシはブロードソードを、ユキはグラディウスを、ヒロはカトラスとソードブレイカーを構える。


「ビアンカちゃん下がって!」


 ヒロとアユーシが一歩前へと出る。


「女の子?!」


 ヒロの驚く声。

 歪みからは見事な銀髪の少女と黒髪にポニーテールの小柄な少女が落ちてくる。

 二人の少女はヒロ達の戦闘態勢を見てぎょっとした表情を一瞬だけするとそれぞれ咄嗟に自分の武器を抜く。

 銀髪の少女は金属製の長い棒状の武器を、ポニーテールの少女はオートマチック拳銃を。そして銃の安全装置を解除してスライドを動かし初弾を装填する。


 着地すると同時にキィン!と澄んだ音がして銀髪の少女がアユーシのブロードソードを弾き避ける。


「ソードモード!」

「なっ!?」


 銀髪の少女の一瞬の動きと、その武器が棒状から剣へと変化した事に驚愕するアユーシ。


「<我、自然の守り人なり。茨よ、悪手を捕らえる戒めとなれ!>」

「あっ?!」


 ユキが木属性の魔法で捕縛して無力化しようとあっという間に茨で銀髪の少女の手足を絡めとる。


「ビット!!」


 銀髪の少女が短く叫ぶとその周囲に小さな魔法陣が複数生成される。


「当たれぇっ!」


 魔法陣から発射された魔弾が次々と少女を絡めとっていた茨を切断した。


「なっ!?あんな魔法見た事が無いぞ!」


 驚くユキをよそにヒロはポニーテールの少女と対峙していた。


「っ!女の子とやり合うのは嫌だけどっ!」

「ちょっと!?」


 カトラスとソードブレイカーを構えて迫るヒロにポニーテールの少女が少し驚きつつも威嚇として足下に銃弾を撃ち込む。


「おっと?!でも次の弾込めるより剣の方が速いよ!」

「させるかっ!」


 ポニーテールの少女は更に二発、三発と足下に撃ち込む。


「うわわわ?!なんで連続して撃てるんだ?」

「…………なるほど、そういう事」


 納得した顔でポニーテールの少女は右手で銃の狙いをつけたまま軍用のごついサバイバルナイフを左手に構えた。


「ふっふっふ、マスケットとは違うのだよ、マスケットとは!」

「それならっ!」


 なんとか接近戦に持ち込もうとヒロがダッシュする。


「まだやる気?!もうっ!!」


 ポニーテールの少女が更に一発撃つとその弾丸はビキィン!と音をたててソードブレイカーだけを正確に弾きとばした。


「うわっ?!それぐらいの事でっ!」

「ちょっと本気?!?!」


 ヒロがカトラスを構えて突進するのをポニーテールの少女は紙一重で回避するとそのこめかみに銃口をぴたりとあてる。

 ヒロはカトラスを少女の首筋にぴたりとあてる。

 お互いの動きが完全に止まった。


「……やるねえ」

「……貴方もね」


 一方アユーシ、ユキも銀髪の少女を前後から挟撃する態勢になんとか持ち込んだもののアユーシは銀髪の少女の剣に、ユキは展開された多数の魔法陣にそれぞれ狙いをぴったりと定められて膠着状態に陥っていた。

 下手に動くと一瞬で終わる。


「……どうします、まだ続けるのですか?」

「……っ!」

「……強い…!」


 銀髪の少女の予想外の戦闘能力にお互いに迂闊に動く事ができない。そこらの兵士や海賊、山賊よりも遙かに強いアユーシとユキだがその二人を同時に相手にして互角かそれ以上に渡り合っているのである。


 ビアンカはというとこの状態で手を出すと却って事態を悪化させると判断して棍を構えたまま、何時でも加勢できるように状況の推移を見守っていた。


 唐突にブーッ!とまるでクイズ番組で不正解をした時のような大きな音がした。

 それを聞いて落ちてきた二人の少女が「うわっ」という表情をする。


『反則行為を確認。内容、不必要な戦闘の発生。これよりペナルティーに入ります』

「亜耶!」

「はい、昶!」


 ポニーテールの少女、昶と亜耶と呼ばれた銀髪の少女は二人ともほぼ同時に跳び下がり床に転がって伏せる。

 次の瞬間。

 ヒロ、アユーシ、ユキに凄まじい電撃がそれぞれに落雷した。


「わああああああっ!!」

「きゃあああああっ!!」

「痛ってえええええっ!!」


「あー……ペナルティ来たって事はやっぱりあの部屋かここ……」

「どうやらそうみたいですね」


 伏せていた為に難を逃れた二人の少女が顔を見合わせる。


「ちょっと?!三人とも大丈夫?服が少し焦げてるわよ?!」


 ヒロ達に慌てて駆け寄るビアンカ。


『戦闘行為を誘発した者へのペナルティ終了。尚、退室条件の変更はありません』


 どうやら結果として戦闘に参加しなかったビアンカにはペナルティーは課されなかったらしい。


「……これは下手に戦闘するより素直に退室条件をクリアした方が良さそうですね」

「そうだね、亜耶…………ねえ貴方達、武器を下ろしてちょっと話したいんだけどいいかな?」


 昶は銃とサバイバルナイフをホルスターに戻しながらビアンカ達四人に声をかけた。



 昶と亜耶、それにヒロとビアンカ、アユーシとユキは簡単に自己紹介を済ませると床に円を描くように向かい合って座っていた。


「………で、どうしてあたし達に武器を向けたのよ?」

「それはおねーさんが原因かな、かなり大きな量の魔力を感じてね、ユキと二人である人物を追っていて……それがまあ結構な魔力を持つ奴で咄嗟に、ね………ごめんなさいっ!!!この通りですっ!!このアユーシおねえさんの責任です!!」

「いや、俺も魔力で相手を誤認したのは同じだ、済まなかった」

「それを言ったら「身を守る準備を」ってみんなをけしかけちゃった僕にも責任あるから……本当に申し訳ない」

「うん、まあそういう事情があるならあたしはもう気にしないよ」

「私も気にしてはいませんから、それに魔力量に関しては事実ですし」

「ありがとう、そう言って貰えると助かるよ……ところでそれなんだけど」


 ヒロが興味深そうに昶のホルスターに収まっている銃を見ているのに気が付いた昶は銃を指さす。


「あ、この銃が気になる?」

「うん、昶はさっき何発も撃ってきてたよね?銃ってのは一発撃ったらまた次の弾を込めないと撃てないのが普通だからさ、凄く気になるんだよ」

「そっか、ヒロ君が知ってるのはマスケット銃なのね?」

「そうだけど僕らが知ってる銃とは形もかなり違うみたいだね」

「見てみる?」

「うん、見たい!」


 昶は銃を抜いてマガジンを取り出し、スライドさせて銃の中から完全に弾丸を抜くとヒロに手渡した。


「へえー………変わった銃だなあ、こんなの初めて見たよ、それに弾が入ってるの?」

「そ、これだと15発撃てるわよ、さっき4発撃ったからあと11発の残弾ね」


 取り出した残弾入りのマガジンを見せられてうげっという顔をするヒロ。


「うわあ………それじゃ僕、仮に昶を斬っても蜂の巣じゃないか、それにさっきソードブレイカー弾き飛ばした時みたいに射撃も正確だし」

「あたしは剣とかよりも射撃の方が得意だから」

「でもヒロさんにビアンカさん」

「「え?」」

「二人とも本来の魔力を全然使っていなかったでしょう?もしその「左手の魔力」を使っていたら私と昶に勝てたのではないですか?……それが何の魔力かはわかりませんけど私よりもずっと強そうな魔力を感じますが」


 自分達の強大な魔力が左手に宿る「呪いの烙印」によるものである事を正確に見抜いている亜耶の指摘にヒロとビアンカは一瞬表情を固くした。


「……それは……」

「僕が説明するよ」


 言いよどんだビアンカを制したヒロが口を開く。


「僕もビアンカもある事情でこの魔力を長く持っていてね………確かに凄く強い力ではあるんだけど使うと周囲を不幸にするし使った時の代償もかなりきついからよほどの事が無い限りは使わないんだ」

「訳ありですか……私も出自が特殊ですから他人の事言えた立場でもないですし」

「そうそれっ!!亜耶ちゃんの出自!!おねーさんもそれさっきからすっっっごく気になってるの!!」

「えっ?私の出自ですか?」

「そうそうそう!!出自!!」


 えらい勢いでずいっと迫って来るアユーシに亜耶は目を白黒させる。

 そしてがしっと亜耶の両肩をつかむ。


「亜耶ちゃん!!」

「はっ、はい!?」

「亜耶ちゃんのその眼、何なん?金色の瞳にその魔力量、もしかしておねーさんの生き別れの妹とかだったりせん?!?!」

「いっ、生き別れの妹?!?!」

「それにその魔力!!妹が駄目なら養女でもいいんよ亜耶ちゃん?!」

「よっ、養女!?!?」

「落ち着けこら。」

「痛っ?!」


 すぱーんと後頭部をユキにひっぱたかれて頭を抱えるアユーシ。


「……すまんな、こんな相方で」

「い、いえ……」


 思わず後ずさって壁に張り付く亜耶。


「ま、まあ冗談はともかくとしてよ亜耶ちゃん」

「……冗談に聞こえなかったんですが」

「う……おねーさんやその一族は「神族」の血筋をひいててね、それが濃い人は「神眼」って言われる眼をもっているの」

「で、その神眼は「奇跡を起こす力」って言われる凄く珍しい眼で金色の瞳なんだ」

「ただおねーさんの眼は琥珀色だから本来のとはちょっち違うけどさ、それでも普通の人には使えない光属性の魔法が操れるんよ」

「そんな理由でおまえさんの金色の瞳と魔力に興味津々だったって訳さ」

「なるほど、そういう事ですか…でも私は「転生者カテゴリーⅡ」といって現実からの生まれじゃなくて物語の世界から限界した存在なんですよ」

「聞いた事ないなあ……でもその魔力量は本物だしこれは信じるしかないよねえ」


「あれ?昶と亜耶が付けてるそれは部隊章と階級章?」

「はい、そうですよ」

「やはりそうなんだ、その星と線だと……え?少佐?!」

「うん、あたしも亜耶も傭兵部隊の船に乗って陸戦隊の指揮をしたりする事あるから」

「すごいなあ……うちの艦隊じゃ女性船乗り自体が珍しいよ、でもあの戦闘能力なら納得だよ」

「あれ?「うちの艦隊」ってヒロ君も船乗りなの?」

「うん、いつも船に乗り組んでる訳じゃないんだけどね」


「……それにしてもこうして話しているとなんていうか「食い違い」が多そうな感じがするんだよね」

「確かに話を聞いているとどうも私達と昶さんや亜耶さんはかなり違う国からこの部屋にとばされたみたいに感じるわね」

「そうね……「異世界」って言うのがしっくりするかも」


 昶の言葉に頷く一同。


「そう言えばさ」

「ん?どうしたの昶?」

「ヒロ君達はどうして退室条件をクリアしてないの?何をすればこの部屋から出られるか書いた紙が無かった?」

「「「「あ…………」」」」

「…………忘れてた…………」

「「えっ……」」


 思わず呆れる昶と亜耶。

 なんかグダグダであった。

那周ノン様の小説

ncode.syosetu.com/n8473fe/

「片翼の鳥~出会いと別れの物語~」

からビアンカちゃんやヒロ君が2回目の登場です(作者様の了解済み)

少し文字数が多くなってしまったので後編に続きます。



以前某動画サイトにて作ってみた動画の無断転載をされた事がありその自衛措置として下記を決めました。当然、問題視された「漫画村」のような方法も一切駄目です。


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