1匹狼は弱い!
…………てした………………手下?手下にならないかって言われたよな、今。
そんなの、なるしかないだろ。
「あー、なるよ!」
なんのあてもない異世界に1人、めちゃくちゃ心細い。こいつがどこの誰だか知らないが、誘ってくれるなら喜んで手下にだってなる。見た感じあんま怖く無さそうだし
「なるんだな?これからよろしく。」
そういって少年は手を差し出してきた。これは…………握手で良いんかな?
「えーと、よろしく。」
少年…………体温高いな。
「そんじゃ……自己紹介しない?」
「いいぞ。俺はヘグラルだ。人狼だな。」
「じんろう…………ってのはアレ?満月を見ると狼になったり?」
「……それとは違うんだが…………お前は?」
「伊藤太郎。ええと、16歳。」
「イトータローか。じゃあ、よろしく。」
「うん。太郎で良いよ。ヨロシクです。」
ヘラグルと名乗った少年は、こちらに手を差し出してきた。この世界にも握手はあるようだ。
「じゃあ、俺のねぐらに行くぞ。いつまでもこんな寒い所には居られん」
「分かった。ついてくよ」
へグラルと名乗った少年はさっさと歩き出した。僕は行き先が見つかった安堵感でちょっと泣きそうになりながら、早足で歩く彼についていった。
街は、あまり大きくないみたい。殆ど灯りは無く、星がよく見える。家は、たいてい一階建てで木製だったりレンガ製だったり。洋風とも和風とも言えない感じ。
しばらく歩いて、街の外れに差し掛かった頃、到着したのは彼の巣穴だった。1メートル程の土の段差に、大きな穴が空いている。
これが……寝床?確かに狼の巣穴感は凄いけど……
「ここが俺のねぐらだ。まぁ、二人で寝れるぐらいのスペースはある。」
「はえ〜……初めて見た、こういうの」
ほんとにここで寝れるのかな。
「まぁ、耳なしには珍しいかもな。気にしないで寝てくれ。」
何にせよ、僕はここで寝るしかない。へグラルはさっさと巣穴に入っちゃったし。
「了解。」
2メートル近い穴ぐらに入るのは初めてだから、ほんのちょっとワクワクしながら入ってみると、中は土っぽかった。所々木の根っこが顔を出している。
そして、床にはデカい毛皮が敷かれていて、意外と寝心地が良さそうな感じ。とりあえず靴を脱いで、怖々と座ってみる。
ヘラグルはごろんと寝転がると、
「細かい話は明日する」
と言った。僕は少し慌てた。
「ちょっと、聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「ええと……手下ってどういうことなの?」
「ふむ。俺の群れの一員になるという事だ。」
「群れ?」
「今は俺とタローの2人だけだがな。将来的にはもっと増えるだろう」
どうやらヘラグルは一匹狼では無いっぽい。
「先輩から、群れの2番手は転生者が良いと助言を頂いてな。故郷からだいぶ遠いが、この村まで来たんだ。」
「へぇ……。この村って、何かあるの?」
「ああ、この村は転生者が良く来る割に、放置されることが多いから、穴場なんだ。」
「なんで放置されるの?」
僕の疑問はまだまだ尽きないが、ヘラグルの目は既にとろんとしている。眠たいようだ。しばらく返事を待っていても、帰ってこない。
「スー、スー」
寝息が聞こえて来てしまった。誰かと寝るのは久しぶりだし、毛皮の上で寝たことなんて無いし、寝れる気がしなかったけど……
知らない土地に飛ばされて緊張していた疲れが出たみたいで、僕もすぐ寝てしまった。
この後、2人で旅をしているうちに、僕はSランクスキルの意外な強さに助けられていることになるということは、この時の僕は知る由もなかった。