Sランクスキルをもらった!
急な移動に驚いて周りを見渡している僕に、白髪でローブ、帽子を身につけた神官が言った。
「日本人、ですね」
「あっ、はい」
「じゃあここに立ってください」
なんか赤い魔方陣に乗るように指示されたので、素直に乗る。僕は未だに急すぎる転生に戸惑っていた。
この神官、すごく手慣れてない?僕が何か考える暇もなく、神官は赤い魔法陣を持っていた大きな杖で突き、確認するようにうなずいた。
「日本野良神組合か…………大丈夫ですね」
「はぁ…………?」
日本野良神連合ってなんだ?
「あなたは異界の神の力でこの地に召喚されました。つまり、元の世界のあなたの魂を元にこの世界で肉体を再構成しました。」
「この世界では、手の甲等から自分の能力やスキルを確認できます。御活用下さい。」
「…………あっありがとうございます」
能力やスキルを確認できる!?まぁ、とりあえずお礼を言っておこう。
「それでは、白色の扉から外に出れます。何かご用があれば村の集会所に行ってください。村の中心にあります。」
神官はすぐそこにあったドアを指差してそう言った後、自分は木製の扉の奥に消えていった。
着いて行く勇気はない…………なんか、淡白過ぎるような気がする……異世界転生なら、召喚した人が何らかの説明をするとか、何らかのもっと大きなリアクションを取るのがお約束だと思うんだけど。
そもそもあの神父(らしきお爺さん)が召喚士なのかどうかも分からないか。
足元には、これまで見たことのないような模様が描かれている。魔方陣ってやつだ。面白い形をした文字と、丸や星形や四角でできている。
何となく、指で線をなぞってみると、なぞった部分が赤から白になった。
「うわっ……」
思わず声が出てしまった。
他にも壁や天井をあちこち見てみたが、特に模様も文字もない。質素なものだ。召喚された部屋は、講堂のような場所だ。大きな木製の扉以外は特に出入口も無いので、木製の扉をくぐってみる。
何の変哲もない廊下に出た。扉がいくつかあるようだけど、そこに行く勇気もない。大人しく神父(らしき人物)の言っていた白い扉から外に出ることにした。
扉から出ると、ちょっとした小路だった。アスフォルトで舗装されておらず、向かいの家は石造りだ。
僕はとりあえず近くの段差に腰かけて能力を確認することにした。
能力の確認なんてどうするかわからないが、何となく視界に変なものが映りこんだ気がした。手の甲の辺りに何か……
よく見ると、『能力確認』という青白い文字が書かれていた。まさかと思って押してみたら
『身体能力
思考能力
スキル』
と文字が動いて増えた。ビクッとなってしまうぐらい驚いたが、周りには誰もいないし気にしない。俄然興味が湧いてきた。とりあえず、1番気になる『スキル』を押してみる。
すると『身体能力』と『思考能力』が消え、
『Sランクスキル獲得(人間) Lvなし
ステータス(手の甲) Lvなし 』
に変化。…………Sランクスキル!なにこれ!自分にスキルが備わってることが分かってワクワクしてくる。そういえば神様がSランクスキルがどうとか言ってたな。
期待しながら『Sランクスキル』を押すと…………
『☆Sランクスキル獲得 Lvなし
効果|スキル所持者の種族に対応したSランクスキルを獲得できるようになる。
方法|獲得したいSランクスキルを発声する。もしくは10回連続で念じる
汎用性は高いが、神から与えられた加護スキルとしては強いとは言えない』
ふむふむ。ん…………?獲得?Sランクスキルが獲得できるの?
「即死魔法」
「不死身」
「経験値アップ」
「邪眼」
「未来予知」
…………いくつかチートな感じのスキルを言ってみたけどなんも起こらない。Sランクスキルがどんなものか分からないと獲得出来ないんじゃないのかな?
焦燥感を抑えながら色々と言ってみるけど、特に何か起こることも無い。手詰まりだ。
悩んでいると、急に変な考えが閃いた。
もしかして、A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S のSだったりして。だとすると、かな〜り、弱いスキルを言わなくちゃいけない?弱いスキルか…………Sとなるともはやスキルと思えないようなスキルだろうなぁ。
「なんか…………呼吸!」
言い切ったとたんにピコンと手の甲から音がして、手の甲の文字が
『Sランクスキル獲得 Lvなし
ステータス(手の甲) Lv1
呼吸Lv1 』
に変化していた。すぐ『呼吸』をタッチする。
『呼吸 Lv1
効果|このスキルを持っていると、1種類の方法で呼吸ができる
方法|肺呼吸
大型の生き物にとって呼吸はとても重要』
なんだこれ…………何か意味あるのか??
思わず天を仰ぐと、いつの間にか辺りは暗くなり始めている。行く宛もなく、神殿の前の段差に腰かけている現状と、唯一の頼みであるSランクスキルが思ってたより弱かったかことで、ちょっと泣きそうになった。あと、家族が恋しい。
立派ななろう小説家になりたいなぁ