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燃えた木に萌えた

第三話です。よろしくお願いします。

 校舎の裏。しかも、まだ日が昇り切っていないほど早い時間なので、学校には人が全くいなく、この非常事態を察知できているのは、おそらく、俺だけだ。教師たちも、校舎の中にいたら、これに気が付くことはできない。

 俺が校舎の裏に来た頃には、すでに、地面の芝が黒くなり始めていた。もう少し遅かったら、校舎にまで引火していたことだろう。とりあえず、俺が来たから、これ以上、火が燃え広がることはない。

 そこで、一人の少女が燃えさかる木を茫然と見ているのを発見した。亜麻色髪の少女は、真っ白な制服を着て、ぺたんと女の子すわりをしていた。女の子すわりというか、驚いて、ひざをついてしまってこの格好になっているのだろう。

 とりあえず、状況を確認しようと少女に近づいて声をかける。ひっ、と軽く声を上げて、恐る恐る振り返った目の端に涙がにじんでいる。

「これ、どうした!?」

「えっと……。練習をしてたら……」

 なるほど、こんな早い時間から自主練とは、よい心構えだ。うんうん。って、そうじゃない。早く鎮火しないと。俺の固有スキルを使えば。固有スキルを使おうとしたところで、体が固まった。

(俺は、この学園で、このスキルは使わない)

 そう決めていたんだ。あれを使えば、事態はすぐに片付くだろう。ほかに、何か方法は無いのだろうか。腰骨あたりを確認するが、なにもない。

(あっ、剣忘れた)

 剣技を使えばと思ったが、剣自体を忘れてきたようだ。おそらく、自主練の後、机の上においてそのまま。いやな汗が、額を伝った。

「あれ、これ、詰んでね?」

 俺に魔導士の才能が一縷でもあったら、水魔法を使って鎮火できた。しかし、魔法適正はゼロ。初級魔法でさえ、扱えなかった。

 少女が、すがるような目で見つめてくる。いやいや、そんなに見つめられても、何もできません。見つめられる時間が長くなれば長くなるほど、罪悪感が増してくる。やめて、見ないで。

 魔導士がたまたまここを通りかかれば、万事解決なんだけどな。ありそうもないことを考えている。立派な現実逃避をしている間にも、火は燃え広がる。彼女もどうしようと、あたふたしている。

(ん、そういえば、あいつ、魔法の練習してたって言ってたよな?)

 それは、彼女がここにいた、火事を起こした理由だった。

(解決策は、身近にあったってか)

 焦って、視野が狭まりすぎていた自分をあざけ笑う。

「ねぇ、亜麻色髪さん」

「亜麻色髪さんって、わたし!?」

「そうそう。で、水魔法使える?」

「使える……けど、また、暴走したら」

 おそらく、この火事の原因は、火属性魔法の制御を誤ったことだ。彼女も、それが分かっているのか、言葉尻に力がなかった。でも、解決するには、やってもらうしかない。

「暴走か。まぁ、失敗しても、火属性魔法ほどひどいことにはならんでしょ。被害も出ないし」

 火属性魔法は、燃えるものは燃やせる。それと違って、水属性魔法のど基礎水の放射ならただ地面を濡らすだけだ。火は水に弱い。簡単な解決策だ。まぁ、ど基礎もできないんですけどね、俺。

 彼女も納得したようだ。すくっと立ち上がると、魔法を詠唱し始めた。彼女の周りが魔力によって、淡く光り始める。その力は、どんどんおおきくなって……。

「ちょっと待て、そんなに魔力使ったら」

「ほえ?」

 俺の声で気が散ったのか、彼女の魔法が圧から解放されて、水が放出された。まるで、池一つ分くらいの水量がしぶきとなって降り注ぎ、火が次第に勢いを弱めていき、やがて消えた。

 そんな風景をよそに、俺は考え込んでいた。あの魔力量の多さ、ただの人間じゃねえぞ。あんなことができるのは……。

「あの!」

「ほわ!」

 考え事をしていたので、急に声をかけられて、一歩飛びのいてしまう。いつの間にか彼女は、俺の前に来て、顔を覗き込んでいた。

「どうも、ありがとうございました!」

「ええ、ああ、どういたしまして」

 たぶん、すごく素直な子なんだろうな。彼女は、勢いよく頭を下げた。

 そこで、俺はあることに気が付いてしまった。水にぬれた彼女の髪。もしかしたら、そう思い。視線を下に落とす。

(わぁ……。って違うだろ!)

 中が透けてるなんて言えない。ぶんぶんと頭を振っている俺を、彼女は不思議そうに見ていた。

 学校に来てからどれくらいの時間がたったのだろう。そう思った時に、チャイムが鳴った。学校が始まるまであと一時間を告げるチャイムだ。朝の自主練をしている者たちの時間の目安にするためにならされている。

「まぁ、制服も濡れたし、一回帰るか」

「そうですね」

 一回帰らないと、学校でぬれねずみとして生活することになる。それ以上に、彼女に恥ずかしい思いをしてほしくなかった。彼女と肩を並べて、とてとてと量を目指した。

「あ、リューク君! ここにいたんですか」

「あ!!!!」

 顔を怒りに染めた女教師がこちらをにらんでいる。名前は、忘れた。

「学校案内をしようとしていたのに、忘れていたんですか!」

 あーあ、完全に忘れてたよ。引きずられるように、首根っこを掴まれて、校舎内に連れていかれる俺に彼女は手を振っていた。


まだまだ文章力も展開力もないですが、今後も精進していきますので、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

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