始まりの前に
初めまして。この旅はこの作品を読んでいただきありがとうございます。今回は剣と魔法をメインとした学園ファンタジーを描きたいと思い、この作品を開始した旨です。
地鳴りのような歓声が、スタジアム全体を揺らしている。その歓声、熱を帯びた視線は、スタジアム中央にたたずむ二人の学生に向けられていた。
学園対抗魔法戦。この魔法が発達した世界にある4つの魔法学園から選抜された生徒たちが、学園の名誉と誇りをかけて戦う大規模な大会だ。優勝した学園には恩恵もついてくる。
そんなトップクラスの者たちが集まる大会に出るのだ。本戦に出場したものは、その魔法学園内でちやほやされ、さらに、よい成績を残せば、国の安全を担う近衛騎士団へ入隊を進められることもある。盤石の地位を手に入れられるといっても過言ではないだろう。
しかし、その本戦に出るためには過酷な学年別学内選抜戦を勝ち抜かなければならない。魔法学園はこの世界に点在する4つの王国が管轄する育成機関である。例外を除き、ほとんどの少年少女が入学するため、人数は一学年1000人を超えているのだ。その試合数を消化するには相当な体力と精神力が必要となった。
ハーンベルク魔法学園の学内選抜戦第一学年の部は佳境に差し掛かっていた。長い期間をかけて行われてきた学内選抜戦も残る試合はこの一つのみ。泣いても笑ってもこの試合でこの先が決まる。
よくここまで勝ち抜けたよな。今までの試合を思い返すと、それしか感想が出てこない。初戦で次席で入学したやつと当たったと思えば、それからも、上位のやつばかりと試合をすることになった。誰か仕組んだんじゃないかと思ったことは一度だけではない。
俺は対峙する少女に視線を向けた。アイシクル色の長い髪が特徴的な少女。端正な顔立ちをしていて、性格もよく、同中世の男子から圧倒的な人気を誇る彼女は実力も伴っていた。見た限り、ここまでの試合で汗を流していないはずだ。
学年主席 アイシャ=リーンハルト。最後にヘビーな相手だ。疲労もたまるにたまっていて、ベストな戦いをするのは、たぶん、無理だ。そんな俺に彼女は倒せるのだろうか。
彼女の固有スキル「始原の皇女」は圧倒的な能力を誇っていた。氷属性、風属性、聖属性の三属性を自由自在に操るそのスキルは、はっきり言って凶悪。
学園対抗魔法戦には、魔法を基として戦う魔導士の部と剣などの武器を主として戦う騎士の部がある。俺たちが参加しているのは騎士の部。
騎士の戦いは魔法を武器に使用して、属性を付与したり、能力を向上させたりするというものだ。属性の付与や能力向上には固有スキルが大きくかかわってくる。
この世界の人々は固有スキルを持って生まれてくる。そこで、魔法特化、騎士特化に分かれ、己の目指す道が決まる。魔法特化ならば使える魔法の属性やどこまで高位の魔法を使えるか、騎士ならば、付与できる属性、どれほど能力を向上させられるかもここで決定される。
剣士の固有スキルは、1属性の付与と能力向上が使えるということがほとんどだ。
しかし、彼女の場合は違う。基本1属性しか付与できないのだが、3属性が可能、それに加え、能力向上もでき、一級品。
「普通に無ゲーじゃね?」
苦笑いしか起こらない。綱渡りで勝ち上がってきた俺にとっては奇跡が20回起きても勝つことは無理だろう。
「リューク君。やっぱり、ここまで来たんだね」
「はは、運よくね」
おどけた笑いをする俺をアイシャは何か言いたげをにらみつけた。怖いな、かわいい顔が台無しだぞ。
「今日は胸を借りるつもりで頑張るよ」
「あなたはそうやって……」
アイシャが何かを言いかけたが、巻き起こった歓声で聞き取ることができなかった。
その歓声は、スタジアムに審判をする教師が入ってきたからだ。それは、もうすぐ開戦するということを意味していた。鋭利な刃物のような空気が二人の間に立ち込めている。
「それでは、学内選抜戦一年騎士の部。決勝 リューク=アルスタイン対アイシャ=リーンハルトの試合を始める」
俺ば腰に掛けてあった鞘から漆黒の剣と黄金の剣を抜き、アイシャも白銀の剣と青く輝く剣を抜いた。
「ここに開戦を宣言する。はじめ!」
教師の掛け声が、響くと同時に、スタジアムの中央から砂煙が巻き上がった。
一話ということで説明多めのなってしまいましたが、ここからものだたりが始まっていくので、ごゆるりと閲覧していただけらばと思います。感想やアドバイス、励ましの言葉など……